42.事件です!ランチのセットに激うまデザートが付いていたっ!
1ヶ月後に退職する事になったと伝えると、喜んでくれたけど、吉木くんに引継ぎすると聞いて「えー。もう明日から行かなくて良いんじゃないかな?」なんて言い出したから笑ってしまった。
「あのね?吉木くん程無害な子いないと思うよ?」
「なんで?その根拠はなに?」
「えー。まぁ…。経験と実績かな!」
「経験も実績もないだろーが」
ゆっくりのチョップが来たから両手でバチンと挟んでやろうと思ったら、失敗して思ってたよりも重いチョップをお見舞いされた。
「いたーーーー!真剣白刃取り失敗したぁ!あはははは!」
両手で頭を押さえてマナトくんを見ると、しゃがみ込んで笑っていた。
「あははは!ごめんね!なんか急に取られちゃいけないと思ってしまって…くははははは。めっちゃダサかったシアン。くふふふふ。俺の手が頭に当たって2〜3秒してからバチーンってやってたし!しかも大振り過ぎ!面白すぎる!あはははははは!」
「あははははは!ダサかっただろーな。と私も思う!」
「もうヤバイ…。お腹痛い…ムービー撮りたかった!シアン可愛すぎるー!」
「ヤダ!そんなの後世に残さないで!子孫が困惑するし!」
「子孫が困惑…もうやめて…笑わせないで苦しい…」
駅のホームでめちゃくちゃ笑ってたけど結構人いるなぁ。
「マナトくん、知ってる人が居たら気まずいから行こ…」
「あぁうん、ごめんごめん、くふふふっ」
最寄駅に着いた。ホームを歩いていて、ふと思った。
ここ…。ここで私が立ち止まってなかったら…マナトくんと出会えてなかったのかな…?
「シアン?どうしたの?」
「…うん。金曜日ここでボケーっと立ち止まってよかった。と思って。何で立ち止まったんだっけ…?」
「ん?」
「マナトくんと出会えてよかったなぁ。と思って。でも不思議なご縁だよねー」
「うん。シアンと俺が結ばれるのは運命なんだよ。結んでくれた神様には感謝しなきゃね。
あ!そーだ!あの時の居酒屋さんのお会計シアンがしてくれてるままだったね!いくらだった?渡すから教えて?」
「いいよいいよ!安かったし」
「10万?」
ささささささっとホントに10枚くらい1万円札を数えて渡そうとして来たマナトくんにビビリ散らかして、「いや!しっかり覚えてないけど1万円ちょい?くらいだった!と思う!レシート探すからオウチ着くまで待って!
ってか、現金持ち歩き過ぎな件について」
「分かった。シアンのオウチの家賃払う為に下ろしてきたんだ」
「いやいや大丈夫だよ!社宅扱いで殆どタダだし!」
「それじゃあ俺の気が済まないからダメ」
「えー。じゃあ、日割りで割るよ」
「シアンのオウチの家賃はいくらなの?」
「3.8万だったかな?」
「ファミリー物件なのに!?…もしかして事故物件?」
「あ、いやいや、会社が負担してくれてるのよ」
「福利厚生手厚いね」
「うんうん。ありがたい」
昨日の食材がほとんど残ってるから今日もお鍋。
一応スーパーに寄りたいって言われて一緒にスーパーへ行ったら、結構大きめの海老さん達を3パックも買ってくれた。
帰って部屋着に着替えて2人で並んで海老を剥いて背わた腹わたを取りまくった。マナトくんの手際が良過ぎて見入ってしまった。もはや職人レベルだった。
ハーブソルトとレモンを掛けたり、塩焼きにもしてくれた。
最高でした。
2人で食器の片付けや掃除をして、お風呂の用意をする。
今日もしっかりマナトくんに洗ってもらった。今日こそはまったり映画…。
「マナトくん映画見ない?」
「んー。俺はシアンを見てたい…」
ガバっとソファに押し倒されて首筋にキスされる。
「わっ!くすぐったいよぉ」
「シアン大好き。いい匂い。今日はシアンが可愛いメールくれるから会いたくてたまらなくなったよ」
「私もマナトくんに会いたくてたまらなかったよ。仕事中に色々思い出しちゃって大変だった」
「色々って?どんな事思い出してくれてたの?」
