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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
38/58

11-9 Are they not man?

 4時22分、刑務所1階。

 俺とアドリーヌは、不気味な静けさの中での打ち合わせを終えた。打ち合わせ、といっても、指差しを2つばかりしただけだが。


「ジャン!」

「はい!」

「全員引き連れて降りてきなさい!」

「分かりやした!」


 正直、作戦と呼べるものか怪しいものだが、怪物相手にずっと戦うよりかはましな事だ。


 さて、その作戦もどきの概要を知るには、この刑務所の地形をまず知らなければならない。

 島の真ん中のこんもりとした標高30メートル程度の山の頂上に建てられたこの刑務所は、囚人の移送などに使う北向きの道しか、道といった道はない。その道につながる玄関は、コシチェイの後ろにあり、そこのドアは閉ざされている。

 もちろん、コシチェイ相手に物量作戦を挑みこみ強行突破を謀るというバカはやらない。目の前には命がその身にない骸骨が待ち構え、後ろからゾンビ刑務も迫ってくるのだ。最高難易度のゾンビゲームには、誰も挑みたくはないだろう。まあ、最近登場したばかりのコンピュータで、こんな本格的なゾンビゲームができるわけがないが。来で出たらやろう。


「来やした!」


 話を戻して、骸骨が守る先しか道といった道はない。それが前提条件となる。

 では質問。


 新たな道を作ったら、骸骨にも防がれない道が出来るのではないか?


 だから。


「ジャン! 後でクリョーンを抱えて走ってね!」

「へっ?」

「早くこっちに来なさい!」


 一瞬、疑問の表情を浮かべたジャンという副頭領だったが、俺の両手の燃えたぎる炎を見て、瞬時に何を起こそうとしているかわかったらしい。慌てて、アドリーヌがいる方に、アドリーヌと一緒にコシチェイの攻撃を迎撃しながら、アドリーヌの方の通路の奧に走っていく。

 その後も、見事な連携を見せながら、山賊達人がアドリーヌの通路の方に入っていき、入りきらなかった分は、俺の両手の炎を避けながら、俺がいる側の通路の奧に入っていく。


「溜めれた!?」

「ああ! いつでも行ける!」


 その返事に、アドリーヌは満足した笑みを浮かべながら、山賊の中の能力者と一緒に玄関へと通じる通路に出る。

 出た途端、コシチェイによる断続的だった攻撃が、いきなり連続して射ってくるようになった。


「ほう。考え抜いた結果が、強行突破かねぇ?」

「拠点防衛は得意だけど、そんな荒業は私達には向いていないわよ!」

「では、どうするのだねぇ?」


 そんな会話の間でも、コシチェイは攻撃の手をゆるめず、山賊達は見事な連携プレイで迎撃する。一方で、2階から降りようとしてくるゾンビ達に対処しながら、だ。

 何十人の山賊の後ろに背を向けて、港へと通じる道とは逆の壁を見る。だいぶえぐられているが、さすが刑務所といったところか壊れる様子はなかった。

 だから。


「こう、するわよ! 野郎共、息を殺しなさい!」

「応!」


 俺と山賊の間に分厚い木の壁が出来て。

 俺の両手の炎が、1階の半分と踊り場を通じて2階のほとんどの空気を吸った事を感じ取った後。

 その炎を満遍まんべんなく開放した。


 直後


 俺の視界は真っ白に染まる。


◇ ◇ ◇ 


 同じ頃、カールマニア王国北西部。

 カールマニア王国北西部のある平坦な道から、一切の命令をすっ飛ばした攻撃が行われた。

 BM-21。ジャピード帝国から輸入されたそれは、ひょうの意味がある『グラート』という通称がある。

 6輪式トラックの荷台部分に全長の長い40本の122mmロケット弾発射器チューブをまとめた多連装ロケットランチャーであり、40発のロケット弾を全て発射するまでには20秒しかからず、再装填も10分ほどで完了する。ロケット弾の弾頭は基本的に対人、対非装甲車両用の破砕性弾頭であるが、中には対硬化目標用の対戦車榴弾(HEAT)や対戦車地雷散布弾頭、対戦車用の子爆弾散布弾頭も用意されている。

 カールマニア王国陸軍記録の中でそう紹介されているそれが、合計3台から発射された。互いにぶつかって起きる誘爆も辞さない飽和攻撃だった。

 20秒の間に1キロ四方のために放たれた120発のHEAT弾頭であるロケット弾。セラリア大尉の空気の流れによる探索範囲からわずか1キロ先から放たれたそれは、美しい白い煙の弧を描きながら、定められた目的地に向けて飛ぶ。

 その無言のモノ達を静かに見据えるのは、つい8年前まではモノとして扱われていたが、今では参政権無しの市民権を得た者達の1人。


「ロケット弾確認、解析完了、BM-21ロケット砲HEAT弾頭120発 」

『了解。フォーメーション・アーンギル開始』

「命令権限を持つ者の1人からの命令を受諾……照合中……展開中……展開完了……ミスター・アシルの命令次第実行出来ます」


 しかし、今はモノだった。

 例えるなら、森の木の上に立つモノは、まるで天使のようだった。

 背中から静かに展開した両翼。それはどこまでも白く、どこまでも輝く翼。アシル博士が作ったサイボーグが『芸術の人間』と言われる由縁の美しさだった。

 静かに。森の静寂を壊さないほど静かに10メートルほど開いた絹のような両翼には、片方に55個ずつの穴が開いていた。

 そして、フィーガナは真っ直ぐミサイルを見据えながら、その方向に真っ白な指を向けた。その10本の指にも、本来なら爪がある所に穴が開いていた。

 翼に110個、指に10個の穴を向けた彼女は、その神秘さを保ったまま、少しだけ命令を待った。


『フォーメーション・アーンギル実行』

「実行」


 直後。

 ビシュ! という空気が鋭く動いた音が、その森に響き渡った。

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