11-14 神話は伝承の一つ
今日から三学期なので、不定期更新になるかもしれません。
1975年1月1日午前6時42分
中央高地、アシルさんの秘密研究所
彼が帰ってきた。
外から通じる通路のドアが開いて、クリョーンと山賊の首領が入ってきた。何故か、笑顔を浮かべている首領と一緒に喋りながら。
「フィーガナ、どうした?」
私の視線に気づいた彼が話しかけてきますが、私は彼を鋭い目付きで見たまま答えません。
そのクリョーンの隣で、クリョーンと同じくらいの身長の首領が納得したような表情をしていますが、それに関しては今は無視です。
「あなたが、アドリーヌさんですね?」
色々と準備を終えたロワイエ大統領が、首領に話しかけます。その右隣にはついさっきまで話し合っていた元気な83歳のナルクアさん、左隣にはその2人の話をずっと聞いていたセラリア大尉がいます。
私の心の中で敵と位置付けた彼女は、ついさっきまでは全く出ていなかった警戒のオーラを少し出しながら、大統領の方を見ます。
「はい。初めまして、ロワイエ大統領閣下」
「いえいえ、今となっては大統領閣下と呼ばれる者ではありませんよ」
「私はこれからも良き好敵手になると思っている閣下に話していますよ?」
その言葉に、ロワイエ大統領は困ったような笑みを浮かべて、ナルクアさんとセラリア大尉は目付きを私みたいに鋭くします。
親子で何かを話していたサークラとアシルさんは、この部屋にはいませんが、聞き耳を立てているのは、壁越しの声が無くなったのでわかります。まあ、聞き耳を立てているのはその2人だけでは無いようですが。
「積もる話は、後に置いときましょう」
そう言うと、ロワイエ大統領は前の会議では1回も使わなかったスクリーンの電源を入れます。
私達にとってはさっき見ましたが、クリョーンと首領にとっては初めて見る映像です。
普段は暗いところなのですが、今はこうこうと明かりが点き、戦闘服を着た輩が忙しなく動いているのが映っている監視カメラの映像がありました。
「これは、王宮の地下のあの部屋の画像では?」
すぐに首領が、どこの映像かわかったようです。王室の護衛をしていたので、行ったことがあるのでしょう。
「あの部屋?」
分からなさそうな表情を浮かべるのはクリョーン。
戦闘をしている時の彼からは想像がつきませんが、普段の彼は『守りたくなる人』と男女問わず言われます。
女顔とまではいきませんが、可愛らしい普段の表情。身長170センチと18歳にしては少し小さい彼。そして、何人もの男を誤った道に外そうとしたほど可憐に首を傾げる疑問に思った時の表情。
「え、ええ」
男でそうなりますから、最早女子になると、彼の村の村人の女性の8割が彼に好感触を抱くほどです。
私も慣れましたが、今ので鼻血が出そうになりました。本当、心臓に悪いです。
「核爆弾がある部屋ですよ」
ロワイエ大統領が、平然とした風に首領よ。先に答えを言いますが、声がほんの少し震えているのを、私の聴覚が逃しませんでした。初めて会ったときに比べると、幾分か小さいですが。
ちなみに、クリョーンが可憐に首を傾げたのを見た人の先に待ち構えている道は、もう1つ有ります。好きな人がいる人限定ですが、流されたらいけないと思うからかその人が恋している相手への愛情をより深める事があるのです。
「核爆弾?」
ですが、今はそこら辺の詳しい話は置いときます。
核爆弾という不吉な言葉に、彼の目付きが漸く鋭くなったからです。なぜ、首領と一緒にいる時は鋭くなかったのが気になりますが、今は聞くのは押さえておきましょう。
「ヨーロイド王国から持ち込まれた核爆弾が、王宮跡の地下に運ばれていましてね」
「あら? 私が見たときは、宝物館でしたよ?」
「それらは大統領官邸に運び込まれています。9年前に」
「なるほど」
クリョーンも首領も、何故王宮の地下に核爆弾という危険な物があるのかわかったらしい。
「その核爆弾とそれを発射する兵器が収められている部屋に動きがあったのが、つい10分前の事です」
「大統領閣下が懸念されていた事が、早くも実行に移されたと?」
「ええ。場所がわかったら撃ち込んで来るでしょう」
誰に、とは大統領は言いませんでした。
今となっては、ルータ将軍や首相にとっては、私達の誰もが危険な分子です。なので、誰に撃ってくるのかは、私達にも、もしかしたら彼らにもわかっていないかもしれません。
つまりは、状況次第になるでしょう。
「そして、私達はそれを阻止します」
それは、ルータ将軍達の最後の切り札を潰す事。
それは、このクーデターを鎮める事に繋がる道になる事。
だから、ロワイエ大統領はその道を通るためには手段を選びません。
「その行動にあなたの参加をお願い致します」
首領は、少しだけ考えた後、口を開きました。




