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192 ががーぴーがー

ここからは三人称視点でお送りいたします。

「いけない! オルデ様!」


 宙を跳ねるように頭上を越えていく海のように深い青緑色のスライム。

 主に害をなす存在であるそれを追おうと、アインは反射的に体を主の方向へと向けた。


「あら、舐められたものね。この私、ミーリス・バルツを前によそ見なんて」


 スライムしか見えていなかったアインの目の前に、ふっと虹色の羽をもったグロリアが現れる。

 空間を超えたかのように現れた鳥グロリア、その鋭い蹴りがアインの体を一蹴する。

 虚を突かれた形になったアインだったが、守護闘士の名前は伊達ではなく白い体毛に覆われた腕でその攻撃をガードしきった。

 しかしそれはスライムを逃してしまったことと同義だった。


 アインの表情はわずかに歪んでいるだけだが、ウサギのような頭頂の長い耳はピクリピクリと小さく震え、両こぶしは固く握りしめられている。


「アイン、少し落ち着け。オルデ様は強い。たった一体のスライムに負けるなんてことないさ。それよりも、こいつらだ。はやく真っ二つにしてやろうぜ」


 カマキリのような緑色の鋭い鎌をもった少女ツヴァイ。彼女もアインと同じ守護闘士(レニールス)であるが、守るべき主の心配よりも目の前の獲物を狩る方に興味が向いている。


「あの……なんだかんだ言っているよりも、早く目の前の敵をかたずけてオルデ様のところに戻ったほうがいいのでは……。オルデ様寂しがってるかもしれませんし」


 オドオドしながらそう言ったのは霧状の体を持つ幽霊のような少女フィーア。

 その体の輪郭はぼやけており、どこからが体でどこからがそうではないのか区別がつきにくい。その特性により表情も明確には読み取りにくいことが自信なさげな態度を増す要因となっている。


「ががーぴーがー」


「分かりましたよドライ。あなたに言われたのならしかたありませんね。速やかに倒してオルデ様の元にはせ参じましょう」


 主に害をなす存在を通してしまったこと、それを追うことを邪魔されたことによって、内心はかなり激昂していたアインだったが、機械音声のドライの言葉を冷静に素直に受け入れる。


