結婚式の予行練習
本日からKADOKAWAさまよりカドコミ(WEB・アプリ)とニコニコ静画にて本作のコミカライズがスタートします‼
カドコミ(WEB)
https://comic-walker.com/detail/KC_006932_S/episodes/KC_0069320000200011_E
ニコニコ静画
https://manga.nicovideo.jp/comic/74034
詳細は活動報告よりご確認ください。
近いうちに、また。そう伝えたのは、たぶんエヴァルトと再会するのが学園に入学してからと思っていたからだ。
ゲームでは、スフィアが覚醒した後、一週間ほど王宮に泊まりつつ学園に向かう準備をしていた。
けれど、婚約に明確にNOと意思表示をしたことで、王宮に泊まり込みをさせるより、普通に突貫で準備をして学園に入学させたほうがいいんじゃないかという意見が占めたらしい。
よって私は覚醒して二日後、制服の採寸や教科書の手配、さらには学園の寮に持っていく生活用品もろもろを至急揃える必要が出てきて王都の街に向かうことになった。
――エヴァルトと一緒に。
「さて、これから結婚式場に向かいますか」
「いや……買い物に行くんだよ……?」
「結婚指輪を買いに?」
「いや、教材を買うお金は、国のお金だからね?」
王都の中でも一際上質でセンスがいい店が立ち並ぶ、なんて言われているアルベール通りをエヴァルトと一緒に歩く。
私は父が親の義務を果たさなかったことで、王家の用意が間に合わないレベルで物がない。そして、その保護者役として選ばれたのがエヴァルトだった。絶対運命だ。
だからこうして買い物をすることになったけど、これはもうデートだと思う。後ろには王家に仕えている護衛の人たちがついていて、こちらを見守っているけど、完全にデートだ。
「君はどんな服がほしい? 僕も自分の洋服見ちゃおうかな」
「強い装備が欲しいです!」
「武器も必要なの?」
昨日、私は王家の鑑定士の人たちに、身体能力もろもろについて調べられることとなり、王城に泊まった。そうして判明した私の能力値は、光の魔力レベルが測定不可と夢のある値が出ていたけど、鑑定士の人曰く体力は微妙らしい。栄養のある食事を取ることや、きちんと太陽を浴びて睡眠を取り湯浴みをすることをすすめられてしまった。
だから手っ取り早く装備を整えたり、体力が尽きても戦える方法を見つけたい! それに今日、リリーはお母さんと一緒に王城で色々説明を受けるらしいし、こっそり装備を整え驚かすチャンスだ。
「とりあえず、仕立て屋さんに行こうね。生活に必要なものを買って、お金が余ったら武器屋さんを見てみようか」
何故かエヴァルトは幼子を見るような目を向けてくる。緊張してあえてのことなのかな。私も彼と歩くことにどきどきしている。一緒だ!
「はぐれるので手を繋ぎましょう!」
「え」
エヴァルトがぴたりと足を止めた。なんだか彼は出会ってからずっと「え」しか言っていない気がする。
「手を繋ぐの?」
ゲームでの彼はキスは挨拶! それ以上も嗜み! という状態だった。王都は人も多いし、はぐれないようにと思ってたけど……ものすごくおろおろしているような……?
「あれ? キスとかあいさつでしてますよね? ほっぺとか、他の方に……」
「えっ、あ、ああ、そうだけど……そうだ。うん。僕はそういうことを簡単に出来る人間だ。うん」
エヴァルトはまるで自分に言い聞かせるように、小刻みにうなずく。もしかしてこの反応は、私のことをかなり愛しているのでは……? 他の人には簡単に出来るのに、私にはできない! みたいなやつでは?
「今日入籍します?」
「いや、えっと、服を見に行こうか」
「はい!」
私はエヴァルトの手をぎゅっと握った。彼は顔を赤くする。可愛い! 思わずじっと見つめると「見ないで」とそっぽを向かれてしまい、そのまま無言で仕立て屋さんへと歩いたのだった。
◇◇◇
「かっこいいですね! 結婚してください」
「君はそればかりだね」
「海外の言葉での求婚をお望みでしょうか?」
「そういう意味ではないよ。というか、そろそろ君の服を選ばない?」
仕立て屋さんに向かった私達は、早速……というかエヴァルトのお洋服を見立てていた。
本当は国のお金で彼に見合う服をオーダーメイドで! というのが全国民の総意だろうけど、もう四日後には入学だ。時間が足りない。だから既製品の服をあれこれ選んでいるわけだけど……エヴァルトは全部似合う!
「本当に、エヴァルトさんは何でも似合いますね……かっこいいです。好きです」
「あ、ありがとう……」
「あっ、この間のミリタリーっぽいダークグレーのコートもすごい似合っていましたよ。でもなんと言っても今着ているシックなジャケットは、紫水晶に似た柄布があてられ金糸で縁取られているところが貴方の上品さと染まらぬ気高さを表しているようで素敵です。この服は、エヴァルトに着てもらうだけに神が仕立て屋さんに天啓を授け完成したのだと確信しています」
「いや、さっき蝶から着想を得たとお店の人が言っていたよ? というか、君の服を見立てに来たんだよ今日は。一回さ、一回君の服選びをしよう?」
「さて次は中に着るベストです。衿の色と合わせて青紫系のベスト、そしてジャケットに合うスラックスを選んできました」
私はエヴァルトが着替えをしている間、試着室へうっかり突っ込んでしまいたい衝動を抑え彼に合うベストを見繕ってきた。
「それと白のジャケットも似合うと思いまして、それに合わせて灰色のシャツも持ってきました! 何か気になる色や形があれば持ってきますよ!」
「あっほら、サイズ分からないから、ね? 一旦僕と一緒に採寸してみようか」
「合いますよ」
「えっ」
「ぴったりです。私の目に狂いはありません。いつもあなただけをまっすぐ見つめています。安心してください!」
私はそっと試着室の扉を閉じた。しばらくして、私が選んだよりすぐりの服を着て輝きながらも、「なんでサイズを知ってるの……?」とオロオロしているエヴァルトが現れたのだった。
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