「えっと…。まぁ色々だよ…」
「ダメ。ちゃんと教えて?」
「…えっと…その…。マナトくんの手が私の身体に触れる感触とかを少し…」
「へぇ。例えば?」
マナトくんが目を細める。(おっと…魔王様降臨の兆し…)
「ん。…ダメ!恥ずかしいから言わないの!」
「んー?今日は強情だねぇ…。シアンが素直に喋るようにトロトロにしないといけないか」
「マナトくん…今日は映画観てまったりしようよぉ…。明日また仕事中に思い出しちゃうよ…」
「うん。シアンが何をどんな風に思い出したのか全部教えてくれたら、映画見ようね」
「うー。分かった…。えっと…。マナトくんにキッチンでおしり触られた時にね?気持ち良いって思ったの」
「ふーん。こう?」
マナトくんの手がワンピースの中に潜り込みお尻をスルスルと撫でる。
「あっ…うん。それで、その時の感触を思い出してお腹がキュンってして…」
「うんうん。それから?」
それから…えっと…それからね…。と、
まぁお察しだとは思いますが、色々…色々されました。
「マナトくん愛してる。ずっと一緒にいてね?」
「俺の方が愛してるし…。ずっと一緒にいる…」
「ふふふ。私の方が愛してるし…」
「残念ながら俺なんだよ…」
私、マナトくんとゆっくり映画観られるようになる日って来るのかな…。
次の日、マナトくんが先に起きていて、まだ起きなくて良い時間に起こされた。と言うか、犯された。そう、まだ起きなくて良い時間に。
ゆっさゆっさと揺すぶられ、波打ち際に打ち上げられる夢を見ていたように思う。
マナトくんには普通の倫理観は通用しないのだな。と、そんな事を思いながらも、マナトくんが愛おしいと思うし、こんなに求められて嬉しいと胸がいっぱいになる。こんなにカッコ良くて完璧な人が私に対して、我慢が効かなくなって本能をむき出しにして身体中を貪ってくれる事が幸せだと感じ、心も身体も満たされているのだから、私も大概だと思う。
それに伴い、捨てられたら怖いという不安…。つい1週間前までは知り得ない気持ちだった。
気持ち良いし、幸せだなぁ…。と思い、ふっとマナトくんに笑い掛けると、「わぁシアン可愛い…」とキスをしながらより一層激しく揺すぶり続けられ、半ば気を失うように眠ってしまった。
結局、朝ご飯を食べる時間もない時間まで眠りこけてしまった。
「あーあ。シアンもう起きちゃったの?もう今日はお休みすれば良かったのに」
まさか…!?計画的犯行!?
…恐ろしい子
ダッシュでシャワーを浴びて髪の毛を適当に乾かし、お化粧はムリだったから日焼け止めクリームだけになってしまった…。
「朝ご飯もお弁当も作れなくてごめんね?」
「俺はシアンが食べられて幸せだから大丈夫だよ?」
「行く時にお昼ご飯買いたいからもう出るね!マナトくんもお仕事頑張ってね!行ってきます!」ちゅー。と長めにキスをした。昨日やっつけって言われたからね。
「うん。ありがとう。シアンは…誰とも喋らずに適当に過ごしてね。今日もお迎え行くから会社で待ってて?」ちゅーーー。と私より長い長いキスを返された。
誰とも喋らずって…ふふふ。
会社の近くにコンビニに寄って、お昼ご飯何にしようか見ていると、「あれ?楠木さん?おはようございます。朝ご飯ですか?」
「あ、吉木くんおはよう。朝ご飯はカフェオレでも飲むからいいの。お昼ご飯買おうと思って」
「え!楠木さんいつもお弁当なのに今日は違うんですか?」
「あぁえっと…2度寝しちゃって…」
「珍しいですね…。言われてみれば髪まだ乾いてませんよね?わぁ…凄くいい匂い…。ちゃんと乾かしてから来ないと…。その…風邪引きますよ?この人はホントに…」
「あははは。お母さんみたい」
「そうですよ。じゃあ、今日はお母さんと一緒にお昼ご飯外に食べに行きましょう。
先週の金曜日仕事手伝って貰ったお礼と、…昨日課長に聞きました。退職されるそうですね…。寂しいです。でも、おめでとうございます!
