彼氏をパリピとする時のY軸の値を求めよ。
ローテーブルだけではお料理達が全く乗り切らなかったので、先週届いた宅配便の大きな段ボールを補強して裏返し、白いシーツを掛けてテーブルっぽくした。
「おぉいいね。しかし凄い量買って来たんだな。
ちょっとしたパーティだな」
「マナトくんがお兄ちゃんをおもてなしする為に買ってくれたんだよ」
「そーなのか?悪いな!
詩杏の兄の亜蓮だ。よろしくな。」
「はじめまして。詩杏さんと結婚を前提にお付き合いさせて頂いております。
須藤真人と申します。よろしくお願いします」
「おー。堅苦しいのはなしにしよーぜ。
しかし凄い男前だな。」
「そんな、亜蓮さんこそ。よくおモテになるでしょうね」
「まぁ…。30までは遊び倒そうと思ってたんだけど、今日友だちの結婚式に参列して考えが変わったかな」
「そうなの!?じゃあ優奈さんと結婚するの?」
「まぁ…。話し合いに応じてくれたらプロポーズしようと思ってる」
「あー良かったぁ。きっと上手くいくよ!そう言えばなんで今日は話し合い出来なかったの?」
「本当は1日早く一緒に来てこっちで遊んで結婚式行って、ホテル泊まって帰る予定だったんだ…。
先週、今日の結婚式の話しから俺たちの結婚式の話しになって、俺がまだまだ結婚なんてする気ないって言ってしまったんだ。
そしたら「別れるわ。」って言われて…。
ホテルはギリギリキャンセル料掛からなかったから、キャンセルされちゃって…。」
「あちゃー」
「今日はこの後予定があるからって優奈は2次会も参加せずに帰っちまったよ…。
おっと悪い!先に食べようぜ!それにしてもめちゃくちゃ美味そうだな!」
「そーだね!何飲む?こないだお兄ちゃんがいっぱい買って来たビールとかカクテルとか全部手付かずで残ってるよ?」
「じゃあビール!」
「あ、俺取って来ますシアンは何飲む?」
「ありがとう!んーーー。そーだなぁ…んーーー。私も見る〜」
「うん。おいで」
マナトくんが自然に手を差し出してくれたから冷蔵庫までの短い距離を手を繋いで歩き、そのまま飲み物を選んだ。
「うぉい!うぉいうぉいうぉーーい!熱々が過ぎるだろ!見ててこっちが恥ずかしいわ!」
「え?そーですか?慣れてくださいね?」
お兄ちゃんがいつもの様にやいのやいの言って来るのをマナトくんがサラっと返すのが新鮮で面白かった。
お料理は全部ホントに美味しくて感動だった!デパ地下凄い!
1人1ずつ買ってくれていた伊勢海老様のグラタンをマナトくんが上手に温めてくれた。
もうこれは涙なくしては食べられない美味しさだった。でもこれも結構お高いはず…。
こんな贅沢していいのだろうか。神様マナト様ありがとうございます。
マナトくんが、空いた器を下げてくれたり、お兄ちゃんのお酒を取りに行ってくれたりと、至れり尽くせりで私はお尻に根っこが生えたように動かなかった。
「詩杏…お前さぁ…。マナトくんはお客さんだろ?全部やらせてたらダメだろう?」
「私も切にそー思います。
でもね。もう動けないの。
さっきステータス見たらスタミナゲージが空なの。今敵が来ても走れないわ」
「大丈夫ですよ。俺は今日とんでもなく長い時間寝ました。
今日は慣れないお店を連れ回してしまったのでシアンさんは疲れてしまったんでしょう。
元気な者が動けば良いんです。それに俺は一生シアンを甘やかしたいんで」
「へーへー。そうですか。で?慣れないお店って何処行ったんだ?」
「とんでもなくお高いブランドのお店だよ…。ハリー何とかさんって書いてた」
「ウィンストンね。婚約指輪を買いに行ったんです」
「え!ヤバ!…先越されてるし、いや…店イカついて…。え?もう買ったの?」
「うん。買って貰っちゃった…。」
「来月か再来月辺りでお兄さんとご両親のご都合の良い日にご挨拶に伺いますね」
「マジか…。俺やべぇな…。マッハで行動するわ。
あ、分かった!親には俺から言って都合の良い日聞いて詩杏に連絡するよ」
「ありがとうお兄ちゃん。
ねねねさっき一応メールしたんだよね?返事来てない?」
「んー。まだ来てないなぁ。
…うおぉ!来た!詩杏すげぇなおい!」
「タイミング神!まず謝って、明日の予定を聞きつつ、すぐに会いたいって伝えるべき!」
「分かった!」
「優奈さんは我慢強くて優しくて…お兄ちゃんの事大好きだと思うから大丈夫だよ。」
「あぁ…。」
マナトくんが私のお酒を取りに行って帰って来た。
身体にガッツリ触れる位置と言うか私を横から抱き込むように座った。
わぁ…マーベラス顔が良い。もっと近くで見たい。
なんなの?毛穴ないんだけど
ため息の出るような美しさだなぁ。うっとりとしてマナトくんを見上げる。
「ねぇシアン好きな人と両想いになれる確率ってどれくらいだと思う?」
「えー。どれくらいだろ。んー。40%くらい?」
「惜しいね。もう少し低くて35%くらいって言われてるんだって。
でもね?言葉にして相手に分かるように伝えなかったら0%なんだよ。
俺がシアンの事が忘れられなくて、会いたくて会いたくて仕方なくても、シアンに好きですって言わなかったら婚約指輪を買いに行く今日と言う未来はなかったんだよ」
マナトくんは私の頬を撫で、顔に掛かる髪を耳に掛けながら微笑む。
「マナトくん…。私の事を好きになってくれてありがとう」
私もマナトくんの耳の横の少し長い髪を耳に掛けた。
「シアンも…。俺の事好きになってくれてありがとう」
マナトくんの形の良い唇から目が離せなくなった、
「ほー。やっぱりそんな仲なのか…。
ところでどうやって出会ったんだ?」
声がした方に、はっと顔を向けると、お兄ちゃんがによによしながらじーっとこっちを見ていた。
げっ!お兄ちゃんの存在忘れてた!
キスしたいな。なんて思ってたし!
「それはですね!」
マナトくんが、よくぞ聞いてくれました!とばかりに意気揚々と語り出す。
「…っ!待ってマナトくん!あの事は言わないで!」
「「え?」」
「人助けをしたところだけを抜粋して伝えてー」
「何だよ。あの事って。自爆しに行ってるじゃんか!
ははは!マナトくん教えてくれよ。詩杏とどこで出会ってなんで好きになったのよ?」
マナトくんは、私達の出会いを冒頭から事細かに全て話した。
それはもう詳しく。私の記憶が鮮明によみがえるくらいに。
ただし彼目線の。そう。彼の主観のみの大いに偏った物語りを。
「あー。なんかそれ聞いた事あるぞ。
シアンがずっと前に言ってた、めちゃくちゃキレイな顔した男の子とご飯食べたって話しの子がマナトくんなのか?」
「えっと…私そんな事言ってたっけ?」
ちょ、ここでバラす!
「おう。私とは住む世界が違う美しい生き物が息をしてご飯食べた。だの、至高の微笑みがどうのこうの…。
まぁそんな感じの事言ってた。ゆーて、ちゃっかり連絡先交換して付き合ってたんかい!水クセェなぁ教えてくれたらよかったのに…」
「あーそうだったっけ…あはははは…は…はは…」
「シアン…」
「え?誰の話し?」
「ムリムリ誤魔化せないから」




