第20話
サブに連れられ部屋を出た時には空は明けていた。一晩中あの悪魔のような女に監禁されていたようだ。窓から差し込む太陽で目が痛い。
部屋を出て玄関に向かう廊下では老若男女が立ち並び頭を下げてくる。「お疲れ様です!!」や「感服いたしました!!」など、よく分からない言葉を投げかけられるが、怖くて目を合わせることもできない。
かけられた言葉に少しの疑問は抱くが、早くこの場からから逃げたい一心で早足に玄関へと向かう。
しかし、玄関を出ても長いのがこの家。
デカい庭に作られた道を軋む体でなんとか歩いていく。前を歩くサブも俺に気を使ってか少し歩むスピードを落としていてくれている気がする。
「……おい」
そんな道中。特に意識はしていなかったが視線が気になったのか。歩み止めこちらを振り返る。相変わらずの強面だがどこか哀れみを感じるような視線。気の所為だろうか。
「大変だったな」
「え、ま、まぁそうですね……正直」
「ふっ……」
何が聞きたかったのか。少しの笑みを浮かべてまた歩き出す。
正直に言えば大変でしたとか。疲れました。どころではない。お宅のお嬢さんは立派に犯罪を犯しております。しかも高校1年生で先輩の男を監禁。さらに言えば友達のお兄ちゃんを、である。一体どんな教育しているんだこの家は。……大声でと言ってやりたいが、この家ではむしろ教育に成功していると判断しているのかもしれない。どこまでも恐ろしいギャルである。
そんな言いたいことはグッと抑えてさっさと家に帰って冬美をこれでもかとしばいてからゆっくり寝よう。うん。そうしよう。
◇
そこからは会話もなく車道に出る最後の扉を開けるサブ。
首をクイッと曲げて合図を出す。ここから出ろ。ということだろう。
「ありがとうございました……」
こちとら全くありがたくないが一応の礼儀で挨拶をするとサブも返すように口を開く。
「おい」
「はい?」
「お嬢を頼んだぞ……、夏己」
バタッ。
「え……?」
お嬢を頼む……?
おいおいおい、ちょっと待ってくれと。
なんか嫌な勘違いをされている気がする。それも盛大に勘違いをされている気がする……。が真意を聞く前に無常にも扉は閉められる。
「……とりあえず帰るか」




