異世界に来てしまった(前編)
夢を見ていた。
いや、これは夢なのだろうか。
……分からない……。
そもそも何故夢だと思ったのか?
おそらく自分はこれを現実ではなく、”夢”、つまりは自分の空想であってほしいという願望からそう思ったのだろう。
だって、信じられるわけがない。
気が付いたら自分が――知らない世界にいるなんて―—
♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「ここどこだ?」
目を覚ました時、俺は知らない場所にいた。
時刻は真夜中だろうか? 空が曇っているのもあって辺りは全くと言っていいほど見えない。さらに音も聞こえず、不気味なほどに静まり返っている。
そもそも何故俺はこんなところにいるのだろう?
考えてみても全く身に覚えがない。
「しゃーない。とりあえずここから移動するか」
こんなところにいても何も変わらないだろう。
俺はそう思い、歩き出した。
自分の身に何が起きたのか? いったいここはどこなのか?
俺は移動している最中、考えを巡らせていた。
正直自分が今まで何をしていたのかなんて覚えていない。
というわけで推理してみる。
……もしかしたら、俺は誘拐されてしまったのかもしれない。そう、誘拐されるときに何らかの方法で意識を失い、その影響で記憶を失ってしまったのだ。
……うん、ありえる……!!
この仮定でいけば、俺が知らない場所にいるのも合点がいく。
……いや待てよ、もし誘拐されたとしたら何故誘拐犯はいなかったのだ? 誘拐されたのにその実行犯がいないのはおかしい。
……俺に用が無くなったのか?
俺がいた場所の近くに建物は無かった。それはつまり、誘拐犯は俺に用が無くなり、適当な場所に放置したのではないだろうか?
確たる証拠は無いが、なんとなくそんな気がする。
もう考えるのめんどいし、この推理が真実ってことでいいや。
そう結論づけたとき、俺はふと、空を見上げた。
いつの間にか空を覆っていた雲は消えており、無数の星々が輝いてい――
「……あれ?」
そのとき俺は気づいてしまった。
―—月が二つあることに―—
俺は目を疑った。
月が二つあるなんてありえない。
もし月が二つあるとすればそれは俺のいた世界じゃないわけで……。
……俺はこれまでの人生でこの時ほど夢であってほしいと思ったことはないだろう。
こんな現実を信じられるわけがない。自分が――
≪異世界にいるなんて≫
この物語を読んで頂き、ありがとうございます。
あらすじ通り、この物語は異世界での戦闘もありますが、ギャグ要素もあります。(そのつもりです。)
ですので、気軽に楽しんで読んで頂き、少しでも「クスッ」と笑って頂けたら幸いです。
上手く書けずに至らないところもありますが、一生懸命書きますので、連載終了までお読みいただけたら嬉しいです。
最後にもう一度、読んでくれた皆様に深く感謝を。