異世界に来てしまった(後編)
「……マジかよ……」
俺はその場に呆然と立ち尽くしていた。
どうやら俺は異世界に来てしまったらしい。
これは現実なのだろうか? できることなら夢であってほしい。今すぐに目を覚まして、「これは夢でした。ちゃんと日本にいます」と言ってもらいたい。
そう思って、自分の頬をつねる。
「……痛い」
どうやらこれは夢ではないらしい。
俺は本当に異世界に来てしまったようだ。
まさか本当に来れてしまうなんて――
「おっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
超最高じゃん!!
「えっっ!?うそマジ!!?マジで異世界に来たの!!!?やったーーー!!夢が叶った!!超嬉しい!!今日から念願の異世界生活が始まるんだーー!!!ひゃっほーーーーぃ!!!」
俺はあまりの喜びから騒ぎながら走り回った。
だって異世界だよ? マジで異世界に来たんだよ? そりゃー嬉しくなって騒ぐのも当然だよ!
何故夢であってほしかったのか。そんなの決まってんじゃん。異世界に来るなんて規格外の夢叶ったら一生分の運を使い果たして死んじゃうよ?
普通なら”誰が俺をこの世界に召喚したのか?” ”目的は何なのか?”と考えるものなのだろうが、今の俺にはそんなことどうでもよかった。
ただただ異世界に来れたことを喜びたい。俺はその一心で走り続けた。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦
十分ほど走り続けた後だろうか。今まで引き籠もっていた影響でもう体力が限界に近い。
「ハァッ……もうっ……ゼェッハァッ……無理っ……!」
体力の限界を感じ止まろうと思ったとき、足が何かに引っ掛かり、思いっきり転んだ。受け身が取れずに顔面を地面に強打したため痛い。
「ゼェ……ハァ……なんだよ……」
疲労困憊の中、自分の足元を見る。酸欠状態だからか視界が霞んでおり、よく見えない。
「……えっ……?」
目の前には死体が転がっていた。
全身が燃えたのか、肌が焼け爛れており、焦げ臭い匂いがする。また、胴は真っ二つに切断されており、内臓のようなものが辺りに散らばっていて、少し離れたところに死体の片腕が落ちている。
「―—ひぃっ!」
反射的に後ずさると、”どんっ!”と背中に何かがぶつかった。
後ろを向くとそこには、無数の死体が辺りに転がっていた。細かくは見えないが、四肢や胴が切られているものや全身が焼け焦げているものなどがあり、自分の足元の近くまで血の海が広がっていた。
「うっ!おぅうぇっ!!」
ひどい匂いとグロテスクな光景から、思わず嘔吐する。
ここで何があったのか? この死体は何なのか? いろいろな疑問が浮かぶが突然の出来事過ぎて思考がうまく定まらない。
「ハァ……ハァ……」
少し間を置き、呼吸を整える。
ほんの十数分前までは異世界に来て喜んでいたのに、今では目の前の惨状だけが頭の中を埋め尽くしている。
こんなものを見てしまっては、もう異世界の暮らしなんてしたくない。一刻も早く家に帰りたい。
そんなことを思いながら現実逃避していると、遠くから声のようなものが聞こえてくる。いや、おそらくは目の前のことで頭がいっぱいで声に気が回らなかったのだろう。
この声の主は何をしに来たのだろう? 死体を回収しにきたのか? 誰かを殺しに来たのか?
そんな事どうでもいい。ただここから早く離れたい。そんな思いで声のほうに力なく歩き出す。
歩くにつれ、段々と声がはっきりと聞こえてくる。
「……泣き声か?」
どうやら聞こえていた声は泣き声だったようだ。まぁ、だから何だという話だが。
歩き始めて五分ほどたった頃、ようやく声の主が見えてきた。
声の主は女性だった。
背丈は俺より少し低いくらいだろうか。暗くて顔はよく見えないが、泣きながら何かを抱きかかえているようだ。
女性はこちらには目もくれずにただただ泣き続けている。
その姿があまりにも不憫で。
泣き声だとわかっても助ける気など湧かなかったのに俺は、この女性を励ましてやりたいと思った。
「あの―—」
そんな思いで女性に声をかけた時、突如右脚に激痛が走った!
「―—ッ!!」
反射的に痛みのする方を見ると、右脚に穴が貫通しており、血が勢いよく流れだしている。
突然のことに思考が停止する。
一瞬の停止の後、今まで感じたことのない程の激痛がすべての感覚を支配する。
「痛い痛いイタイイダイイ゛タ゛イ゛!!」
あまりの痛みに何も考えられない。
俺が必死に痛みに耐えていると、空に一筋の光が走った!
次の瞬間、世界が白い光に包まれる。今まで見えていたもの全てが消え、真っ白な景色と静寂だけが世界を支配する。
「ナニナニナニナニナニ!!?」
再びの突然のことに焦る。てか何もかもが突然だから疲れる。そろそろ勘弁してほしい。
光が満ちてから脚の痛みが引いたのでいやでもそんなことを思ってしまう。まぁ、未だに血は流れ続けているが。
それよりもいったい何が起きたのだろう。光に満ちたのも脚を怪我したのも突然すぎてよくわからない。それにあの女性もどうなったか気になる。
「あ、やべ。意識飛びそ」
どうやら血の出すぎで意識が飛びかけているようだ。
だがここで意識を手放すわけにはいかない。せめて……せめてあの女性がどうなったかだけでも知りたい。
その一心で消えゆく意識に抗う……が、
「……やっぱ無理」
やはり消えゆく意識には抗い続けられないようだ。
心残りも多々あるが仕方ない。今後知る機会があるのを祈るしかないな。
そんなことを考えながら俺は、意識を手放した……。
この物語を読んで頂き、ありがとうございます。
あらすじ通り、この物語は異世界での戦闘もありますが、ギャグ要素もあります。(そのつもりです。)
ですので、気軽に楽しんで読んで頂き、少しでも「クスッ」と笑って頂けたら幸いです。
上手く書けずに至らないところもありますが、一生懸命書きますので、連載終了までお読みいただけたら嬉しいです。
最後にもう一度、読んでくれた皆様に深く感謝を。