〇にたがりさんの話Ⅱ
〇にたがりさんが、帰ってきたようです。
⑹〇にたがりさんの話Ⅱ
日付が変わるまであと11分。今日が終わるという謎の不安と辛さが胸元に絡みつき、次第に全身に馴染んだ。
今日も〇に損ねた。ここ最近毎晩呟いている。こんなに〇のことを思っているのに、一向にやってこない死神。彼?彼女?は一体どこで仕事をサボっているんだと思う。
〇にたい。ずっと思ってる。「ならば〇んだら良いじゃないか。どうぞ。ほら早く。」と言う人もいるだろうが、いやいや違うんだよな。俺は自分からは何があっても〇にたくはない。万が一やっぱりこんなことするんじゃなかったなんて思いたくないし?誰かに●してほしい。もしくはどこかから俺のことを見てる神様に、この人生を終わらせてほしい。そう思ってる。だけどその神様の裁判によれば、俺はまだ生きていて良いらしい。今までギリギリのところをすり抜けてきたことが何度かあったのも、急にその裁判で俺を●さない決断が下されたからだろう。…別にいいのに。もういいのに。需要と供給がなってない。なってないし、俺のいるこの世界が不正解だってことに、彼らはどうして気が付かないのだろう。絶対に俺と言うネジが1本抜け落ちて、そこに別の誰かが入った世界の方が正解に決まっている。その方が世界を回してる歯車的な何かももっとスムーズに回るよ。
眠…。あぁ、もう日付変わってるじゃん。明日も早いのにまたこんな時間まで起きてしまった。とりあえず部屋の電気を消し、タオルケットに潜り込む。今日も疲れた。瞼が自然と閉じる。それなのに意識は覚醒状態を保っている。
俺の眠れないパターンは2つある。頭の中で一斉に大勢がひそひそ話をしてうるさいパターンと、体は怠いのに頭が異常に元気なパターンだ。最近はずっと後者。頭は異常覚醒してやる気だけが独り歩きをしている。こんなになってるから変な夢も見るのかなとか思う。この現実をしっかり生きた後に、休みなくもう1つの現実に投げ込まれている感じだ。常に疲れているのも納得がいく。
一昨日くらいに見た悪夢の登場人物のことが、暗闇の中にふと思い出されゾワッとした。大嫌いなピエロの夢だった。手足が長すぎるそいつが、上から街を監視していた夢だった。目を合わせてはいけないらしく、合わせてしまった誰かの連れていかれる叫びでさえもよく覚えている。そいつの後ろ姿もよく覚えている。頭上遥か高くでも目立つ白いシルクハット。その下に生えたくるくるアフロ。ワインレッドのジャケットに、それと同じ色と白のボーダーのズボン。どの建物よりもずっとずっと高かった。顔は見えなかったし、そもそも見れなかった。無理やり自分を起こしたから。だがいつまでもそいつのことが頭から離れない。汗だくではあったが、呼吸が荒かったかはよく覚えていない。とにかく怖かった。目が合ったら連れて行く手足長すぎピエロ。3,4日たった今でもはっきりと思い出すことができる。俺は閉じていた眼を開けた。暗闇が別の暗闇に変わっただけだった。でもそいつの姿をかき消すには良かった。
はぁ。今夜は手足長すぎピエロが俺の眠りを荒らしませんようにと祈りながら、俺は1人、また暗闇に落ちた。
夢は僕のもの。マジで焦った。