11-17 3人以外は意味はない(真剣)
「予想外の相手だな」
最初に出てきたのは、俺と少女を結ぶ線の右側の木に隠れていたアルフェント・セラリア大尉。
「まさか、彼女が現れるとは」
同意を示しながら出てきたのは、少女と同じ空気の能力者のレベル5であるセラリア・アーヴィア中尉。アルフェント大尉とは逆の左側の木に隠れていた。
「…………」
何も言わずに出てきた3人は、俺の後ろの木に隠れていた。木のマイク・ラーフェア少尉とリーア・アルフェト少尉、そして金のマーフィー・シェア少尉である。
ついでに、木の上にいた山賊の精鋭3人も、それぞれの木の太い枝の上に現れる。
「んっ? もう1人いただろう。アシルのお気に入りの1つが」
精密な銃弾を1発放ちながら現れたのはフィーガナ。その銃弾はやはり、少女の手前でひしゃげた。
「ふむ。レベル5が8人に、サイボーグ、そして山賊達か。なかなか、豪華な顔ぶれだな」
その豪華な顔ぶれに、少女は笑みを浮かべた。余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)な笑みを。実際そうなのだが。
このカールマニア王国にレベル5がいるように、大陸の2つの国にもレベル5はいる。その数は限られているが、殆どは国家に協力している。だから、ある1つの戦場に、レベル5が複数集う事がある。そういった例は色々あるので詳しくは話せないが。
しかし、そのレベル5が複数集う例として一番多い理由は、一般人でも知っている。
国家に敵対するレベル5が現れた時である。
そのレベル5を一人一人詳しく話していると、只でさえ最近は会話より説明文が多いのに、この後が説明文onlyになってしまうので話さない。
とにかく、その犯罪者(レベル5)のうちの1人が、この少女だった。
ハンナ・ローシャン。
そういう名の彼女は、公式な戦いなら5回は、非公式な戦いなら何十回も戦っている。しかも、公式な戦いの時はこっちにレベル5が3人いたのに、引き分けに持ち込んでいる。
「まあ、時間が勿体ない」
そんな伝説的な強さーーフィーガナが言うには俺も伝説的らしいーーを持つ少女は、基本せっかちである。
時々俺と戦っている時、いきなり話を区切って攻撃してくるぐらいせっかちだ。何故か“アイツ”の事やクラスメイトの事を話している時が多いが。
「さっさと決着つけようぜ?」
少女が浮かべたその笑みは、いたずらっ子のようなまだ幼さが残る笑みだった。
◇ ◇ ◇
俺の考えでは。
喧嘩と戦闘の違いは、その行動を起こす者達が、何かしらの武器を持っているのかいないのかで分かれると思う。
差しの男同士や女同士の拳による殴りあいは喧嘩と言われるが、集団の男同士の殴りあいも喧嘩と言われる事が多い。
一方で。
差しの場合でも、集団の場合でも、両方が武器を持っていれば、それは戦闘となる。その集合体であり、戦闘の目的を代弁しているのが戦争というモノだろう。
だから。
一般的に能力者同士の戦いは、差しの場合でも集団の場合でも、その能力者のレベルによって戦闘が否か変わってくる。
だいぶ前、といってもまだ10日前の事だが、ジャピード帝国の首都・ルーアレードでパトソール宰相のお兄様が言っていたデータ、つまり能力者が約1万人いる云々(うんぬん)の事を覚えているだろうか。
詳しい数字は覚えてないが、その約1万人の能力者のレベルの構成比を、内務省の秘密文書で見た。
その文書が言うには。
日常生活で、例えば蝋燭の火を灯す事などをする事ができるレベル1は約80%。
仕事場で、例えばガスバーナーの代わりに炎を出せるぐらいの事が出来るレベル2は約10%。
自分が出した炎をだし続け、上の2つなら何百でも何千でもやる事が出来るだけレベル3は9%。意外とレベル2と近かったから、これだけははっきりと覚えている。
自分が出した炎をだし続け、その形を弾に変えたり、槍に変えたりして扱えるレベル4が約0.999%。
そして、レベル4に加えて、大きさも弾ならテニスボールほどから砲弾以上に変えれるし、その温度も自由に調整出来るし、何よりもそのレベル同士が戦えば地形を変えられるし、全員手を組めば帝国でもヨーロイド王国でも簡単に制圧できると推測されているらしいレベル5が21人。
カールマニア王国に6人、ジャピード帝国に6人、そしてヨーロイド王国に9人という具合だ。
この日までに、俺はカールマニア王国にいるその6人のレベル5と会った。というより、共同戦線を組んで、ヨーロイド王国のレベル5の1人と戦おうとしている。
他のレベル5も、幼女からお爺さんまであらかた会った。それに、その半分とは戦った。……あの1ヶ月は、まさに地獄だったなあ。
おっといけない。話が脱線しかけた。
喧嘩と戦闘のわけかた、だったけ。
結局の所は、だ。
レベル1からレベル4までの戦いは、たとえ相手がレベル5であろうとなかろうと喧嘩に過ぎなく。
レベル5同士の戦いになって、それは戦闘と呼ばれるモノになるのだ。
「さて」
理由は簡単。
レベル5同士の戦いは、時に地形も変えるから。
「整えて」
そんな戦いに比べたら。
「と」
まだ、彼女の戦いは、ましな戦いと言えるだろう。
なぜなら、現代科学では如何なる対処も出来ないからだ。
酸素濃度の急激な、時には酸素ボンベも破壊する減少によって、フィールドを整えてから戦い始めるのは。




