第2話 能力の円卓~大罪編~
気が付くと"俺たち"は真っ白な空間にいた。
「一体何が起こったのか分からないけど、授業なんかよりよっぽど面白そうじゃない」
「ったく、どこだここは?」
「な、なにが起きたの?」
「なんだここ?なんもねぇところだな」
「どこだか分からないけど、ご飯ないの?おやつでもいいわ」
「もう、どうなってるの?カレとの大事な用事があるから早く帰りたいんですけど」
「…ん?どこ?ここ?」
目の前には大きな円卓、その周りを7人で囲んでいる。
暁星炎さん、進堂くん、深海さん、烏鴉くん、高山さん、䍧鴕さん、そして、コイツの7人だ。
それぞれの前には紙が一枚ずつ置かれている。
その紙には、それぞれの名前と数行の文が書かれていた。
「なんかご丁寧に俺たちの名前が書かれた紙があるけど、なんだこれ?」
その紙に、一番に興味を示したのは、烏鴉くんであった。
「え~と、なになに…?」
すると、烏鴉くんは書かれている内容を読み上げた。
〈烏鴉 満〉
全てを自らの物とし、他者に譲らぬその態度を模し、汝にこの能力を与えん。
【強欲】能力:対象の効果を奪い、自分に付与する
欠点:負の効果も含める
「く~、なんか面白くなってきたな!他のヤツの効果が奪えるってワケか!でも、悪い効果も奪うっていうのが厄介だな…」
「何だかよく分からないけど、スゴそうだね!私だったら、ご飯が延々に食べられるとかかな?どれどれ…?」
烏鴉くんに続いて、高山さんも読み始めた。
〈高山 薫〉
底知れぬ食欲に身を任せ、全てを貪るその態度を模し、汝にこの能力を与えん。
【暴食】能力:効果を倍増する
欠点:消費する魔力も倍増する
「って何これ~、効果が倍増するのはいいけど、消費する魔力も倍増したら意味ないじゃん、期待して損した~」
「そろそろ私がいこうかしら、この私が1番だけじゃなくて、2番目も譲ったのよ、悪いものだったら許さないわ」
続いて、暁星炎さんが読み上げ始めた。
〈暁星炎 光〉
他者を見下し、自らを持ち上げるその態度を模し、汝にこの能力を与えん。
【傲慢】能力:周囲に負の効果を付与する
欠点:味方も含める
「さすが私、良い能力を貰ったわ。欠点なんてあって、ないようなものだわ。」
「ふざけんなよ、こっちが弱体化されたらどうしてくれんだよ!」
「なぜ、私のそばにいる前提なのかしら?私の周囲にいなければいい話じゃない」
「ったく、うるせぇな!俺がお前よりイイやつ引いてやる!」
その次は、進堂くんが読み上げた。
〈進堂 友閒〉
内に留まることを知らず、他者に牙を剥くその感情を模し、汝にこの能力を与えん。
【憤怒】能力:周囲の負の効果を倍増する
欠点:味方も含める
「あーもう、なんだよこれ!これじゃ、暁星炎と変わんねぇじゃねぇか!」
「ちょっと、さっきからうるさい!今、カレとの約束の時間に遅れそうで、必死に言い訳を考えてるの!これで、新しいバック買ってもらえなくなったらどうしよう…。あ~もう、ダメだダメだ!一旦、頭リセットしないと!で、なんだっけ?この紙になんか書いてあるんだっけ?えーと、なになに?」
今度は、䍧鴕さんが読み始めた。
〈䍧鴕 滝〉
自らの美貌を以って他者を翻弄するその態度を模し、汝にこの能力を与えん。
【色欲】能力:複数の対象に正の効果を付与する
欠点:正の効果は合計10割まで
「複数ってことは二人以上ってことかな?私にぴったりじゃん!彼氏み~んなをパワーアップっ!なんてね。でも、合計で100%まで?人数上限があるってこと~?」
「そんなの当たり前でしょ、だからこそ、あいつを荒波さんなんかに盗られたくないの!今度は私の番っ!」
そして、深海さんも読み上げた。
〈深海 粦〉
他者を羨み、欲するが故にねじ曲がったその感情を模し、汝にこの能力を与えん。
【嫉妬】能力:対象の効果を複製し、自分に付与する
欠点:負の効果も含む
「これを使って、あいつを振り向かせてみせる!悪いところもっていうのが気に入らないけど、この際、そんなこと言ってられないわ!」
(「あとはコイツのだけか、え~と?」)
最後にコイツの分を黙読する。
〈夢見 大海〉
人目を憚らず、何事にも無気力であるその態度を模し、汝にこの能力を与えん。
【怠惰】能力:休息時間の値だけ正の効果を付与する
欠点:値の調整はできない
「ふ~ん…なるほどねぇ…」
(「コイツ、いつの間に起きてたんだ!」)
「最後は夢見くん、あなたよ?あなたはどんな力を貰ったのかし…ら?また白い光?もう終わりなの?まあいいわ、これから存分に楽しめそうだから良しとするわ」
時を同じくして、別の生徒たちもまた、円卓の間に導かれていたのであった。