 常人には先ほどドライが発した機械音声が何を意味するのか判断はつかないが、守護闘士(レニールス)達は彼女の言葉を理解している。


 そしてリーダー格であるアインがその言葉を素直に受け入れるほどに、この銀色のメカニカルスキンの少女が一目置かれる存在であるということの証でもある。


「大好きな人のところに行けるのはボクたちか、あなた方か、どちらかな!」


 リリアンのその言葉を皮切りに、各々がぶつかりあった。




「ぴーぴーぴー」


「イヴァルナス様、この子、飛べますよ! 注意してください!」


 空では、メカニカルアンドロイドの少女ドライと守護君イヴァルナス、サイリ・カーバライトとギランダラス。




「こいつ、切れないぞ!」


「無駄ですよ。その……目つきの悪い人。はやくやられちゃってください」


 ジルミリア・ノイエンバッハとニノタチイラズ(ぎゅうたろう)と戦うのは幽霊の少女フィーア。



「結構早いじゃないの!」


「お前こそ、いい蹴りしてるぜ!」


 ミーリス・バルツのセブンドア (ティッピー)と互角の素早さで自らの鎌を振るうのはカマキリの少女ツヴァイ。




「君がボク達の相手ってことね。運がなかったね」


「運? 圧倒的な力の前ではそんな不確定要素は問題にもなりません」


 リリアンとナヴィガトリアヴォーヴォリーガ・ヘフガーの前に立つ耳長の少女アインは拳を前に出し戦闘態勢を取った。


 ◆◆◆


 各所で激しい戦闘が行われている。


「ギランダラス、グレイトクロ―!」


 サイリがギランダラスに攻撃指示を出し、彼女を背に乗せた細長い姿の緑色の竜がノータイムで技を繰り出す。

 かつてその存在に怯えていたサイリの影はもうない。


 ――ガギィィッ


 硬いものと硬いものがこすれ合う高い音。

 凄まじい勢いで振り下ろされた巨大な爪を、空を飛ぶ無表情のロボ少女は腕で受け止めたのだ。


 この空の上で戦うものは三者三様な姿をしているが、翼やジェットノズルなどいかにも飛行に必要な部位を持ってはいない。

 それぞれが不思議な力で飛行するタイプであり、それは守護闘士(レニールス)ドライも同じことだった。

 先ほどから器用に空を飛び回り、サイリのギランダラスと演舞かと見まごうような殺陣を繰り広げている。


「ギランダラス! 巻き付き!」


 その硬い装甲に対して斬撃の効果がない事はこれまでの攻撃でも明らかだった。ナノスキン装甲とでもいうべきか、多少斬撃で傷がついてもその部分が剥がれ落ちて下から新たな肌が生まれてくる。


 そのためサイリは攻撃方法を変える。

 斬撃に強くても圧力であればどうなのか、と。


 緑色の長い尾がドライの小さな体を締め上げる。

 ぎぎぎ、ぎぎぎと軋むような音が空気を震わせる。


 果たして効いているのか効いていないのか。判断を下すには情報が少ない。

 ただ致命的に不利な状況ではないのでサイリはそのまま技を続行することにしたのだが――


「サイリ、今すぐ巻き付きを止めて離れなさい!」


 何かを感じ取ったイヴァルナスの一言。


 だが今一歩、忠告が遅かった。


 ――ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉん


 ギランダラスが叫喚し、口から激しい呻き声が漏れる。


「ががーぴーがー」


 しゅるりとギランダラスが巻き付きを(ほど)くと、そこにはハリネズミのようにトゲトゲになったドライの姿があった。

 体内のナノマシンを操作して自らの表皮を金属の棘に変えたのだ。


 痛みで悶えているギランダラスを追撃するため、ドライは自らに生やした大量の棘を撃ち込む。

 まるで降り注ぐ雨のような銀色の針。鋭く光るそれはギランダラスの鱗を容易く貫くだろう。


「やらせませんよ」


 大量の針がサイリへと届く前、イヴァルナスが手に持った剣を振りかざすと、針は空中でピタッと止まり、そしてバラバラと地上へ落ちていった。


 ◆◆◆


 地上では。


「ミーリス、こいつの相手を変わってくれ!」


「何よジルミリア。あんた音を上げてるの? めずらしいわね」


「うるさい! お前だって相性悪いんだろ?」


 ジルミリアの視線の先、手数で押すタイプのセブンドアと、一発一発が致命傷の攻撃を放つツヴァイの姿があった。


「余計なお世話よ。バルツ家の者は敵に背を見せるなんてことはしないわ」


「おーおー、頭硬いな。そんなお前に賢者である俺が知恵をかしてやろう」


「うっさいわね。こいつを倒したらあんたの相手してる幽霊も倒してあげるからしばらく待ってなさいよ」


「へぇ、お前、オレを倒す気でいるんだ。いいね。そう言う獲物を待っていたんだ! そら、やってみろよ、そらそらそら!」


 ニヤリと笑みを浮かべたカマキリの手を持つ少女ツヴァイ。

 一撃必殺の彼女の攻撃がさらにスピードを増し、ミーリスはそれを捌くのに必死になる。


 光り輝くティッピーの脚とその光を受けて鈍く光る緑色の鎌。

 それぞれが交差するごとに雷撃のような火花のような小さな光が発生している。

 

「ミーリス! くそっ、この幽霊やろう!」


 ぎゅうたろうは剣を振るうが、その鋭い一閃は空を切り、霧のように姿を変えたフィーアには全く効果が見えない。


 先ほどからずっとぎゅうたろうは渾身の一撃を叩きつけ続けている。

 そもそも二の太刀は無いのだ。

 無いはずの二の太刀、三の太刀を繰り出しているぎゅうたろうは、肩で息をするほど消耗しきっている。


 ――ぶもぉぉぉぉぉ


 そこを狙って、霧がぎゅうたろうへと憑りついたのだ。

 重さが全くないフィーアのミストボディがぎゅうたろうを締め上げ、ぎゅうたろうはその痛みに喘ぐ。


「お仲間はそろそろ終わりの様ですね。私達も終わりにしましょう」


 四方八方のいくつもの場所から包むように発せられる声はくぐもって聞こえた。

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