パーティ結成
ギルド登録を終え席に着こうと歩いていると、
「よぉ」
三人組の冒険者に声を掛けられる。
「どうやら無事に冒険者になれたみたいだな」
「おめでとう!」
「同じ冒険者として仲良くしようぜ」
三人がそれぞれ祝福の言葉を掛けてくれる。俺は彼らに向かい、
「誰だお前ら?」
「「「「!!?」」」」
俺の発言に三人組とメルはおろか、周りの冒険者も驚きの表情を見せる。
「どういうことだ?」
「今回もあれやったんだろ?」
「いや、嘘をついて私たちを試しているのかもしれないわ」
「なるほど、一理あるな」
周りから見ている冒険者たちが小声で話している中、目の前の三人組は、
「な、なに言ってんだよ!?」
「うちらさっき会ったばかりでしょ!?」
「俺らを騙そうとしても無駄だぞ!?」
……マジで分からないんだが。
なおも思い出すことができない俺にメルも慌てた表情で聞いてくる。
「ほ、本当に憶えてないんですか!? ほら、冒険者ギルドに来るときに話しかけてきた人たちですよ!? ハルが殴って気絶させた!!」
……あー思い出した! 恐喝してきたチンピラね!
「はいはいはい思い出しましたよ」
「思い出した! はぁーよかったやっとかよぉ」
ようやく思い出した俺にチンピラは安堵の表情を見せる。
「俺はロイル。で、こっちが――」
「ジャグだ」
「シーナだよ。よろしくね」
「俺はナル……」
いや待つんだ俺。こいつらはガラの悪いチンピラだ。本名を名乗るのはまずい気がする。
「……ナルメクトだよろしくな!」
「何で偽名名乗るんですか?」
「……ナルカミハルヤです」
身の安全のために偽名名乗ったんだけどなぁ。まぁしゃーないな。
「ハルヤかよろしくな!」
そう言いながらロイトが笑顔を見せる。てか恐喝してきたくせに意外と優しい感じだな。めっちゃ笑ってるし。
「そういや何でカツアゲなんかしてんだよ? そんなに金に困ってんのか?」
「いや、あれは俺ら流の歓迎の儀式だぜ!」
うわっ、なにそれ紛らわし!
ロイブたち三人に加え、他の冒険者もドヤ顔をしてくる。うぜぇ。
「それやめた方がいいと思うぞ。知らない人からしたらただ脅されているようにしか感じないし最悪法律ひっかかって捕まんじゃないのか?」
「「「……」」」
俺の発言にゴイルたちが困惑の表情を見せる。
「マジかよ俺ら捕まんのか!?」
「冗談じゃないぞ!」
「やだー! 捕まりたくないー!!」
「おい、もうあれ見られないのか?」
「そしたらこの街の名物が減っちまうぞ」
「また新しいの考えなくちゃか……」
「なんか寂しいわね」
ダイルたちが喚き、周りの冒険者たちが落ち込みつつもこれからについて議論をし始める。
「……まぁこれから気をつければいいんじゃない?」
「……うん」
「そんなに落ち込むなよ。せっかくだし話でもしようぜ。バイム、ダグ、ラーザ」
「うん、そうだな。一緒に飯でも食……誰それ? 俺らか? 俺らのことか!? 名前間違ってるぞ!!」
♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦
ジャイルたちと雑談したと思ったらギルド内で宴会が始まってから数時間後、
「ようメル、楽しんでるか?」
「楽しんでますよ。そういうハルも楽しそうですね」
「まぁ、楽しいっちゃ楽しいけど人と話すの苦手だから精神的疲労が凄いんだよね」
違う席に座っていたメルに話しかける。
「そういやメルってパーティに入ったりしてるのか?」
「いえ、ソロですよ。急にどうしたんですか?」
「いや、さっきポウルに冒険者はパーティを組んでクエストに挑むって聞いてな。よかったら一緒にパーティ組んでほしいなと」
「ほほほ本当ですか!? は、はい! よろしくお願いします!!」
おぉぅ……。
「パーティ……」
メルが笑顔で呟き始める。……まぁ喜んでるようだしいいか。それはそうと俺がパーティを組もうと言い始めたのには理由がある。そう、俺は食費を稼がないといけないのだ。なんか宿は使えるけど食事は出ないって言われた。そうなると必然的にクエストを受けることになるんだが報酬がいいのは討伐系のクエストらしい。そして討伐はパーティを組むのが常識らしい。もちろんソロで受けることもできるが万が一のとき助け合えるからだって。
「まぁそういうことでこれからよろしくな!」
「はい! それでクエストはいつ受けるんですか?」
「そうだな……できれば明日にでも行きたいんだが大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。では明日の一〇時ここに集合で」
「おう」
こうして俺は異世界で初めての仲間を手に入れ、食費のために魔物に立ち向かおうとするのであった。
この物語を読んで頂き、ありがとうございます。
あらすじ通り、この物語は異世界での戦闘もありますが、ギャグ要素もあります。(そのつもりです。)
ですので、気軽に楽しんで読んで頂き、少しでも「クスッ」と笑って頂けたら幸いです。
上手く書けずに至らないところもありますが、一生懸命書きますので、連載終了までお読みいただけたら嬉しいです。
最後にもう一度、読んでくれた皆様に深く感謝を。