19-4 美少女と美少年と美少年
結婚は、結局の所2つに分類できると私は考えている。
1つ目は恋愛結婚。純粋な男女の恋が結ばれる事であり、それは近代までは殆どが実現せず、したとしてもその夫婦には過酷な運命が待ち構えていた。貴族といった今は無き上流階級の人々にとっては、今日の生活され苦しい平民に比べれば、まだその可能性は高かったし、その先の未来も幾分かはましと言えた。しか、その場合は大抵はもう1つの方で邪魔される。
何らかの作意がある結婚。政略結婚がそれに当てはまるだろう。自分の家の位を上げるため、家の収入を増やすため、官僚などとパイプを繋げるため、その他諸々の様々な理由で、親は自分の子供の結婚相手を勝手に選び、勝手にその相手の親と話を進めていき、会ったこともなければもしかしたら名前も聞いたことのない人物と、その子供は結ばれる事となる。結ばれた後に恋が育まれるならばまだましと言え、親の策略による結婚にはメルヘンチェックな感情は挟まれない。そして、この類の結婚は、その大抵が上流階級の人々に多い。
そして、この私もその上流階級の一員と言えるだろう。
「俺も、サークラの事は大好きだ。あのパーティの時から、ニュースや手紙を見ては胸が悶々していたし、いつも王宮を飛び出してサークラに会いに行きたいって思っていた」
けれど、と私の愛しき人は区切って、返事を言った。
「ごめん。今はそんな時じゃないと思うからその告白は受け入れる事が出来ない」
彼は、私の瞳は見ず、対岸の街並みを目を細めて見ながら、そう言った。
それは、確実に帰ってくると予想していた答えだった。
「俺はこの国の女王で、君はジャピード帝国の皇帝だ。それぞれの国の象徴的存在である俺達が消えたら、みんな混乱するだろうし、そこから何が起こるか予想つかない」
統一直後の憲法制定で、皇帝と女王はそれぞれの国の象徴的存在に改められ、政治的実権は有事以外には持たない事になった。
けれど、皇室と王室の交流は、帝国と王国との交流に等しく、それは融和が進んでいるという事に も繋がる。そして、その進み具合によって、2国間の住民の融和も関わってくる。
今、アイドルを中心とした芸能界が、庶民にも広がりを見せたラジオを中心にあるが、その原動力になったのも、互いの王家の人が出たことから始まった。
「急すぎるのは駄目なんだ」
たとえば、3年前に2国が共同で成人の臣民達に行った聞き取り調査の結果を見たことがある。
2国の平均で、互いの国に好感を抱いている臣民は23%、逆にライバルだったり敵だと思っている臣民は35%あり、予想外に敵だと思っている確率が低かったのも驚かれた。
しかし、この大陸の臣民が一番驚いたのが、その下の質問事項の「はい」の比率だろう。
2国の平均で91%
王国ならヨーロイド王国王室に、帝国ならジャピード帝国王室に、好意を持っているか否か、という質問に対して、好意を持っていると答えたのが9割を越えたのだ。
だったら、国家元首同士の結婚も認められるんじゃないか、という事も言えるが、そう簡単にはいかない。両方の国家元首が、本当の性別が逆なのも、大きな理由の1つだが。
「やっぱり、結末がうやむやになるから?」
「ああ。この大陸やカールマニアで、現れては消えていった俺達の祖国に申し訳なくなる」
結末。
この場合は、多くの国が何故この大陸を統べようと戦ってきたかに通じるし、極論を言えばこの大陸に国家が存在する理由にもなり、戦争をしてきた理由にもなる。
それほど重要な理由を、恐らくクリョーンは書いていないだろう。彼にとっては、誰か困っている人に手を差し伸べて助ける、という事が彼が動いている理由になっているから、そんな事は関係ないからだ。その部分から、私達と彼は違ってく
「この大陸の全土を統べて」
「“ビギニングランド”に国旗を立てろ」
それが、この大陸の一番最初の国家からある目標だ。
この大陸に広がり、能力者を生み出した力の源であり、東西から迫ってきた私達の祖先が、はじめて邂逅した場所。
そこに、大陸を全て手中におさめた国の旗が立てられると、この大陸は永遠にその国が治め、そして大陸を覆う“黒い帯”も消えると言われている。
その栄光をえるために、数々の国が生まれ、数々の国々と戦い、そして消えていった。2つの国になったとしても“平和による統一”、つまり双方の国家元首やその家族による結婚で統一とする平和的な手段も実行されてきたが、その度にクーデターなり反乱なりで失敗となっている。
だから、この世界で一番難しいのは王族同士の結婚であり、さらにその中で難しい、つまり一番結婚するのが難しいのは国家元首同士の恋愛結婚である。それに私達は挑戦しようとしているのだ。
「それじゃあ」
けれど、何年が経とうとも、相手には悪いけど政略結婚をした後でも、私はを一生愛し続ける。
だから、必要になってくる。
「もし、世界が統一しよう、という気持ちになったら、結婚してくれる?」
その一言で、私が何をしようとしているのかわかったのだろう。
は少しだけ驚いたような表情をして。
「ああ、約束する」
そう言ってくれた。
私はプロポーズする前の時より少し気持ちが軽くなったなと感じながら、と一緒に振り向いた。
私達の視線の先のクリョーンは、いきなり見られて、意図を察してないのか、私顔負けに可憐に首を傾げた。




