暇つぶし
初投稿です。よろしくお願いします。
ここに、蓮沼ケイトという名の美少女がいる。そう、只の少女ではなく美少女なのだ。
ケイトは17才、高校二年生である。家族構成は父、母、姉の四人暮らしだ。そして今は病院のベットにいる。学校の帰り道に交通事故にあったのだ。
「心配したけど、かすり傷程度でよかったわ」
ケイトの母が事故の連絡を受けて飛んできた。
「お母さん、ごめんなさい…」
ケイトはつい謝ってしまった。
「ケイトが悪いわけじゃないわ。明日退院だから今夜はゆっくり休みなさい」
そう言うと、母は明日迎えに来る事などを言って自宅へ帰って行った。
母が帰り病室で一人になったケイトは、ベットの上で考え事をしていた。何か今の自分は違和感があるのだ。その違和感の正体が掴めずモヤモヤする。いくら考えても分からず、ケイトは早めに寝ることにした。
翌日、無事退院したケイトは一日ぶりの我が家へ帰ってきた。自分の部屋に行くと、何か違和感があるような気がする。自分の部屋なのに初めて見る気がしたのだ。首を傾げつつ部屋を見回してみるが、やはり自分の部屋だと認識した。
(明日からは学校に行くから、準備でもしとこうかな?)
事故の後遺症はなく腕と足にかすり傷ができただけなので、勿論学校に行くつもりである。
その日の夜、家族皆でささやかなケイトの退院祝いをした。ケイトは家族に心配させたことを謝り、そして大事にならなかったことを喜んだ。
翌朝、登校するとクラスメイト達がケイトの元によって来る。
「ケイト〜、大丈夫だった?」「大きな事故じゃなくて良かったな」
などと口々に声をかけてくれた。
「怪我は大したことはないよ。みんな心配してくれてありがとう」
ケイトがそう言って微笑むと、皆がその笑顔に見惚れていた。
普段見慣れてるはずのクラスメイトでさえコレである。如何にケイトが美しいか分かるだろう。ケイトはそんなことに気づかずに、クラス担任を待ちながら授業の予習をしていた。
事故から数日が経過した。
ケイトはその間、違和感が日に日に増して行くのを感じていた。それにともない、自分の行動にも変化が出てきた。ケイトは頭では女とわかっているのに、足を開いて座ったり、男子トイレに入ろうとしたりと男のような行動をしてしまうのだ。無意識なので自分では気づきにくい。
「可愛い顔でそんなことしないで」
友人に言われて行動に注意していたが無理があった。
無理があるのは、当たり前である。ケイトは事故の前まで、男だったのだ。
蓮沼圭人、17才。美少女顏の男子高生である。圭人はこの顔にコンプレックスを抱いている。
ー可愛い顔でそんなことしないでー
その一言で、自分が男であったことを思い出した。常に言われ続けていた言葉だったからだ。いつも女性に間違えられていたので、気持ちと行動で男らしく見せていたのだ。しかし、周りの人間には違和感しかなかった。
自分が男だったと理解してからは、何故女になったか悩んでいた。が、簡単に解決してしまった。
『ようこそ』
手を広げて歓迎するようなポーズで圭人をでむかえた人物がいた。
「あんた、誰?俺か?ってか、ここどこだよ…」
『誰って、君を女に変えたものだよ。それに、ここは君の夢の中。ちょっとおじゃましただけだよ』
「夢…?だったら、目が覚めたら忘れてたって事は?」
圭人は思ったことを口にする。目の前の人物は爽やかに笑いながら、首を横に振った。
『大丈夫だよ、今話していることは忘れない様にする。でないと、君の夢に来た意味がないしね。では、ここで本題に入ろうか?』
「ちょっと、あんたの説明がまだ済んでないけど!」
叫びながら、圭人は目の前の人物を睨みつけた。
『今この姿が気にいらない?君と瓜二つなんだけどね。』
「それが、一番気に入らないんだよ!」
圭人は、更にきつく睨みつける。美少女の様な自分の姿が、一番のコンプレックスだからだ。睨みつけられた謎の人物は、コホンと態と咳払いをしながら説明をし始めた。
『それは置いといて、君が女性になったのはそっちの方が、君にも周りの人にも都合が良いからだよ。』
圭人は口を開きかけたが、謎の人物が軽く手を上げる様な仕草をして話を聞く様に制されてしまった。
『君は、その美少女の様な姿で今迄苦労してきただろう?それはそれで面白いけど、でも周囲への影響が強すぎたんだ。女性は、君という完成型がいるからハードルが高過ぎて自己評価が低くなった挙句の果てに男だと知って立直れない者もいた。男性は君の美しさや可愛らしさに惹かれて周りの女性に目を向けなくなっていたし、不埒な考えを持つものも出始めてきた。そこで君が、偶然事故に遭遇するのを見て 身体と記憶をを女性に変えてみた。まあ、結果は見ての通りだけどね』
圭人は自分のことなので、何も言い返せなかった。少し心当たりがあるからだ。しかし、聞き逃せない事も言っていた。
「面白いって、どういうことだ?」
『そのままだよ。君の人生が面白そうだったから、ずっと見ていたんだ。君たちで言う、暇だからテレビでも見ている感じかな?』
「じゃあ、俺がこんな姿で生まれたのはあんたのせいか?」
『いや、それは違うな。君を認識したのは君が5才の時だ。それに君にちょっかいを出したのは、今回が初めてだし、君が女性になったらどうなるか見てみたかったんだよ。特に大きな変化がなくて、残念だけど』
圭人は納得ができないのか、顔を顰めている。
「俺が、事故に遭わなかったら女にならかったのか?」
『そうだね、君の事は暇つぶしに見てただけで女性にしたのも気まぐれだよ。まあ、これからは女性として有意義に暮らせばいいさ』
「男に戻してくれないのか!?」
『さっき言ったと思うけど、君は女性の方が都合が良い。そこは間違っていない。男だった記憶を封印は出来るけど君はそれを望んでいないだろう?』
圭人の気持ちは分かっていると言う様に聞いてきた。
「当たり前だ!」
圭人は反論しようとするが、無駄に終わった。
『ではそう言うことで何か不都合なことがあったら、また会いに来るかもしれないど、あまり期待しない方が良い。君の目が覚めそうだから切り上げるけど、これからは女性としての自覚を持って、その絶世の美貌を使って周りの人を魅了しながら素敵な人生送れば良いさ』
圭人は、白い靄に包まれながらその言葉を聞いていた。
圭人は、自分の部屋で目を覚ますと女のままだと確認をし、ため息をついた。そしてケイトとして生きる覚悟を決めると、何時もの様に学校に行く準備をするために起きたのだった。
???
『あ〜あ、あんまり面白い結果にならなかったな。次は誰で暇つぶししようかな?』