41.コーヒーって飲みた過ぎると手が震えますよね。今それなんです。ほら
お鍋の用意は全部マナトくんがやってくれたんだけど、その手際の良さに自信喪失した。
男の子なのに…。私負けてるじゃん…。
いや、元々そんな『何でも作れます!』ではないけど、それなりに出来ているつもりだった。
「マナトくん凄いねぇ。私よりも手際良くて上手だよぉ」
「ホント?嬉しい。お料理は全く出来なかっんだ。
もし、シアンに会う事が出来て、付き合えたら一緒にお料理作りたい。役に立ちたいって思って学生の頃、必死で練習したんだ。シアンに認めて貰えたなら、努力が報われるよ」
マナトくんが本当に嬉しそうにニコニコして言う。
「私の為に!?そうなんだ…嬉しいよ。ありがとねマナトくん」
「どういたしまして。まだ夜ご飯には少し早い?どーする?もう始める?」
「大丈夫!始めよう!」
マナトくんが選んだお肉が高級過ぎて凄い満足感。なのに食べ過ぎてない。感動!
本気のお金持ちの人が痩せてるのってこう言う事なのかも…。
マナトくんにデザートを選んで来るように促されて、私が悩んでいる間にお片付けがほとんど終わっていた。慌ててカセットコンロを拭いて元の場所にしまった。
ホントありがとうございます。
今日こそ一緒に映画を観たい。「ねぇマナトくん」
「そう言えば」とマナトくんが不在票を見ていた。
「ん?荷物?須藤真人様宛…?何処に?」
「あぁ、シアンのオウチだよ?お兄さんが来た日に色々注文したんだよ」
「そうなんだ!下の宅配ボックスに入ってるみたいだね。取ってくるよ」
「いいよ!?俺が行くから大丈夫!ありがと」
「やり方分かる?」
「ふふふっ一般人が分かるなら俺でも分かるはず!シアンはゆっくりしてて?」
マナトくんはサッと上着を羽織って出て行った。
しばらくして大きい段ボールを持って帰って来た。
「わぁ大きいね。何注文したの?」
「シアンのだよ?マッサージグッズとかオモチャとか服とかかな」
「私の!?マッサージグッズ!!おもちゃと服!嬉しい!ありがとぉ!見てもいい?もぅ…マナトくんだいしゅきだよぉ〜。ちゅっちゅっちゅ〜」と、ガムテープを剥がすマナトくんの背中に抱きつきながら、頭にちゅっちゅする。
マナトくんの首に巻き付いたまま開封された段ボールの中身を見ても何か分からなかった。まぁスマホのスタンドは分かった。
「ん?どーやって遊ぶの?」
「今から遊んでみる?」
「みるみる〜!やったー!マナトくんとまったり遊ぶ〜!」
「まぁこれはまったりではないけどねー」
「はい、まずコレねー。目つむって?目の疲れが取れるといいねー」
柔らかい質感の布で目を覆われる。そう言われると目がジーンとする気がした。
「あ、マッサージの!ありがと!」
「シアンは目も疲れやすそうだよねー」
「そうなのかな?肩凝りも酷いし、そうかもだねぇ」
マナトくんがガチャガチャと開封しているけど、ソファにもたれ掛かって、柔らかいアイマスクをしてブランケットを掛けられてウトウトして眠ってしまった。
Amaz○nから大量に届いたマッサージグッズと言う名のアハンなオモチャでマナトくんに散々遊びまくられて、ぐったりした。
寝る前に、簡単な物で良ければお弁当いる?と聞くと、とても嬉しそうにしてたので、朝、マナトくんのお弁当も一緒に作った。
むかし誰かが言っていた。1人分作るのも2人分作るのも一緒だと。
全然一緒じゃなーい。2人分のお弁当にはそれなりの手間が掛かりまーす。
シャワーを浴びてお化粧をした。
そろそろマナトくんを起こして朝ご飯を食べさせよう。
ベッドに上がりマナトくんに覆い被さり、重さで起こす。
「マナトくん起きて〜。朝ご飯出来てるよ〜?」
「…んー。シアン?え、もう朝?わぁシアン可愛い…良い匂い」
ギューっと抱きしめられて匂いを嗅がれながら、頬ずりされたり、顔中にちゅっちゅとキスして揉みくちゃにされる。
「ちょ、マナトくん!お化粧取れちゃう。やだくすぐったい!あっ!おっぱいダメ。こらっ!朝ご飯食べる時間なくなっちゃうから!だめっ!きゃーーーー!あははははは!もう…ホントに!…あはははははは!」
と、笑っていられたのも最初のうちだけだった。
