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九徳九罪  作者: sSnake
プロローグ
1/3

第1話 混沌な学級

 ここは、良くも悪くも個性あふれる人が集まる教室。

 個性があふれているということは、それだけ対立することも多いということだ。

 さっそく、教室の前のほうが騒がしい。

 

 「ちょっと暁星炎ぎょうせいえんさん、どこ行くの?」

 「帰るのよ」

 何も持たず、帰ろうとしているお嬢様気取りの彼女は、暁星炎ぎょうせいえん ひかり

 「帰るって、まだホームルームもやってないよ」

 「神前かみまえくん、あなたには関係ないじゃない」

 そんな彼女を呼び止める彼は、このクラスの学級委員を務める神前かみまえ 正義せいぎ

 暁星炎ぎょうせいえんさんは、自分の意見は必ず通ると思っている。端的に言えばわがままだ。

 それに対して、神前かみまえくんは、自分のことは後回しにして、他人を優先する紳士だ。

 そんな彼だから、自分の意見を押し通そうとする彼女とは対立してしまい、毎日一度は言い争いが起きている。

 一方、教室の後ろのほうからも、言い争う声がしている。


 「ねぇ、荒波あらなみさん、どういうこと?なんで昨日、あいつと一緒にいたの?私、あいつのことが好きだって、あんたに言っておいたはずよね?忘れたなんて言わせないわよ」

 声を荒げてる彼女は、深海ふかみ りん

 「ご…めんな…さい」

 「どういうことか聞いてるの」

 「あ…の…、一緒に…、帰ろうって言われて…、それで…」

 「私の気持ちを知っておいて、一緒に帰ったの?」

 「うっ…、ごめんなさい」

 「さっきから、ごめんなさいごめんなさいって…」

 そんな深海ふかみさんを相手に縮こまってる彼女は、荒波あらなみ ゆう

 二人の様子から察するに、恋愛がらみの話のようだ。しばらく収まりそうにない。


 すると、そんな教室にようやく先生が教室に入ってきた。

 このクラスの担任をしている夜鳥やとり 麻巳まみ先生だ。

 先生が教室に入ると同時に、言い争いがぱっと止む。

 暁星炎ぎょうせいえんさんたちも含め、全員が席に座り、教室が静まり返った。

 夜鳥先生に怖いという印象があるわけではない。むしろ、優しすぎるぐらいだ。

 それなのに不思議と、先生を前にすると生徒たちはみんなの姿勢がよくなる。

 「は~い、じゃあ、今日の朝のホームルームを始めま~す、今日たくさんプリントがあるから、芽森めもりくん、配ってもらえる?」

 先生の指示に従いプリントを配る彼は、芽森めもり 正義まさよし

 芽森めもりくんは、なぜかいつも先生の手伝いをさせられているのだが、嫌がっている様子は見受けられない。

 プリントの配布や連絡が済み、ホームルームが終わり、次の授業の準備を始める。

 またしても、騒動が起きている。


 「荒波あらなみさん、筆箱かりていい?いいよね、借りるよ」

 「え…、あ…」

 荒波あらなみさんの返事も聞かずに一方的に筆箱を持っていく彼は、烏鴉うがらす みつる

 「ちょっと、烏鴉うがらすくん、荒波あらなみさんが何も言ってないのに持っていったらダメだよ」

 「ったく、うるせぇな、めんどくせぇな、じゃあ睦月むつき、お前のでいいや、お前の借りるわ」

 「烏鴉うがらすくん、人の話を…」

 烏鴉うがらすくんの行為を注意し、代わりに筆箱を盗られた彼は、睦月むつき 英雄ひでお

 睦月むつきくんは、烏鴉うがらすくんの強奪行為を毎度注意しているのだが、標的が自分に移ってしまい、いつも損ばかりしている。

 「睦月むつきくん、私の代わりにごめんね」

 「いやいや、いつものことだから、それより荒波あらなみさんが無事なら、いいよ」


 それから、10分ほど経ち、一時限目の授業が始まった。

 一時限目の担当は夜鳥やとり先生だった。

 「これから、みんなをあてていくから、問題の答えを教えてね。え~と、まず一問目は~、進堂しんどうくん、お願い」

 「…」

 あてられたことに気づかず、ぼーとしている彼は、進堂しんどう 友閒ゆうま

 「進堂しんどうくん、あてられてるよ、早く答えないと」

 「…あ?、あぁ、分かってるよ、今、考えてたんだよ、、あー、もう、あと少しでわかりそうだったのに、邪魔すんなよ」

 「そんな、気づいてなさそうだったから、教えてあげたのに…」

 (「やっべ、全然わかんね」)

