第18話
あれからどれほど時間が経っただろうか・・・。
拘束具の締付による節々の痛み。今にも暴発しそうな膀胱。なぜ家にまで行ってしまったのかという後悔の渦。テレビから流れる電波ソングも相まって頭が…、頭がどうにかなってしまいそうである。
そんな絶賛拷問され中の人間が隣にいるにも関わらずヤンキーギャル改めメンヘラヤンキー巨乳ギャル。こと佐奈ちゃんはついに本性を表し頭にハチマキを巻き、よくわからんハッピ(恐らくこの作品のキャラがモチーフ)を羽織り、手にはギンギラに光るステッキを振り回しながら叫び続けいる。
「ハイ!ハイ!ハイ! よーーーーっいいよ!いいよ!ミキちゃん!!」
俺を拘束してからずっとこれである。はっきり言って怖すぎる。異常者である。この家が本職とかそういうのじゃなくて、ただただこの女が怖い。なんでこんなやばい人間がギャルをしているのか。騙されたとかもうそ言う次元の話ではない。
なぜだろうか・・・。あんなに怖かったサブに早く逢いたい。というか、こんなだけ騒いでいれば家の人も注意しにこればいいものの、誰もこない。もしかして親父さんの娘だから怖がられているのではなく、この狂乱モード佐奈ちゃんを知っているからこそ、サブはあの態度なのかもしれない…。
「お兄さん。元気ないですね? 大丈夫ですか? もうそろそろ終わりますから気合い入れていきましょう!!」
・・・正気か、こいつ?
誰が何を言っているのか。元気がないのはお前のせいだ。もちろん元気でもないし、大丈夫でもない。声も出ないし、もっというと漏れそうである。ちょっとでも動かそうとすると腰を巻くベルトがちょうど膀胱らへんに押し込まれる。
膀胱に暴行・・・フッ。
………。
「……助けてくれっ!!」
「キャッ、急にどうしたんですかお兄さん!」
「急じゃねぇ!むしろよく我慢したほうだ!! いい加減トイレにだけでも行かせくれ!!」
「だめです。完走するまで画面から動かない。我が家の家訓です」
「嘘つけっ! そんな家訓があってたまるか!! 逃げないから! 絶対逃げないから!!」
というか、一時停止くらいしろ。催してきた時からずっとこれである。
もう流石に漏れる。・・・限界だ。大ならまだ我慢はできる。体制的にも腰を曲げればふた山位は乗り越えられる。だが、小はだめだ。こいつには節操がない。乗り越えたと思ったらまさかの山脈である。どれだけ歩けばいい、もう俺は沢山乗り越えた。これ以上は無理。
「そんなにしたいんですか?」
「…ああ、もう無理だ。俺はあといくつ乗り越えればいい。」
「何言ってるんですか…? まぁ、そこまで言うならいいですよ」
「本当か!! ありがとう、ありがとう…」
「そんな泣かなくても…」
思わず垂れる涙…。膀胱もそろそろ垂らしたいと叫んでいる。
「はやく外してくれ、これ」
「・・・え?」
「いや、え、じゃなくて。これがあるとトイレ行けないだろ」
「何を言ってるんですか? ……ここでしてください」
「は、はい……?」
何を言ってるんだコイツハ・・・。
「サブが後で拭きますので、大丈夫ですよ。……お兄さん」
・・・俺もう無理なのかもしれない。