「ああっ!な…んで朝から…。ちょっ、マナトくん!んん…」
「…朝からシアンが可愛過ぎるのが悪い。こんな可愛く誘われてるのに手を出さない方がどうかしてる…」
「ん!誘って…ないっ…。ホントだめ!時間なくなっちゃう…」
キスされ本気になったマナトくんに朝ご飯として美味しく頂かれた。
さて、時間がなくなった。さっと身体を拭いて着替えを済ませる。
コンビニでコーヒー買って行きたい…。まぁまだ間に合うか…。
「マナトくんのお弁当と、これ鍵!また連絡するね!行ってきます!」
「スーツのシアンも超絶可愛い〜。こっち向いて?お願いギュってさせて?」
急いで出ようと思ったけど捕まった。
「あー。…うん。ありがと」
マナトくんが頬ずりして首にちゅっちゅしながら、背中を撫でてくれる。
コーヒー…
「ねぇシアン。…もうさ…今日お休みしない?」
「しないしないっ!今日は行くよ!そろそろホントに走らないといけなくなっちゃう!」
「うーーーーん。…じゃあ、いってらっしゃいのチューさせて」
「はいっ!行ってきます!ちゅ」
「あはは。やっつけ!いってらっしゃい。ちゅっ。頑張ってね!」
「ありがと!鍵お願いね!」
「はーい」
駅までちょっと早歩きした。
会社の近くのコンビニを覗く。
あ!空いてる!よし!コーヒー買っても間に合う〜。今日は…。うーん。そうだなぁ〜。カフェオレにしようかな!
おいしいコーヒーとやらが出来上がるまでボーっと機械を眺めていると声を掛けられた。
「あれ?楠木ちゃん?めずらしく今日はゆっくりだね」
「あ、平井さん、おはようございます」
「おはよぉ。ん?なんか雰囲気変わったねぇ。彼氏でも出来た?」
「えっ!?な、な、なんで!?
そんなの分かるんですか!?」
「ホントに彼氏出来たんだ!あはは」
「ああ、なんだ揶揄われたんですね…」
「いやでも、指輪してるし。それに元々可愛いけど、綺麗になったかなー?なになにぃ?もうそんなに愛されてるの?」
「…っ!えっとぉ!?」
マナトくんとの色々(言葉責めとか…指使いとか…マナトくんのが入ってくる時の感覚とか…)を思い出してぶわっと顔が赤くなったと思う。
「マジか!冗談で言ったのに!」
また揶揄われてたらしい…。まんまとバレてしまった…。平井さんはお腹を抱えて笑っていた。
「あ、そうだ。平井さんにはお世話になっているので、先に報告させて頂きますね。私、退職する事になりました」
「え!?どーゆー事!?」
「あー。えーっと…。話せば長くなるので…」
「え、そんなの何日掛かっても聞くよぉ?どしたの?何かあった?」
平井さんはいつも優しいなぁ…
「ありがとうございます。
…うーん。結婚するので…辞める事になりました…」
「みじかっ!」
「ホントですね。あはは」
「そっかぁー。おめでとう!でも寂しくなるなぁ…。今度彼氏紹介してよぉ」
「はい!是非」
平井さんとお話ししながら会社に向かった。
今日は全然仕事に身が入らない。ふとした拍子にマナトくんの事を思い出したり、色々…ホントに色々思い出してしまって身体がビクっとしてしまう。
これはイカンです…。全く集中力ないや。大きなミスする前に早く帰ろう…。
お昼休み、お弁当を食べながらマナトくんにメールする。
『お疲れ様〜。
マナトくーん。
早く会いたいよー。』
『シアンお疲れ様。
俺も早くシアンに会いたい。
もうシアンが不足してきてて寂しい。
今日帰ったらいっぱい補充させてね。』
『うん。今日はなる早で帰るよ。
マナトくんの事ばっか考えちゃって仕事に身が入らないや。』
『えー!嬉しい!シアン可愛い大好き早く会いたい抱きしめたい舐めたい入れたいめちゃくちゃにしたい中出ししたい。うーん…会社だから自重するよ…。』
『自重できてないできてないw』
わぁ…。やば。今のマナトくんのメールでお腹キュンキュンしちゃった…。
『ホント早く会いたいなぁ。
私もマナトくんを抱きしめたい。
こんな気持ちになったの初めてだよ…。
待ち遠しくてしかたない。』
『俺もだよ。シアン愛してるよ』
『私もマナトくんの事愛してる。
あ、帰りに上司に退職の話しするから、少し遅くなるかもしれない。お話し終わったら連絡するねー。』
『わかった!お弁当美味しかった!ありがとね!
