星をみるひと
「これでよし、と。新しい観測機は便利になったものだ」
ドーム型をした観測機を開き、望遠鏡の角度を調節し終えた死神は息をつく。
展望台を振り返り、壁際に設けられた石碑に微苦笑する。
「昨日も挨拶をしたばかりだが……やあ、アリアス。今日から観測を始められそうだ。何年ぶりになるのかな、ここでの観測は」
支配種が"弔う"という死神の文化に理解を示し、アリアスを故郷に葬ることを許可してくれたのは、死神にとって意外だった。
支配種の知性は極めて高い。ただ単に、真社会性動物としての役目に傾倒しているだけだ。
「ここまで状況を持ち直すのは大変だったよ。それこそ、ただ好きなだけではやってられないくらいにね」
群れと敵対する理由を失った死神は、群れに対しリソースを補填・供給することで和解した。あまりにあっさりと。
外部から資源を入手する機会に乏しい彗星としても、流浪の民は貴重な輸入媒体なのだろう。
ずいぶん、足元を見られてしまったが。
友好的な関係とは言い難い。
しかし、険悪というわけではない。
それは以前と同じ、どこまでも純粋な利害関係だった。アリアスという特異点が現れる前の。
死神は一人、観測を続ける。
ふと、顔を逸らした。彗星のとても近い地平線から、兵役種の幼体が顔を出している。
軽く手を挙げてみせる。
「こんにちは」
幼体はびっくりした音を背中から漏らしながら、大慌てで逃げて行った。その怯えっぷりを懐かしむように死神は笑う。
「やはり、私の近くにはどの個体も近寄らないな。そもそも興味という概念に自覚がないように思う。きみだけだ、特別だったのは」
死神は星空を見上げる。
暗闇がどこまでも広がり、点々と光の瞬く世界。
「きみのいない星空は、まるで何も変わらないみたいに美しい。けれど、驚くくらい虚ろだ。……私は今まで気づかなかったよ」
星海盤を撫でる。手甲を嵌めたままの武骨な腕で、優しく。
「この空隙を、星の美しさで埋めよう。きみと夢見た星海盤は、星の美しさで満たされたものにしよう。ひとつでも多く、わずかでも見落とさず、全ての星を収めよう」
手のひらに載せて、そっと、星空に掲げる。
「できあがった星海盤は、きっと綺麗なことだろう」
エイリアン×プレデターの純愛。
夢でこの言葉が出てきました。「言葉」がそのまま出てきたんです。珍しいですね。
もちろん、起きてすぐに絵面を想像して一人で爆笑してました。
それがこの結果です。
宇宙だけどSFしてません。純愛だけどクリーチャーです。
ジャンルすごい困りました。
(17/5/28追記 SFジャンルに変更しました)
そんな感じの作品です。
読了、本当にありがとうございました。
それでは、また相見えることを願って。




