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シャドウ・ウルフ討伐

 次の日、昨日に続き寝坊した俺は再び泣くメルに土下座した後、コボルトを探しに森へ向かう。今日は調子がいいのかすぐに見つけることができた。俺とメルは茂みに身を隠しながら、


「メル、一ついいか?」


「? 何ですか?」


「今回は何もせずに見ていてほしいんだけど……」


「何でですか? 二人の方が楽ですよ」


 違うんだよ。何もしてないのに金をもらうのはさすがに気が引けるんだよ。


「頼む! 今回は俺にやらせてくれ!」


「……分かりました。でも危なくなったら援護しますからね」


 メルの心遣いに感謝しつつ、俺は神剣を構えコボルトに突撃する。突っ込んだ勢いをそのままに一匹のコボルトを両断する。それで他のコボルトたちは俺に気づいたのか、叫び声をあげながら襲い掛かってくる。俺は片足を軸に回転しながらコボルトたちを薙ぎ払う。そして片手を残りのコボルトに向け詠唱を……俺魔法使えなかったわ。俺はさりげなく手を下ろしながら最後のコボルトを仕留める。


 ふぅーん。案外楽だった。


 それより自分で言うのもなんだがかなり剣使うの上手い気がする。この世界には剣術を会得するためのスキルみたいのは無く、普段の練習でしか覚えることができないらしい。俺は今まで剣を使ったことは無いのになぜ使えるのだろう。……才能かな!


「ハル……」


「どうした?」


 メルが驚いた表情で近づいてくる。


「……ハルって本当に駆け出しなんですか?」


「うん。変な質問してどしたん?」


「いえ、駆け出しの動きじゃなかったので。昔剣術ならったりしてたんですか?」


 なるほどぉ、やはり才能だったようだ。やべ、にやけてきちゃった。


「いや、ならってないけど。これは才能というやつだよ」


「とりあえず街に戻りましょうか」


「……」


 俺のボケをスルーしてメルが歩き始める。……悲しっ!




   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦




 冒険者になってから二週間。段々と生活にも慣れてきた。俺とメルは毎日討伐系のクエストを受けていたため、戦闘も慣れを感じる。ついこないだもダブルホーンと呼ばれる鹿みたいな魔物(モンスター)を討伐してきた。そしたらエレナに報酬をぼったくられたのでついさっき制裁を与えてきてやったぜ!


「今日はどうしますか?」


 メルがクエストの相談をしてくる。


「そうだな。そろそろ難易度上げてもいいかもな」


 これまでのクエストは安全さを求めて低難易度のものを受けてきた。その分報酬が低かったから毎日働かなければいけなかったのだ。俺は早く大金を得て引き籠もりたい。


「そうですね……あ、これなんてどうですか?」


 そう言ってメルが見せてきた一枚の依頼書。そこにはシャドウ・ウルフ討伐と書かれている。


「何これ?」


「シャドウ・ウルフ。ここら辺ではかなり上位の危険魔物(モンスター)です。シャドウ・ウルフは影になることができてとても俊敏なんですよ。しかもかなりの数で群れをつくるので中級の冒険者でも討伐が難しいです」


 ……ん? いきなり難易度上がりすぎじゃね?


「……これは俺らでも安全なのか?」


「……」


「なんか答えてよ!!」




   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦




 カルグレイスの大森林。俺らがいつも行っていた森はそう呼ばれているらしい。……別にどうでもいいか。俺とメルは今、シャドウ・ウルフ討伐のために森の深部を彷徨っている。


「そうそう、シャドウ・ウルフってどうやって倒すんだ?」


 数が多いのに速くて影にもなれるって手の打ちようがない気がする。


「基本的には魔法で倒します」


 なるほど、確かに難しそうだな。魔法で倒すということはパーティに魔術師(ウィザード)がいることが必須だし魔術師(ウィザード)の負担が大きすぎる。だがその点は俺らは有利かもしれない。メルには言ってないが俺はこの前のクエストでレベルが上がり魔法をいくつか習得することができた。これでいよいよ魔導騎士(マジックウォーリア)しての風格というものが出てきたと思う。


 俺がそんなことを考えていると、数匹の魔物(モンスター)が姿を現す。いや、実際に目に見えているのはこの数匹だが俺らの周りを多くの魔力が囲んでいるのを感じる。


「これがシャドウ・ウルフか」


 真っ黒な毛を生したかなり大きめの狼が眼を赤く光らせながらこちらを威嚇してくる。


「……大体三十匹くらいですかね。どうしますか?」


 どうすると言われても……。俺初見だから分からんし。


「……さっき開けてた場所があっただろ。一旦そこまで走る」


 シャドウ・ウルフは影になれると言っていた。ならこんな薄暗くて狭いところでは不利になるだろう。


「分かりました。では少し目を瞑っていてください」


 俺は言われるがままに目を瞑る。


「『拡散する(ディフュージング)閃光(ライト)』!」


「ギャウンッ!!」


 メルが魔法を唱え……目瞑ってるから分かんない! 


