感情ダダ洩れさんの話
⑺感情ダダ洩れさんの話
…わかりやすいらしい。俺。自覚は無いけど。何を考えているのか、どんな気分なのか、すぐわかるってよく言われる。初対面の人にも。まぁ、信じてないけど。感情がすぐ顔に出る主人公の漫画を読みながら、なんとなくそんなことを思った。俺は向かいで同じ漫画の別巻を読むなっちゃんに聞いた。
「なっちゃん」
なっちゃんは俺の幼馴染。もうなんだかんだ10年以上隣にいるので、俺の色々を知るこいつに聞けば、それが正しいかが一発でわかるというわけだ。
「んー?」
漫画から顔を1ミリも上げないまま、なっちゃんは生返事をする。こいつはいつもこんな感じだから、構わず続ける。
「俺ってわかりやすい?」
「んー…。ん…」
なっちゃんの読む話が良い展開にでも入ったのだろうか。超生な、冷蔵庫から出して何時間も経って生ぬるくなった牛乳が1筋コップの淵をツーー―と滴る感じの超超スーパーハイパー生返事をされた。俺は、むぅ、なんでぃ、と思いながらコップに入った麦茶をすすった。
「今、むぅ、なんでぃって思ったね」
嘘やん。
「はい今、嘘やん。って思った」
まさか全部お見通しじゃ…。
「そのまさか。全部お見通しだよーん。わかりやすいよ、こっちゃ。すごくわかりやすい。」
…わかりやすいらしい。俺。すごく。