…なので、引継ぎも兼ねて。楽しみだなぁ!初めてですね!一緒にご飯食べに行くの!凄く美味しい所があるので楽しみにしてて下さいね!」
おっと…決定している。まぁ吉木くんは優しい子だし無害だし大丈夫か…。
「ありがとう。分かった!でも、お礼はいいよ。ちゃんと割り勘で。じゃあ私カフェオレ買ってくるー」
「俺もカフェオレ買います」
「吉木くんて、わんちゃんみたいだよね髪の毛茶色くてふわふわ」
「あぁ俺クウォーターなんでこれ地毛なんです」
「へぇクウォーターなんだ。通りで目鼻立ちくっきりしてると思った」
「イケメンって言って欲しいんですけど」
「あはは!もう!お母さんったら」
「えー。お母さんから一旦離れて下さい…」
午前中は自分の担当業務で手いっぱいで引継ぎ作業はできなかった。
ランチで向かったのは、駅と反対側に進んだ方の住宅地のギリギリ手前にある隠れ家的なお店だった。
カントリー調のあたたかい雰囲気で、とても素敵なお店だった。
グリルチキンとシチューパイのセットにした。ご飯もサラダも食後のデザートも美味しくて、毎日でも来たいくらい美味しかった。
「ホント美味しい!もっと早くに来たかった…。え、マジで残り毎日来ようかな…」
「そうですね…。もっと早くに勇気を出して誘えば良かったです…」
「勇気がいる?私のそんなに怖そうだった?ごめんね!気を付けよ」
「違いますよ。楠木さんは僕が知ってる人の中で1番優しくて思いやりがあると思います。俺なんかが誘うのはおこがましいと思って」
「どしたの。俺なんかなんて言わないで?色々あると思うけど…。
全ての出来事は、将来上手くいく為のステップなんだよ。嬉しかった事も苦しかった事も全部、無駄じゃない。経験値になるからね」
「俺は…、…はい…。楠木さんに出会えて良かったです。
楠木さん…あの、彼氏が出来たのって最近ですか?」
「あー。内緒にしてね?先週の金曜日だよ…。あ、でもその時は付き合ってないから、土曜日か…」
「…っ!…そ…そんな最近なんですね…。昨日迎えに来てた方ですよね?」
「うん、私にはもったいないくらい良い人だよ」
「…彼氏さんは…楠木さんに優しいですか?」
「うん。とっても優しいよ」
「そっか…それなら良かったです!幸せになって下さいね」
「うん。ありがとね」
「俺にも勇気があったらなぁ…」
あぁ…。相手がノーマルの人なんだろうか…。吉木くんの進む道が例え茨の道でも私は応援するよ!
『当たって砕けろだよ!』なんて言葉を言い掛けて、無責任過ぎるのでやめておいた。
吉木くんが私の担当業務の内容を結構把握してくれてたおかげで有給の消化も無事に出来そうだった。
私の仕事の引継ぎのせいで吉木くんはしばらく残業続きになるだろう。本当に申し訳ない。
手が空いたらややこしい業務はマニュアル作っとこ。
マナトくんからメールが来た。
『シアーン。会いたい…。
寂しい…。今日は忙しい?』
『マナトくん。私も会いたいよー!
そうだね。引継ぎしながら、通常業務もあるからちょっと忙しいかなぁ』
『そうなんだ。お仕事頑張るシアンもカッコイイね!仕事終わったら迎えに行くよ!出る時と、着いた時に連絡するから待っててね?』
『うん!ありがと!マナトくんもお仕事頑張ってね!仕事戻るね!』
『分かったー』
定時になる前
『シアンごめん。システム障害があって対応しなきゃだから、お迎え行けなくなっちゃった!先に帰ってて!また連絡するね!』とマナトくんから連絡が来た。
『ありゃ。大変!分かったよー。私は大丈夫だからね!頑張ってね!』
それなら急いで帰っても仕方ないか…。自分の業務終わったら吉木くんの手伝おう。
「吉木くん、今週ので残ってる業務ある?彼氏がお迎え来れなくなっちゃったから、手伝うよ?」
「…ホントですか。じゃあ、お願いしても良いですか?」
「うん!ちゃちゃっとやっちゃおう!」
2人で手分けしてやると2時間は掛からなかった。
これ1人でやってたらキツかっただろうなぁ…。モチベーションも続かないし…。
「お疲れ様!まぁまぁ早く終わってよかった!お腹空いたー。帰ろっか」
「ホント助かりました!楠木さん手が早いから尊敬します。明日出てこようかと思ってました」
「お役に立てて良かったですぅ。私も最初は時間掛かったよ?段々慣れて要領良くこなせるようになるんだよ」
「そうなんですか…あの!夜ご飯…。よかったら…。あ、いえ…。何でもないです…」
「ん?」 なんか相談でもあるのかな…?でも夜ご飯2人で行くのは…。マナトくんが相談に乗る為でも女の子と2人でご飯に行くのは嫌だし…。わぁ想像しただけで胸が痛くなった…。
「…すみません。ホント何でもないんです。とりあえず駅まで一緒に帰りましょうか」
「うん」 …吉木くん…ごめんね…?
