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魔王城七不思議1 深夜の準備

「さぁ! 七不思議捕まえにいくよ! ソーちゃん」


 真夜中の魔王城、魔王ソロティス私室にて課題が終わったソロティスがベッドに入ろうとしたところでベッド城に転移魔法陣が展開。

 魔法陣からは元気いっぱいの桜が現れくるくると回転しながら落下。着地点であるベッドを叩き壊した。


「僕は眠いんだよ桜。だから寝かしてよ」


 しかし、さすがは魔王城のベッド。叩き潰されたにもかかわらずベッドが元に戻り始めていた。

 そんな叩き壊した全く罪悪感など感じさせることなく今日はパジャマではなくいつも着ているひらひらとした巫女服の桜はベッドから飛び降りると背負っていたリュックサックを機嫌よく床に下ろしていた。


「なにこれ?」

「ふふーん、七不思議を捕まえるための道具だよ」


 ドヤ顔である。何故か桜には七不思議を捕まえるという根拠のない自信があるようだった。


「七不思議って捕まえれるものなの?」


 しかし、怖いものが苦手なソロティスとしては明らかに行きたくないイベント事である。自分から厄介ごとに突っ込んで行く気はさらさらないのである。


「ちっちっち、ソーちゃん甘いよ。魔王城で起こる出来事なんだから必ずモンスターとか悪魔とかが関係してるんだよ」


 指を立て左右に振りながら桜は言う。


「それはそうだけど」

「だからこれだよ」


 リュックサックから次々に桜曰く捕獲用の道具がお披露目されていくがその捕獲道具が床に置かれるたびにソロティスは頭に疑問符を浮かべ始めていた。

 ソロティスは近づきウキウキとしながら道具を出す桜の横にしゃがみ込んだ。


「これ、なにに使うの?」

「七不思議捕まえるようだよ?」


 ソロティスが手に取ったのはおそらくは人間では断ち切れないであろう太さをした鎖であった。


「これは?」


 次に手に取ったものはラベルの貼られていないスプレー缶である。振ってみると中身は入っているようだった。他にもなぜかスキンケア用品がかなりの数入っていた。


「虫刺されが怖いから持ってきた」

「なんで虫刺され……」

「乙女には必要」

「そ、そうなんだ」


 ソロティスにはよくわからないが必要なのならば仕方がないと尋ねるのをあきらめた。

 次に目に付いたのはお札である。


「これは霊系の奴らに使うの?」

「うん、わたし魔法苦手だし」


 桜の攻撃手段は基本的に尻尾による物理攻撃である。一応魔法も使えることは使えるのだがかなり弱い。そのため魔力で強化された尻尾こそが彼女の最強の武器なのだ。


「ふーん」


 お札は特殊なインク(悪魔の血など)で書かれた魔法陣に魔力を流し魔法を発動させるものである。

 しかし、ソロティスはそのお札を見てなんとも言えない表情を浮かべる。


(書いてる字間違えてし)


 桜の持ってきたお札は明らかに桜の手作りぽいものであり魔法陣は途中で途切れていたり書いてある文字が間違っていたりと明らかに使い物にならないようなものである。

 挙句に書くのに使ったものがどうやら特殊なインクではなくクレヨンで書かれているのだ。

 しかし、そこはさすが六死天グリメモワールと言えるだろう。そんな普通なら明らかに使い物にならないようなお札ではあるが桜の桁違いな魔力が無理やり魔法陣に干渉、とりあえずは発動することはできるという状態になっているのだ。


(でもこれ、発動してもなにがでるかわからないよ……)


 言わば自爆用の物に等しくなったお札をとりあえずソロティスはそっと置く。

 隣では嬉しそうにしながら桜がお披露目した道具を再びリュックサックにしまっていた。


「それに今回は頼もしい助っ人を呼んだんだ」

「助っ人?」


 助っ人という言葉にソロティスは首を傾げた。こんな酔狂なことに手を貸してくれる人物に心当たりが全くと言っていいほど思い当たらなかったからだ。


「誰呼んだの?」


 人によっては口止めをしなくてはと思いながらソロティスは尋ねた。


「んーとね」


 桜はくるりと後ろを向くと自分の()に向かい両腕を突っ込み何かを掬い上げた。


「この仔!」


 再びソロティスの方へと振り返った桜の手の中には小さな真っ黒な毛並みをした仔犬が収まっていた。


「犬?」

「パウ!」


 ソロティスの発した言葉に真っ黒な仔犬が抗議するように声をかけあげる。


「違うよ、ソーちゃん。この仔はわたしのペットの黒狼の子供、佐藤だよ」

「黒狼の子供⁉︎ というか佐藤って……」


 黒狼の子供と聞きソロティスは驚きの声をあげ、次に名前に対してすかさずツッコミを入れた。黒狼とは名前のとおり黒い狼のことであるが魔界では絶滅危惧種に指定されている生き物なのだ。


