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最終話 車の外で

  車の中での告白から、キスを経て。

 自分にしては珍しく、ずっとドキドキした気持ちを持て余したまま。

 車が目的地に着くのを待ったのだった。そして-


「おーい。到着したぞー」


 そんな同期の男の声とともに、外の光が差し込んでくる。


「て、え?」


 何か信じられないものを見たという表情。


「どうかしたのか?」


 何に驚いているのかわからない。


「あー、やっぱりデキちゃったかー」


 実委の同期女子の一人がそんな事を言う。


「元々、幸康(ゆきやす)君と芽衣(めい)ちゃん仲よさげだったもんねー」


 別の女子が納得したという風に言う。


「ええと、デキたってどういうことだ?」


 状況が掴めない。


「だって、さあ。そんなに密着して抱き合ってたら、ねえ」


 あ。


「わ、悪い」


 慌てて、トランクから外に出る。太陽の日差しが眩しい。


「……(ゆき)ちゃんのバカ」


 恥ずかしい場面を見られたからか、そんな事をぼそっと言う芽衣。


「なんていうか、実委名物なんだが、こうもあっさりデキるとはなあ」


 また別の男子がそんな事を言う。


「実委名物……ですか?」


 何のことかわからないといった風の芽衣。

 そういえば、そんな話もあったな。


「実委だと、ちょくちょく、こんな感じでトランクに入り切らない人員を押し込めるんだけどな。一緒に入った男女はカップルになる率が高いんだよ」


 まあ、元々、気がある男女が入る事が多いし、それが狭い空間の中で二人っきりだったら、ある意味必然なのかもしれない。


「ふたりとも、おめでと!ところで、二人って前から知り合いぽかったんだけどさー。後でじっくり馴れ初めを聞かせてね?」


 今年の実委の委員長である女子がそんなことを言ったのだった。


「な、馴れ初めって……」


 恥ずかしい場面を見られて、さらにからかわれたせいか、芽衣の羞恥は限界という感じだ。


「まあ、諦めろ。大学生ってのは、そういうものだ」


 ポンと芽衣の肩に手を置いて、手をつないで歩きだす。


「幸ちゃんは、相変わらず動じないですね……」


 涙目で睨みつけてくる芽衣。

 そんな様子も可愛らしい。


「性分だからな。お前もそれは了解の上だろ?」


 少し愉快な気分でそんな言葉を返す。


「私、これから苦労しそうな気がします……」


 そんな芽衣の、可愛い彼女のぼやきが空に消えていった。


「「好きでした、先輩!」車のトランクで、気になっていた娘から告白された俺」

はこれにて完結です。今回は、車のトランクという特殊シチュエーションでのお話を描いてみました。


もし、読んでニヤニヤしていただけたなら作者としてはこれ以上ない幸せです。

ブクマや評価、感想で励ましていただけるとモチベ維持になるので、嬉しいです。 m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] うまいこと話ごとに視点を変えて、きれいにまとまっていると思います。 [気になる点] 実行委員会、それ常習じゃあまずいでしょう/w 座席以外に座っちゃいけないのは、五月とメイでも知っているぞ…
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