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貴方様の為だけに生きていたいから  作者: りょー
第1章 出逢いと日常と
2/7

くるりくるりと輪廻はまわり




久留里涼風が入学した白妖学園は、少し…いや、かなり特殊な学園だった。




白妖学園は黒妖学園の兄弟校で、さほど黒妖学園と変わらない。学園には妖、守り人、人が在校しているし、在校生の約9割が、かの有名企業の御曹司やら警視総監の令嬢やらで、ようするに金持ちの子供である。




ならば、何が違うのか……。

それは…女子生徒の大半が人であり、男子生徒の大半が妖なのである。そして女子生徒は世界には人ではないモノが存在することを知っている。




その理由は、男子生徒、つまり妖が将来の結婚相手、つまり花嫁を探すためである。この学園に在校する女子生徒は、すべて妖を妖のまま出産する事ができる『華女』なのである。混血が多くなる中、華女は純血種にはもってこいの存在。華女は世界に約3割存在するという。




その華女は学園に強制入学させられた者もいるし、自ら志願した者もいる。




言わずと分かると思うが、涼風は華女だ。そして艶のある黒い長髪、大きな瞳、白い肌、ふっくらとした唇、前世で男を虜にしたその美しさは、今世でも変わらなかった。




現に入学式の時、涼風を舐めるような視線で見ている妖は数多く存在したし、涼風は鈍感ではないので気付くに決まっていた。




そんな中、入学式で「いやっ!離して!!」と言う女子生徒、無駄に顔面偏差値が高い生徒会、まるでアイドルのコンサートのような雰囲気の体育館、…そう、まるで少女漫画のような光景





だが、涼風が気になった事は、それよりも別だった。それは、理事長の隣にいた男の事だ。





その男の名は「紅海 優」かの有名な吸血鬼の一族、紅神一族の長男だ。それだけなら女子生徒は彼に群がり、自らをアピールするであろう。





だが、問題は彼の容姿だった。皮膚は爛れ、目は濁り、包帯を巻いて隠しているようだが、その醜さは隠し通せていなかった。





何より紅神一族の長男でありながら、一族の長になれないと知った時、女子生徒は侮蔑の視線を彼に浴びせた。









入学式の途中 突如、理事長が壇上に上がり、マイクを使わず、まるで叫ぶように話す。






「私の隣にいた紅海 優の付き人を探している。我こそ付き人に相応しいと思う者は、手をあげて欲しい。」





新入生はざわつき、在校生は「またか」という顔をした。どうやらこれは毎年行われているらしい。生徒会は呆れた表情で理事長を見ていた。風紀委員会も同じ顔をして理事長を見る。「もういいだろう」と「どうせいない」と……







だが、見えたのは真っ直ぐと伸ばされた手






「…はい」






か細い、けれども凛とした声が辺りに広がった。あげたのは、涼風だった。






一斉にざわついた体育館。理事長は面白そうな顔をし、他は皆困惑の表情で涼風を見た。だが涼風はそんなものに目もくれず席を立ち、紅海 優のもとに歩く。





紅海 優も目を見開き、困惑の表情をしていた。それを見て涼風は、自分の事を覚えていない事を悟った。だが、そんな事、涼風には関係なかった。






涼風は正座をし紅海 優の手を掴み、優を見上げた。






「うちは、久留里 涼風と申します。うちのような卑しい女が、貴方様の付き人になるのは大変おこがましい事ですが、うちを…、貴方様の付き人にしてくれませんか?」





涼風は紅海 優の手を握った。そして昔の彼を思い出した。昔の彼も醜く、目が濁り、片腕が潰れていた。だから、いつももう片方の手を握り、指を絡ませ、一夜の過ちと思いながらも何度も何度も愛瀬を重ねた。






ゴクリという喉音が聞こえる。紅海 優の手は震え、その震えを抑える為に、涼風はもう片方の手を重ねた。








「…よ、ろしく頼む」








涼風は、嬉しそうに笑った。









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