おれもまた連絡する』
わぁ…幸せぇ。あ!もうお昼休み終わる。…心がうわずってる。
スマホでネットニュースや天気予報をみて心を落ち着けた。
自分の事に必死な私は、周りから見られているのに全く気付いていなかった。
定時になってすぐ上司に退職したいと伝えた。いつも気に掛けてくれていたので、とても喜んでくれていたが、「寂しくなるね。」と困ったように笑っていた。
退職の時期や引継ぎの事を話して、1ヶ月後に退職で良いと言ってくれた。
『上司とお話し終わったー。帰るー。』とマナトくんにメールした。
帰る支度をしていると、後輩が話し掛けてきた。
「楠木さん。お休み中なにかありました?」
「吉木くん。ん?どうして?」
「なんか雰囲気が全然違ってて…。なんか、危なっかしいなーって。気を付けないと変なのに食べられちゃいますよ?」
「えー?そんな怖いのいる?ホラー映画じゃん」
「そう言う食べるじゃないです。今日はもう帰りますか?しばらく資料室とか作業部屋とか絶対1人で行かないで僕に声掛けて下さい。もし、僕が居なかったら平井さんでも良いです。約束ですよ?」
「ん?うん。分かったー。私も実は資料室怖いから苦手なんだよねー。天井に髪の毛の長いお姉さんが張り付いてたらどうしよう!って思って天井ばっかり見ちゃう」
「いや…そう言うんじゃなく…。まぁいいです。とりあえず、1人にならないようにして下さい」
「何!?怖いんだけど!」
「もぅ…。僕はまだ帰れないんで、コンビニ行くついでに下まで送って行きますよ。寄り道しないで真っ直ぐ帰るんですよ?」
「うー。私子どもじゃないのにー」
「子どもじゃないから言ってるんですよ。楠木さんのおかげでこのフロアが犯罪者の温床みたいになってますからね。返事っ!」
「むー。…はーい!」
「じゃあ行きましょうか」
1階に降りると、入り口にスーツのマナトくんが立ってた。
ぐへぇ〜。顔面偏差値高過ぎる…。カッコえぇ〜。
「マナトくん!どーしたの?こっちに用事あったの?」
「シアンお疲れ様。心配で迎えに来ちゃった」
「わぁありがとう。あ、この子後輩の吉木くんだよ。
吉木くんありがとね!この人彼氏の須藤真人さん」
「彼氏!?…あ、初めまして、吉木です」
「ども。須藤です」
「じゃあ、俺はコンビニ行くんで。お疲れ様です」
「うん。お疲れ様。また明日ね」
「なに。アイツ…。絶対シアンの事好きじゃん…」
「え?それはないよ。吉木くんの恋愛対象は女の子じゃないと思うし…」
「え?なんでそう思ったの?…そんな事ないと思うんだけどなぁ…」
「だって、男の人とよく喋ってて、女の人と喋ってる所見た事ないって同僚が言ってたし、私と喋るのは席が隣りだからだよ?」
「はぁ…。それで男色に仕立て上げられるのか…怖すぎるんだけど…。でも、アイツはシアンの事好きだよ。絶対」
「マジか…吉木くん私の事、男だと思ってるの…?」
「いや、普通にノーマルだから」
いつも1人で帰る道をマナトくんとお喋りしながら帰るのはとっても新鮮でふわふわして楽しかった。




