26.赤か青かどっちか選ぶ時はいつの時も緊迫するんですね。今回は保留で。
シャワーを浴びたようで可愛い寝グセは直されていて、着替えて出て来たマナトくんはグレーのスーツだった。
え、スーツ?くっ…めちゃくちゃカッコイイんですけど…。
中のベストもステキです!はぁはぁ…格好良いが過ぎます。息がしにくいです。
私はマナトくんの隣りにいる事に慣れる日が来るのだろうか。
例の如く手を繋ぎ、ハンドクリームでにゅるにゅるとマッサージをし合いながら駅へ向かった。
私でも食べられる甘さ控えめの美味しいパンケーキ屋さんにマナトくんを連れて行きたい。とんでもない量の生クリームなのに、私でもペロっと食べられてビックリしたのだ。
買い物が終わったら一緒に行ってもらおうと企んでいる。
まずは、「マナトくんがお揃いの指輪〜。と言っていたので、指輪を買いに行く事になった。
「おぉ。高級感溢れる重厚な佇まい。え?ここで買うの?」
「そーだよ?有名なブランドのお店だったら耐久性も品質も高いし、デザインも良いでしょ?」
「あー。…なるほど…?」
だからマナトくん今日はスーツなのか…。
マナトくんは堂々と入って行く。私…浮いてますよね?
「婚約指輪もここで買えばいいね。シアンはどんなのが好きなの?」
「え、えーっとぉ…。私はあんまり詳しくないんだよね。
指輪だったら、普段からいつも身に付けてマナトくんの事想いたいから、危なくないヤツ」
「分かった。ふふふっ。危なくないデザインね。
んー。0.75は欲しかったんだけど…0.5かな」
マナトくんはショーケースをさーっと見渡して、店員さんに「これお願いします」と指さして商品を出してもらっていた。
「これなんかどう?」
そう言って渡してくれたのはスッキリとしていて、細身で石の所に近付くにつれ細くなっている。大きめのダイヤが爪で抱えられていて、ザ・指輪って感じ。
私の手でも綺麗で美しく見えた。
「わぁこれ好き」
「こっちはどう?このVのを台座にして、それからこれをするの。2個で更にキレイでしょ?」
「おぉー。石大っき…凄く綺麗だね。こう言うのも好きー。」
「そーなの?10コでも20コでも買ってあげたくなるね」
「うん。1コでいいよ?
最初の指輪の方がいいかな。仕事の時もできそうだし。
こっちはキレイだけど、特別なお出掛けの時しか出来なさそうだし」
「分かった。ネックレスペンダントとか見ておいでよ気に入ったのがあったら教えてね?」
「あ、確かにネックレス欲しかったんだよねー。
ちょっと見て来る〜」
フラフラと色々なデザインのネックレスを見て楽しんだ。
うわぁ…これは肩凝りそう…。いつすんの?
わぁ小ぶりだけどキレイな赤い色。他の明るい薄い赤とは全然違う…ルビーなのかなぁ?
深くて透き通った青。サファイアなのかな?
優しい水色とダイヤを散りばめたネックレスはとても好きなデザインだった。
キレイだなぁ〜。
1周して指輪の所に戻って来てしまった。
あ!そう言えば、お揃いの指輪買うんじゃなかった…?
でも、言えない。婚約指輪ともう1つお揃いのも買ってとか…
マナトくんとお揃いの指輪はしたいし…
ペアで出来そうな指輪は私からプレゼントしようかなぁ。と思ってペアの指輪を見ていたら、シックで素敵だなと思うデザインの指輪があったので、値段の点と0の数を数えて目玉がショーケースをぶち破るかと思った。
ちょい待ち!じゃあ、さっき私が好きー!ってアホみたいな顔して言った、石が付いてる指輪はおいくらだったんだよぉー!
「ままままままままマナトくん…」
慌ててマナト君の所に戻ると「あ、はい。一括で」と魔法のカードを店員さんにやうやうしく受け取られていた。
「シアン。他にいいのあった?一緒に買おうか?」
「ももももももう買っちゃったの?」
「どーしたの?」
「いやいやいやいや。あのあのあのあの…」
いくらだったの?とは聞けない…聞けないけど…。
「あ、シアンが壊れた。
大丈夫です。それで一旦お会計お願いします」
かかか買っちゃうじゃん!
「っ!あのあのあのあの」
「シアン?落ち着いて?どーしたの?」
金銭感覚が違う気がしてきた。
「マナトくんは…石油王なのです…か?」
「え?くふふふふふふ。…違いますよ?」
「…そうですね。知ってました」
「それで?どのネックレス見てたの?」
「見てない見てない見てない…」
「えー。教えてよー。」
「えっと本当に見てなくて…」
「ふーん何?全部買われたいの?」
ぎゃびっ!こわっ!!
「いやそんな!まさかっ!」
「じゃあ一緒に見ようか」
「この青いのが散らばってるのはシアンの色だね」
「うんうんキレイだよねー!このデザイン好きだなぁと思った」
シアンの色ってぇ。きゃっ。
「こっちの赤いのはキレイなピジョンブラッドだね」
ピジョンぶなんて?
「…ん?あー。他のとは全然違ってキレイだなって思った!
