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57.自己暗示というものに無限の可能性を感じました!

 催眠状態のシアンちゃん目線がある為、少し読みにくく、更に胸糞回です。ご注意下さい。





 次の日、仕事納めでいつものお昼休みの時間より遅くに帰って来たマナトくんは、


「ウチの営業所は、午前中の業務が終わった人から大掃除を始めて、お昼にオードブルを取って、皆んなで夕方まで飲んで予約してる居酒屋さんに移動して宴会するけど、そんなのは参加しないから帰って来た」と、そのまま会社に戻らないらしい。


 そんな感じで良いんだ…。



 パスタとサラダを食べて洗い物をしていると、マナトくんとキヨくんはちょっと出掛ける。との事で、颯太くんと、碧ちゃんとお留守番になった。


 3人で映画を観たり、しばらく触ってなかったテレビゲームで遊んだ。



 夜になっても2人は帰って来なかった。3人でご飯を食べ、久しぶりに1人でゆっくり湯船に浸かった。


 今日はマナトくんにエッチな事をされずにのんびりお風呂を満喫出来ると喜んだのも初めのうちだけで、1人でつまんないな。と思い早々に上がった。



 お風呂から上がった碧ちゃんとまたテレビゲームをしていると、マナトくんとキヨくんが帰って来た。ご飯は外で済ませて来たらしい。



 皆んながお風呂から上がった頃、颯太くんが昨日の続きをしてみないかと聞いてきた。少し悩んだけどやってもらう事にした。


 碧ちゃんが心配して「無理しなくていいよ?」と気遣ってくれる。「ありがとう、大丈夫だよ」と笑う。


 マナトくんも隣りに座って手を繋いでくれた。


 颯太くんが昨日と同じようにゆったりとした声でリラックスさせてくれる。




 4歳の時の話しを聞かせてくれるかな。と言われ、お兄ちゃんと遊ぶのが大好きで、いつもどんな事をして遊んだかを楽しく話した。


 お友達は?と聞かれ気持ちが沈む。幼稚園に行きたくなかった。と答えた。


 何故?幼稚園は意地悪で乱暴な子が多かったから。


 はい!プレゼント!と虫を手渡しして来たり、叩く子も多いし、スカートめくりも流行ってて嫌だった。


 小学生の頃は?と聞かれ、更に心が重くなる。1年生2年生の頃はまだましだった。3年生からの事は、…1つ1つが強烈過ぎて色んな事を鮮明に憶えてる。それこそ、その時の匂いも、温度も、痛みも。



 3年生の終わりのバレンタインに苦手な男の子に、チョコを渡さないといけなくなった経緯いきさつを話した。



 チョコを拾う体勢で手を踏んだまま、耳が千切れるんじゃないかと思うくらい引っ張られ、痛くて泣いても暴言を吐かれながら「好きです」と何度も言わされた。誰かが見かねて先生を呼びに行ってくれるまで。

 皆んなに見られてて恥ずかしくて逃げるように帰った。


 次の日から、おいブス!と呼ばれて、奴隷のように扱われた。


 頭とか顔に土をかけられるのも、暴力も嫌だったけど、虫を服に入れられるのが本当に嫌だった。あー、そう言えば4年生の夏に、セミの死骸を食べさせられそうになった事もあった。



 太ってるって言われて胸とか二の腕とか内ももをつねられるのは痛いし、死にたいような嫌な気持ちになるから本当にやめて欲しかった。でも、やめてと言うと頭とか腕を殴られるから、痛い〜。とヘラヘラ笑ってた。



 家族には言えなかった。ムードメーカーだと言われている自分が学校でそんな目にあってるのが恥ずかしくて。


 学校休みたいなー。って言ったら「ダメよ。ちゃんと行かなきゃ」とお母さんに言われて、そーだねー。ってヘラっと笑いながら我慢して行ってた。


 4年生でその子とまた同じクラスになって絶望した。女の子のお友達もいなくなった。


 毎日毎日お前がブスで太ってるのが悪い。お前がもうちょっと可愛かったら優しくしてやるのにブス過ぎるからな。とか、今日もブスだな!と言われる。


 可愛い女の子が本当に羨ましかった。


 でも、ある日、…そっか。私が不快にさせてるんだから仕方ないな。って全部諦めた。


 泣くのも、やめてと言うのも、余計に酷く痛くされるから、ヘラヘラ笑って我慢するようにした。



 中学の時、小学生の時のような酷い事はなかったけど、やっぱり男の子は意地悪な子が多くて苦手だった。


 高校受験は、お父さんとお母さんに勉強頑張るから!とお願いして家から遠い私立の女子校に行かせてもらったから、高校生からは平和に過ごしたよ。と伝えた。




 そうだったんだ…。乱暴な子は嫌だね。でも、その子達、本当はシアンちゃんと関わりたかったんじゃないかな?


