カルネフィセ
「ここが…ロサンゼルスかぁ?」
俺は入国ゲートを抜け、展望エリアからロサンゼルスのビル街を眺めた。ここに、アメリカ最大規模のマフィア組織があるのか…。
ん?何か後ろから足音を消している奴らが近づいてくる。数は…10人。いや、11人。一人を先頭に歩いてくる。
「空港で襲うなんて、やることが派手だね。流石はアメリカだ。でも、10人じゃ俺は殺せないぞ。」
「…!?」
「足音を消したつもりだろうけど、気配までは消せていない。気配があるのに足音を消したら、見つけてくれと言っているようなもんだ。」
「若が連絡してくるので、どんな奴が来るかと思ったが、随分戦い慣れしたやつが来たもんだ。」
クラークの奴が連絡したか…。ということは、こいつ等はあいつの親の組織の人間か…。俺が振り返ると、その瞬間、先頭の奴が頭を下げた。
「お初にお目にかかります。私、カルネフィセにてロサンゼルス支部の支部長をしております、ライオネルと申します。以後、お見知りおきを。」
「日本語話せるんだ。」
「若に日本語を教えたのは私ですし、ボスから直接教育係を命じられました。若を育てるには、日本語は必要だと見抜いていたご様子でした。」
「あいつが日本に行くことは想定済みだったわけか…。」
「恐れ入りますが…冴島殿の事も教えて頂く事はできますか?」
「俺のことを教えるより、お前達の支部内に重度の病を患っているメンバーや、体の部位を欠損しているメンバーはいるか?」
「?まぁ、他の組織との抗争は絶えませんからな。探せばいるでしょうが。」
「今から支部に連れてきてくれ。俺の特異性をお前には先に見せておこう。ボスには、それを込みで俺のことを報告してくれ。どうせ、報告するんだろう?」
「わかりました。それでは、こちらに。」
俺は、迎えに来ていたロールス・ロイスに乗せられると、護衛者に囲まれながら中心街へと向かった。ライオネルという支部長に時間がかると言われたので寝ることにした。
1時間後…到着したのは郊外のお屋敷だった。まるで中世のお貴族様のようだ。俺のそんな想像を察したのか、ライオネルが言った。
「ボスは、中世がお好きなんです。ですので各地にこのような拠点がいくつもございます。勿論、ビル街にはビルも拠点としていますが。各地の支部は、このようなお屋敷が殆どかと。」
「へぇ〜」
「中へどうぞ。既に対象者を待たせております。」
俺は中に連れられ歩いていくとそこには70〜80代の老人が座っていた。ただ、何かすごいオーラを感じる。塞翁会の飛龍と同じようなものかな…。ってことは、この人も
「この人…カルネフィセの幹部なの?」
「どうしてそう思われますか?」
「俺の知り合いにマフィアの大組織のボスがいるんだけど、その人と同じような雰囲気があるし。それにさっきから殺気向けられてる気がする。」
「スフィア様!こちらのお方はボスの客人ですよ!」
「わかっている。私の腕を直せると言う大ぼら吹きがどんなもんか確かめたかっただけだ。」
「それでどうだったの?」
「ただの阿呆ではないようだ。」
「じゃあ、やることだけ済ませちゃおうか。」
俺はそう言ってその老人に近づくと彼の前に膝まづいた。そして、彼の欠損している右腕に手をかざし…
『完全治癒』
俺の詠唱に伴い、俺のかざした手のひらから光が発せられ、その光は彼の右手を包んだ。そしてその光が来てたとき…
「これで元通りだね。何か変な所ある?」
「…ない。本当だったのか…。」
右手の感触を確かめたかったその老人は、椅子から降り、俺に片膝をつき頭を下げできた。その所作に合わせてライオネル達も膝をついた。この人、すごい大幹部なのだろうか。
「このような神の如き御業を披露していただけるとは。ご紹介が遅くなり、誠に申し訳ございません。フォラスとお呼びください。」
「フォラス?名前ではなくですか?」
「我らの組織では所属と同時に名を捨てます。私は、ボスから他組織との交渉や渉外担当をしていましたので、弁が立つ者として"フォラス"と呼ばれております。立場としては、ボスのソ相談役を努めております。前ロサンゼルス支部長を努めておりました。」
「なるほどね。まぁ、これで仕事もやりやすくなるでしょ。ボスにはこのこともよく伝えておいてよ。今回はさ、俺の顔を売るために無償でやったけど今後はなにか報酬もらうからさ。あれでもいいんだぜ?君等の仕事で攻略したい対象を動かすために使ってくれても。そうすれば君等の得になるだろ」
「…ボスには伝えておきます。」
「それじゃ、俺はこのあとどこにもいきゃいいの?」
次回はボスへの報告回の予定でしたが、投稿前に謎に編集中の本文が消えたので、そのまま次回へと進みます。
簡単に説明すると、数名患者を救った後、ボスは愛娘を大輝に助けるように命じることにしました。
次回からは治療を、五回行います。