「ほ、ホンモノ?」

「本物本物」


 抱えていた黒狼の子供、佐藤を床に降ろした。佐藤は特に動き回ることなく桜の横にチョコンと座り待機していた。瞳には確かに知性の色が見えていた。


「この仔にも手伝ってもらうからすぐに捕まえられるよ」

「パウ!」


 任せろと言わんばかりに佐藤が一鳴きし桜は満足そうな笑みを浮かべている。

 つまりは桜はかなり準備万端なわけだっあた。

 ソロティスてしては黒狼とはいえ狼なわけで何に役立つのか疑問に思っていた。


「まぁ、捕まえるのはいいんだけど僕七不思議全部知らないよ?」

「そこは抜かりないよソーちゃん」


 桜が一冊の本を取り出しソロティスに渡す。ソロティスが受け取りパラパラとページを捲っていた。

 ページの内容はというと、


 魔王城の実態!

 深夜にうごめく陰謀の闇!

 魔王城七不思議の実態とは?

 MKMによる魔王ソロティスのプライベート写真!(袋とじ)


 といったラインナップだった。


「いや、最後の僕のやつ盗撮されてたの⁉︎」


 七不思議とかよりも自分にプライベートが全くない事に対してソロティスは愕然としながらその雑誌の表をみるとでかでかとしたフォントで『月間魔王!』と書かれていた。しかも作者はマリアベルジュとコルデリアの二人だった。無駄にスキルが高いためやたらと凝っている雑誌であった。


「ゴシップ雑誌じゃん!」


 叫び手にしていた雑誌を床に叩きつけた。

 なんとなくマリアベルジュがやってるだろうなぁとは内心気づいていたがコルデリアが関わっている事がかなりの驚きだった。


「ソーちゃん! ちゃんと読んでよ!」

「袋綴じ部分を開けて自分の写真をちゃんと見ろと⁉︎」


 雑誌を叩きつけた事に対して桜がキレた。まるでソロティスがまるでに悪いかのように。

 渋々といった様子でソロティスが雑誌を拾い上げ指に魔力を集め切れ味を上げると袋綴じを切る。とてつもなく魔力を無駄遣いしている気がするソロティスであった。


「なにしてるの?」

「桜か見ろって言ったんじゃないか」



 きょとんとした瞳をソロティスに向けながら桜が尋ねてきたためソロティスは少しムッとしながらも答えた。

 すると桜は目にわかるほどの大きなため息をついた。


「ソーちゃん、ソーちゃんがなるしすとなのは初めて知ったけどね。わたしたち今から七不思議捕まえに行くんだからソーちゃんの写真見ても捕まえられないんだよ? 七不思議のとこ見ないと」


 呆れるように桜は告げた。

 何故か小柄な自分よりさらに小さい桜にやれやれと言わんばかりの仕草をされてソロティスは少し傷ついた。


「大体ソーちゃんなんていつでも見れるでしょ?」

「そうだね。でもよく考えて桜、僕一応魔王だからね? ゲームで言うところのラスボスだからね?」


 桜はソロティスの言い分を無視。

 ソロティスから本を取り上げるとパラパラとページをめくり七不思議特集のページを広げ見せつける。


「ここ! ここ!」

「どこ」


 桜が指差しているのは七不思議とでかでかと書かれている下の項目だった。


「悲鳴を上げるピアノ? いつの間にか五百段増える階段? 深夜に響く裁断機って七つどころじゃなくない?」


 細かく分類されているが明らかに七つ以上の項目が書かれていた。

 その項目を見ていたがゆうに百は超えている。


「……もしかして全部探すの?」

「さすがに全部は無理」

「パウ」


 桜が残念そうな表情を浮かべると何故か佐藤も横で悲しんでいるかのように声を出した。

 対してソロティスはホッとしたような顔をしていた。もし桜が「全部探す!」といった場合、ソロティスでは止める事なく引き摺り回され徹夜決定になるところだったからだ。


(なにより桜の機嫌が悪くなるのも怖いし、授業中に居眠りなんてしたらマリアに死の一歩手前までいかされてしまう!)


 怒った時のマリアベルジュは怖い。笑顔で怒るからなおのこと怖いんのだ。

 彼女の笑顔で放たれる拳が以前攻めてきた天界の軍を叩き潰した光景はソロティスのトラウマである。


「じゃ、ソーちゃん行くよ!」

「ちょ! ちょっとまって! 服! せめてマントを取らして!」


 抗議の声を上げるソロティスであったが桜に腕を掴まれ、さらには反対の腕を佐藤に軽く噛まれ身動きを封じれる。必死に拘束をとこうとするがただでさえ力のないソロティスが降り解けるはずもなく、最弱の魔王は安眠とは程遠いであろう七不思議捕獲へと付き合わされていくのであった。

魔王城なんだから不思議現象なんてデフォのはず

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