 「おいっ」

 「な、なに?」

 「なに?、じゃねぇんだよ、邪魔したんだから、答え教えろよ」

 理不尽に進堂しんどうくんに怒られている彼女は、日向ひなた みこと

 その横着な態度に周りがざわつく。一方、進堂しんどうくんはというと、どこか満足気であった。

 そのあと、次々と生徒があてられ、一時限目が終わった。

 それから、二限目、三限目、四限目と授業が行われていき、昼食の時間になった。


 「高山たかやまさん、相変わらず大きいお弁当箱ね、よくそんなに入るね?」

 「これでも全然足りないよ」

 見上げるほど、とは言いすぎだが、何段にも積み重なった弁当をあっという間に平らげる彼女は、高山たかやま かおる

 クラスの中でも細身なほうなのに、どこに入るというのだろう。

 「ダメだ、全然足りない、だれか分けてくれない? …あ、関部く~ん、まだ全然食べてないじゃん、もらっていい?」

 「ダメだよ、お母さんがせっかく作ってくれたんだから」

 「そんなこと言わないでさ、一口だけ、いや、一口じゃ足りない、二口、いやいや、三口…」

 「あー、もうわかったよ、好きなだけ食べればいいじゃん」

 「マジ?じゃあ、いっただっきまーす」

 (「またやってしまった…」)

 高山たかやまさんに、残りの弁当をすべて取られてしまった彼は、関部せきべ ごう

 高山たかやまさんの食欲に限界はない。お腹がいっぱいになった、というところも見たことがない。


 そのすぐ近くで、頭を抱えてる女子がいた。

 「ごはんから食べようかな、野菜からかな、それともお魚さん?う~ん…」

 何事も慎重に考えてしまう彼女は、さかえ 愛美まなみ

 慎重とは言ったが、彼女の慎重さは度が過ぎている。

 (キーンコーンカーンコーン)

 「あ~、また食べ損なった…、休み時間にでも食べよ、いや、放課後かな…」

 あのように、いつも考えがまとまらず、妥協もしないため、結局答えが出ないまま、時間だけが過ぎていく。


 ランチタイムが終わり、昼休みに入る。

 また、女子二人が言い争っている。今度は、䍧鴕そうださんと新憧しんどうさんだ。

 「䍧鴕そうださん、それ、携帯だよね?学校に持ってきちゃダメだよ」

 「知ってるよ、でもね、私には必要なの、だって、早くカレと連絡とれるようにしなくちゃいけないの」

 「それでも、校則は守らないと」

 「私ね、い~ぱい彼氏いるんだ、この服だって、このアクセサリーだってその彼氏たちから買ってもらったの、連絡遅れたら、その関係も終わっちゃうかもしれないの、分かる?」

 複数の男と付き合ってると暴露した彼女は、䍧鴕そうだ たき

 「そういう付き合いだって、いけないと思うな」

 「私にやきもち焼いてるの?だから、私に厳しくしてるの?そんな堅苦しい性格だから彼氏の二人や三人もできないのよ」

 「彼氏は一人がいい。携帯のことはもういいから、時間だし、席に戻るね」

 彼氏は一人がいいと、一途な彼女は、新憧しんどう 百菜ももな

 純粋な心を持つ新憧しんどうさんと付き合いたいという男もいれば、何人もの彼氏のうちの一人でもいいからと、䍧鴕そうださんを選ぼうとする男もいる。


 昼休みも終わり、午後の授業が始まる。

 この時間の授業は、みんな眠くなる。しかし、時間帯に関係なく眠り耽っている男がいる。

 「あいつ、今日も一日中寝てるよな。」

 「それな、逆に疲れそう」

 そんな話をされても、起きる気配のないコイツは、夢見ゆめみ 大海ひろみ

 「君たち、話してないで授業に集中しなよ」

 「あ、うん、ごめん、邪魔して」

 「わかってるならいい。」

 その横で、黙々とノートをとる真面目な彼は、中緒なかお 英智ひでとも

 寝たきりのコイツよりはマシだが、中緒なかおくんの度を越した真面目さにも付き合いづらさがある。


 すると、突然扉が開いた。

 「ちょっと、授業中失礼しまーす。夢見ゆめみくん、いますか?」

 夜鳥やとり先生だった。

 先生は、教室に入るなり、コイツのもとに駆け寄ってきた。

 「夢見ゆめみくん、起きて、夢見ゆめみ 大河たいがくん、起きて」

 (「先生、コイツが起きるわけ…」)

 「先生?おはようございま~す。でも、ボク、大河たいがじゃないよ、大海ひろみだよ?」

 (「マズい、おい、早く代われよ、くそっ」)

 なんとなく、察していただけただろうか、俺の名前は、夢見ゆめみ 大河たいが

 俺は二重人格者で、大海ひろみは俺のもう一つの人格だ。

 「夢見ゆめみくん、寝ぼけてるの?それよりも、また病室を抜け出して、学校に来たの?ダメじゃない、今すぐ病院に戻ろう? お母さんが心配してたよ。」

 周りはみんな、俺が二重人格者だということを知らない。だから、このままだと大変なことになる。

 先生が"俺たち"を支えながら、教室を出ようとする。


 するとその時、辺りが真っ白になった…。

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