…っは!やっ…その…」
「赤と青どっちにするの?」
「…ぇ。何言って…」
「赤いのと青いのどっちが欲しいの?」
「いや…あの…」
「どっちも欲しいの?」
「待って待ってマナトくん私が欲しいなと思ってたのは、もっとお手頃な物で…。ここのは高価過ぎて…。
怖くて身に付けて出歩けないよ」
「シアンにプレゼントさせてよ」
そんな悲しそうな顔で言われると、意地悪してる気分になっちゃう…。
「…分かった。ありがとう。じゃあ、他のお店のも見に行ってもいい?気に入ったのがあったらプレゼントしてくれる?」
「うん。じゃあ刻印してもらう文字とか手続きしもしてくるから、ちょっと待っててね」
「一緒に行くよ。
…マナトくん。ありがとね?」
振り返ったマナトくんは本当に格好良かった…。
「どういたしまして」
マナトくんは刻印する文字を聞かれ
『stay with me 』とサラサラと紙に書いた。
綺麗な字だなぁ…。
「これでお願いします」
『stay with me 私と一緒に居て』
夜中に魘されていたマナトくんを思い出して涙が出てしまった。
早くマナトくんの不安を取り除いてあげたいな。
マナトくんに頭をぽんぼんされ、店員さんに微笑まれながらティッシュを差し出されて恥ずかしかった。
あ、はい…ありがとうございます。マナトくんカッケぇ〜!と思ってたらハンカチ入れ忘れたんです…
納期は3週間後で、また取りに来る事になった。
お店を出てから、ネックレスは普段使い出来るようにもう少しリーズナブルな物でとお願いした。
でも、マナトくんの強いこだわりで、プラチナ製で名前が通ってるお店の物しかダメ。と限定された。
私は1万円以内のものにしようと思ってたんす…
想定の10倍以上のお値段のネックレスを首に掛けられ緊張で手が震えた。
マナトくんが選んでくれたのは青い石が控えめに入っていて可愛くてとても気に入ってしまったので…。
買って貰いました。
もういいや…今日マナトくんは油田を持っていると思おう。
「ありがとね!マナトくん!」
「どういたしまして」と、ふんわり微笑むマナトくんはそれはそれは神々しく大天使様のようでした。油田持ちの。
「ねぇ…マナトくん…。私は…マナトくんと今日お揃いの指輪をして帰られると思ってて…。
私が買えるくらいの安いのはヤダ?」
「…っ!シアン。こんな所でなんて可愛い事言うの?いっぱい人がいるのに食べちゃうよ?」
「いやいや。こんな所で食べないで」
「シアンとお揃いなら100円のでも絆創膏でも何でも嬉しいよ!」
「ホント!?あはは!絆創膏!
じゃあ、そんなに高いのは買えないけど、そこそこのデザインの指輪探そう!」
「わーい!シアンとお揃いだぁ」
大きなモールの中に入ってる、ジュエリーショップでマナトくんにとてつもなく似合う指輪を発見した!
プラチナの艶消しでカチっとしたフォルムに、シューっと柔らかい曲線が入っていて、埋め込まれたジルコニアがキラリと輝いている。
これステキじゃない?ジルコニアもパワーストーンなんだぁ。
なになに?邪悪なモノを祓い、精神の安定を保つ…。マナトくん。アナタコレヒツヨウヨ。
ディスプレイしている物ではなく、新しい物を出してくれた。少し背伸びすれば私にも買えるお値段だった。
うん!キミに決めた!
1年保証で、刻印は1年以内なら後日でも請負ってくれるそうな。ありがてぇ。
指輪ゲットだぜっ!
今日持って帰りますー!
さてパンケーキ屋さんへ連れて行こう。
ホント疲れた…。いつもは食べたいと思わないのに、甘いのが食べたいです。
「パンケーキかぁ…シアンも好きなの?」
「ふふふ。私は甘いものは得意ではない。
だが、ここのは美味しい!と思ったのだよ!
まぁ一度食べてみたまえマナトくん」
「分かりました!シアン隊長」
「うむ。では参るぞ。
あ、2人ですぅ…」
「ぐっふふふふふふふ。シアンは本当に面白いね」
1番奥の席に通された。
「ねぇネックレス付けさせて?シアンは指輪はめてくれる?」
壁に向かい、髪を避けて、もしかしたらネックレスが付けやすいかも知れない態勢になる。
こんな感じで付けられるかな?
マナトくんは私の頭の上からネックレスを下ろし、手早くチェーンを繋いでタートルネックの中にしまった。
あ、服の中にしまうの?あ、確かにチェーンそんなに長くないもんね。
「帰ったらゆっくり見せてね?さ、次は指輪だよ?」
「あ、うん。ありがとう。私も見るの楽しみ」
「どの指にするの?」
「シアンから貰った指輪なんだから左手の薬指にしたい」
「そうだね!私もマナトくんとお揃いの指輪なら左手の薬指にしたい」
言っててちょっと照れて来た…。
「はいマナトくん左手ちょうだい?」
「うん」
「マナトくん手が綺麗だからよく似合うね!
はい!私にも付けて?」
「シアン…。俺一生シアンの事大切にするからね?」
ぐふっ…。きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!
「…ありがとう」
「あーあ。オウチだったらシアンの事食べ散らかせたのに」
「ちょっ、マナトくん…」
そんな事したら、お兄ちゃんが来るのに絶対バレるし!
2人の世界に居たシアンちゃんは、周りの生温かい目には全く気付いていませんでした。
お読みくださいましてありがとうございました。