駅までの間、取り止めのない話しをして楽しかった。
気遣いの出来る良い子だなぁ。ところで吉木くんってディフェンスなのかな。オフェンスなのかな…。いや、知らない方が良い事もある。聞かないでおこう。
吉木くんのオウチは、私の最寄駅の1つ向こうだった。
「吉木くんオウチ近かったんだね!知らなかったよ」
「ホントですね!」
「楠木さんちょっと心配なんで、家まで送ります」
「え?いやいや。大丈夫だって。心配って私もう大人ですから!」
「知ってます。大人だから言ってます」
「はへ?」
「とりあえず…電車降りたら言います」
吉木くんは本当に私の最寄駅で降りてしまった。
「どーしたの?」
「あの…。凄く言いにくいんですけど…」
「え!?なに!?私なんかやらかしてる!?それなら早く教えて欲しいんですけど!恥ずかしい…」
「あ、いえ。やらかしてると言うか…。色気が凄くて…」
「ん?何だって?」
「だから…。この時間帯に1人で歩くと、まぁナンパされますよ。おそらく結構強引に…」
「私がナンパなんてされる訳ないじゃん」
「へ?楠木さんナンパされた事ないんですか!?」
「道は良く聞かれるけどナンパはないなー」
「え?それ…。道教えた後、どっか行こうとか言われたりは…?」
「あぁそれは皆んななんか色々お礼とか言って誘ってくれるけど、道教えたくらいでねぇ?」
「楠木さん…。それナンパです…。間違いなく道は分かってて楠木さんに声掛けてます」
「あはは!それはない」
「じゃあ、俺が2mくらい後ろを離れて付いて行くんで、普段通りに歩いて下さい。無事に楠木さんがオウチに入れたら、僕はそのまま駅に戻って来て帰ります。きっと、会社でも1人にならないでって言ってる意味が分かると思います」
「え、なに怖いんだけど…」
「そうですよ。怖いんです。しかもお酒飲んでる人が多いから、危ないと思いますよ?」
「お酒飲んでる人?あぁ。絡まれるって事?」
「んー。絡まれるだろうし、身体に触られると思います」
「えー?そーかなぁ?だって今までそんな事なかったし」
「もぅ。これだけ言ってるのに…。じゃあ、絡まれたら止めに入るんで1人で歩いてみて下さい」
吉木くんの気が済むようにしてあげようと思い、歩き始めた。吉木くんは少し離れて歩き出した。
まずホームから降りる階段で「おねぇちゃん一緒に飲まない!?」と大声で言われた。ビックリして早歩きで通り過ぎたけど、「おっぱいだけでも揉ませてぇー!」と後ろで叫んでた。酔っ払いキモ…。
改札口の少し手前で定期を用意しておこうと壁側に寄って立ち止まったら、「おねぇさん今帰り?ウチにめっちゃビールあるんだけど飲まない?」と話しかけられた。「あ、結構です」ビール苦手だし、初対面で家飲みヤバ…
と、定期を取り出して歩き出した。
改札を出てすぐ。また少し歩いて。地上に降りる階段で。と、何度も酔っ払いに絡まれた。
駅から出てすぐ、すれ違いざまに「おねぇちゃん可愛いねぇ一緒に飲もう」と二の腕を掴み上げられ、肩を抱かれた。
「え、あ、ちょっ!」
ぞぞぉ〜っとして、とてつもなく嫌な気持ちになった。強引に歩き始め
どっか連れてかれちゃう!とめちゃくちゃ焦った。
「すみません。オレの連れなんで離してもらえます?」
「なんだよ…。連れがいんのか。おねぇちゃん今度彼氏が居ない時一緒に飲んで!俺のも飲んでね。へへへへへ」
「楠木さん大丈夫ですか?
…ね?俺が言ってる事分かりましたか?昨日も思いましたけど、ホントに…その…隙だらけと言うか…。触りたくなるんだと思います。会社にも乱暴な人がいるので気を付けて欲しいです」
なんだか今、立て続けに絡まれまくったのが悪い冗談と言うか、ドッキリみたいで全く現実味がないけど、身体に触られて信じられないくらい気持ち悪かった。
「助けてくれてありがとう…。吉木くんが居なかったらどっか連れて行かれちゃってたかな…おぇ…」
「あはは!おぇって、さっきのヤツも最後まで気持ち悪かったですね。行きましょう楠木さんの家まで送ります」
「お手数をおかけしますがよろしくお願いします」