 私と関わりたい?…んー。相手の気持ちは…分からないなぁ。ただただ怖かった…。優しかった人も急に意地悪言い出すし。


 幼い男の子は自分の気持ちを素直に言う事は恥ずかしくて、誰かを好きな事を知られて揶揄われる事に何故か恐怖を感じてしまうんだ。


 でも好きな子に関わりたいし気を引きたい、触りたいから意地悪を言ったり、暴力を振るってしまう。


 男は基本的に、意地悪を言うにしても何にしても、好きな子にしかしない。


 だから、シアンちゃんに意地悪をしたり、暴力を振るった子達はほぼ全員、シアンちゃんの事が好きだったんだ。


 だってシアンちゃんは誰が見てもとても可愛いよ。俺だってシアンちゃんの事は凄く可愛いと思う。と言った。



 隣りで碧ちゃんが泣いてる。辛かったね。1人でよく耐えたね。頑張ったね。って言われた。


 大丈夫だよ?私が悪くて皆んなに迷惑掛けてたから、申し訳ないな。とは思ったけど。と碧ちゃんの背中を撫でる。


 違う!シアンちゃんはこんなに可愛い顔してる!シアンちゃんの心も身体も痛かった辛かったって泣いてるよぉ。と私の膝に顔を突っ伏して更に泣かれた。



 困ったなぁ…。と思ってマナトくんを見ると凄い怖い顔をして宙を睨んでいた。アイツ…生まれて来た事を後悔させてやる。聞き間違えだと思うけど、そう聞こえた気がした。


 マナトくんが碧ちゃんをやんわり引き剥がして、私を横抱きにした。ちょっと恥ずかしいけど安心する。


 くたっとマナトくんにもたれかかったままの私に颯太くんが言う。


 俺は絶対に嘘は言わない。シアンちゃんも嘘は言わないね。俺の事は信用出来るね。シアンちゃんは自分自身も信用できるね。


 颯太くんは信用できるし嘘を言わない。『うん』と頷いた。



 今から俺が言う事を復唱して。


『私は可愛い』


『あ…私はかわいい』


いいね。上手。今度は俺の目をしっかり見て?


『私は可愛い』


 颯太くんから目が逸らせない。パチンと颯太くんが指を鳴らした。


『っ…わたしはかわいい』


うん。その調子。もう一度。


『私は可愛い』


『わたしはかわいい』


うん。今度は笑って言うよ?


『私は可愛い』



 …笑う?…あぁ。笑う。笑うにはどうするんだったかと思う程心が沈んでいて表情が動かしにくかった。笑顔を作り始めると、少し心が晴れた気がする。よかった。ちゃんと笑えた。


『わたしは…かわいー』


…泣かなくても大丈夫だよ?と、颯太くんが私の頭をポンポンとする。


 泣いてる…?私は…泣いてる?



 もう一度。俺の目を見て?


『私は可愛い』


『…わたし…わたしは…かわいい』



 このやり取りを何度も繰り返した。もう笑顔で言える。


 …本当に可愛いよ。と颯太くんが言った。


『うん。知ってる。ありがと』と笑って返した。



 マナトくんの腕に少し力が入って、颯太くんから隠すように私を抱き込んだ。


 思わず笑ってしまった。マナトくんは本当にヤキモチ妬きだなぁ。私はちょっと可愛いから誰彼構わず不用意に笑い掛けるのは良くないんだね。マナトくんがヤキモチを妬き過ぎて病気になっちゃうと可哀想だから気を付けよう。



 マナトくんを見上げて笑い掛けた。


「私はマナトくんだけが大好きだからね?」








その日の夜、シアンちゃんが眠ってから須藤が寝室から出て来た。



僕「あ!そうだ、昨日シアンちゃんの須藤への思いの丈を聞いたんだけど凄かったんだよー!」


キヨ「ああ思った」


颯太「破れ鍋に綴じ蓋だな」


須藤「…。なかじに言われるとディスられてる感じがする」


颯太「良い意味の言葉だけど、ディスってるよ別に」


須藤「ちっ。で?それ何時くらい?」


僕「えーっと?時間の情報いる?…何時だったかな…」


須藤「何してた時?部屋のどの辺りにいたの?」


キヨ「あ、須藤がお昼休み終わって家出て行ってすぐだ」


 須藤がスマホを操作している。「あぁ皆んなでここに集まってる」と、言うから何かと思ってスマホを覗き込んだ。



 この部屋が映っていた。というか、僕たちが集まって喋っているのが映ってた。


(え?)


 動画のアングル的にあの辺?と思って探すと分かりにくいが多分アレがカメラだ。恐ろしい事に、別アングルもあった。しかも音声もバッチリだった。


 コイツはもうダメだと思った…。





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