「今です! 速く走ってください!!」


 メルの声とともに走り始める。シャドウ・ウルフたちは今の魔法で目をやられたのか首を振りながらもたついて……前言撤回。追ってきた。てか速! 俺らの倍くらいのスピードで追ってくるんですけど!


「もう少しだ! 急げ!」


 大体一〇〇mくらい先に開けた場所が見えてくる。あそこまで行ければ戦いやすくなるだろう。


「ウォーーン!!」


 一匹のシャドウ・ウルフが遠吠えを上げるとほかのシャドウ・ウルフたちの体が一斉に影に沈み込む。シャドウ・ウルフたちは地面だけでなく木々の側面の影の中をも移動しながら追ってくる。


 ……やばいな。


 影になったことで視覚では何処にいるのかがよく分からない。しかも心なしかさっきより速くなった気がする。魔力で感知していかないと―—


 そう思った刹那、一匹のシャドウ・ウルフが木々の方から飛び掛かってくる。


「うお、危ねえ!」


 俺はそれを間一髪のところでかわす。しかしシャドウ・ウルフたちは追い打ちをかけるかのように止まることなく追いかけてくる。


「――チッ!」


 俺は神剣を近づいてくる影に突き刺す。すると、影から血が噴き出し動きを止める。……おや、案外これでも倒せるな。俺はその調子でもう数匹のシャドウ・ウルフを仕留めると、遂に目的地にたどり着く。


「……よし、これでまともに戦えるな」


 ここら辺は影がないからたとえ影になられたとしても目で追える。なら魔法でも武器でも攻撃を当てやすくなるだろう。


「ハル、私が魔法で攻撃するのでそこから離れてください」


「メルが襲われたら意味ないだろ。俺が壁役をやるから後ろから攻撃してくれ」


 自分から壁役をやるとかガラでもないが生き延びるにはこれが最善策だろう。


 そうこう言ってるうちにシャドウ・ウルフたちが俺らに向かって走ってくる。


「ハルッ!!」


「『灼熱(バーニング)(・オブ・)業火(ヴァーミリオン)』!!」


 シャドウ・ウルフたちに向けた手に魔法陣が浮かび、炎が噴き出す。噴き出した炎は瞬く間にシャドウ・ウルフたちを飲み込み、体を灰にする。


「おお! いつの間に魔法覚えたんですか!?」


「これが俺の実力だよメル君!」


 魔法ってすげぇ!! 初めて使ったけどすごい便利なんだな。


 灰にされた仲間たちを見て残りのシャドウ・ウルフたちが怯え始める。


「『沈みゆく大地』!」


 メルが魔法を唱え、シャドウ・ウルフが地面に沈んでいく。


 ……エグいな。


 だがそんなこと言ってる場合じゃない。俺とメルの魔法によってかなりの数を減らすことができた。残りは一〇匹くらい。これならいけるぞ!


「メル、もう少しだ! 残りもさっきみたいに魔法で―—」


 そう言った刹那、辺り一帯に影が差し、奥の森に超巨大な魔物(モンスター)が空から落ちてくる。その衝撃で地面にヒビが入り、残っていたほとんどのシャドウ・ウルフが割れ目に落ちていく。そして超巨大魔物(モンスター)は残りのシャドウ・ウルフを一瞬で飲み込み、


「グアアアアァァァァァァッッッ!!!」


 狩りの始まりを告げるかのように咆哮を上げるのであった……!!

 

 


 





 








 

この物語を読んで頂き、ありがとうございます。

あらすじ通り、この物語は異世界での戦闘もありますが、ギャグ要素もあります。(そのつもりです。)

ですので、気軽に楽しんで読んで頂き、少しでも「クスッ」と笑って頂けたら幸いです。

上手く書けずに至らないところもありますが、一生懸命書きますので、連載終了までお読みいただけたら嬉しいです。

最後にもう一度、読んでくれた皆様に深く感謝を。

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