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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
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01-5 バスの中で

 女帝陛下と共に市営バスに乗っている。そんな夢のような状況が、俺の目の前にあった。

 囚人服の上にハーレーを持ってきてくださったクリョーナさんのお友達から拝借したコートという格好から、女帝陛下の“旅”を支持している軍人と同じ軍服を着ていた親衛隊の軍服の上に丈の長い海軍用のコートを羽織るという格好になった俺は、パトソールさんから「頼んだぞ」という言葉と共に今度は財布つきの現金で5万ウーブルをもらい、そのほんの一部を西に向かうバス代に使った。

 一方、サークラ女帝陛下は、赤いドレスから、どこで着替えたのか、女性用の陸軍の軍服に着替え、ユーリイも空軍の軍服に着替えていた。

 そして、3人とも陸海空三軍のそれぞれの帽子を目深に被っている。

 また、ルーアレードの西側には、クリョーナさんとハーレーの上で最後に話していた話題であるルーアレード総合基地がある。

 だから、何も知らない人から見れば『総合基地に帰ろうとしている若い軍人達』に見えるだろう。


「乗車する方は少ないのですね」

「一連の騒動で、軍や警察が動いたため、市民が疑われるのを怖がった事などが原因……だよ」


 今の所、喋っているのは窓側に座っているサークラ女帝陛下と、その隣に座っているユーリイで、俺は着替えている時にパトソールさんから伝えられた“日程”の手順を頭の中で確認していた。

 3年前に女帝陛下に拾われて以来ずっと仕えているユーリイはほとんど笑顔を見せず、対して彼の主は目を輝かせている。

 そして、バスの中は、女帝陛下がおっしゃった通り、まばらにしか乗客はいない。しかも、半分ほどが軍服だから、普通のお客さんにとってはたまったものではないだろう。


「じょーーサークラ」


 出発する時に、サークラ女帝陛下から言われた事。それは、同じ年齢なのでさん付けなしの下の名前で呼びあい、会話もお友達の様に喋りましょう、という物だった。

 ばれない為にも賛成できる事だが、俺やユーリイにとっては女帝陛下を呼び捨てでは言いにくい。だから、ユーリイは大体は女帝陛下から喋りかけると反応しているし、語尾が詰まったりしている。


「なに?」

「“付属品”について何か知って…る?」

「“付属品”? 聞いたこともないわよ」

「そうか」


 ついでに“付属品”も東側に連れてってほしい。

 そう言ったのはクリョーナさんで、その“付属品”がある場所、つまりルーアレード総合基地空軍格納庫を俺に教えた後、急に俺を抱き締めてきた。

 やめてくださいと言える事もなく、30秒経つまでずっとその抱きつかれていた。


 必ず生きて帰ってこい、クリョーン。


 そして、俺の耳元の近くからクリョーナさんの口が離れる時に、彼女は言った。

 その後に見たほほえみは、少し寂しそうだと思ったのは、その時に聞こえた泣きそうな声色からだろう。


 ……本題に戻すとして、一体“付属品”とはなんなのか? それが気になっていた。

 それを考えたりしたが、結局さっぱり見当がつかない内に、バスは基地の前に着いた。


 時に帝暦1974年12月23日午後8時47分。

 その日の正午過ぎに起きた皇室親族誘拐事件にならぶ大事件と言われる事件の幕が開けた。

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