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なにかしら  作者: コーレア
下 The preliminary moves to the following tale!
54/58

19-1 何回も行ってるとパターンが出る

 サークラ女帝とクリョーンのヨーロイド王国入り。


 そのニュースに対するレベル5達の反応は様々だった。

 ある水のレベル5は、それを聞き流した。

 ある炎のレベル5は「死ななかったのか」と一言、物騒な事を言った。

 ある木のレベル5は、物騒な事を言った仲間を、自分の能力で攻撃した。

 ある金のレベル5は、それを見ながら、その木のレベル5を茶化した。

 その茶化した金のレベル5が、顔を赤らめた木のレベル5に拳で飛ばされるのを無視して、土のレベル5は自分達に下された命令に読み上げた。


 結局の所、大陸のレベル5達に通じる思いはあっても、それぞれそれを口にする事はない。

 それが彼らが生きている理由だし、その理由を失ったら、彼らはこの世界の掟を破るだろうから。


◇ ◇ ◇ 


 少し前に言った5つのテロ組織。

 実は、彼らには1つ共通する事がある。


「よっ」


 少なくとも1回は、クリョーンに起こそうとした事を鎮圧されている事。

 ある組織では、すでに8回も鎮圧されていて、まさに彼らの天敵になっていた。


「……………………」

「あれ? 黙りこみ?」


 だから、彼らのほとんどはクリョーンの事が嫌いだ。

 その殆どに入らなかった人達、つまり数学の全体集合で言うならAにもBにも入らない人達にとっては、クリョーンという少年は好奇の対象だ。

 そして、その内の1人が、ビクトリア市にいた。


「また太りました?」


 その1人の目が細くなって、行動を起こす。

 クリョーンに行動する暇を与えなかった。いや、むしろ、クリョーンは動こうとしなかった。


「やっぱり、いつものクリョーンだ!」


 ギュッと。

 家の2階のベランダに飛んできた木のレベル5・クリスティナ=ローラーが、決して小さくはないそれを、自分の体とクリョーンの体で挟み込んだ。

 今年で24になるには見えない容姿のクリスティナのぬくもりを感じながら、クリョーンは辺りを見渡す。

 石造りの家だったり金属の家だったり新旧入り交じる住宅街の、家の屋根の上だったり、電柱の上に人が立っていた。


「お久しぶりです、みなさん」

「久しぶりだ、クリョーン君」


 クリョーンが、4人に対して挨拶をする。対する返答は、家の目の前の電柱の上に立って笑みを浮かべる男性だけ。それが彼らのいつも通りの挨拶だった。


「勝手に人の家の前の電柱に立たれると、鬱陶うっとうしいのだが?」


 ボワッ、と一瞬背中が熱くなった。

 電柱の上の土のレベル5・カルマンタ=スチュアートは、笑みを残したまま礼をする。


「申し訳ございません。呼び鈴を鳴らすと、迷惑をかけるかと思いまして」

「電柱の上に立たれるよりかはましだ」


 ベランダの外に立っているクリョーンとクリスティナの横ではなく、セレナにあてがわれた部屋で、一堂に介した5人のレベル5全員をまとめてそう評したミーシャさんは、コンコンと窓を叩いた。

 窓は雨も降っていなかったのに、ベッタリと全体が濡れていた。


「ルイ。能力無しで、後でこれを拭いとけよ?」

「わかりました」


 ミーシャさんの火によって飛ばされた雑巾ぞうきんを、自分の水の能力で消火しながら、ルイ=ローンチェスターは答える。


「は・な・し・て! クリョーンはわたしの!」

「クリョーンは私の許嫁いいなずけよ!」


 火のレベル5のミーシャさんと、王国親衛隊のリーダー&副リーダーのピリピリとした空気の一方で。

 クリョーンの方では、セレナとクリスティナが彼を巡って争っていた。争う、といっても彼の右手と左足を引っ張りあっているだけだが。


「地味に痛い」


 別に俺は誰の物でもない、と冗談で彼女達が争っていると同時に結論付けたクリョーンが言うと。


「ほらぁ! 痛いって言ってるじゃない! お子様は諦めて離しなさいよ!

「お子様じゃないもん! まだ11才のりっぱな子どもだもん!」


 レベル5同士の争いは激化した。

 それを止めたのは、クリョーンでもなく、クリスティナの上司であるカルマンタでもなく、セレナの里親であるミーシャでもなく。


「うるさい」


 完全無音、狙った物は外さないが売りの筋肉から作られた狙撃銃の2発の銃弾と、二重の意味をこめたフィーガナの言葉だった。


「「「は、はい」」」


 数本の髪の毛の先を持っていかれた2人と、フィーガナのジト目を見たクリョーンが同時に答えた。

 ミーシャさんとカルマンタさんは同じような苦笑いを浮かべた。

 こうして、少し人が増えたのと結末以外には、あまり変わらないクリョーンのいつも通りのヨーロイド王国入国2日目の朝は更けていった。

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