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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
37/58

11-8 大統領達はというと

 午前4時30分。

 クーデターから未だに夜は開けていないが、そろそろ空は白み始めた頃。

 カールマニア王国北部は、比較的穏便に事が進んだ。そもそも、クーデターを起こした理由の1つにもなっているが、北部はジャピード帝国とヨーロイド王国との間で結ばれた条約で、その軍隊が配備される量は決められているので、その規模は南側と比べて少ない。しかも、10年前のクーデターを機にして、首都で起きると見られる事案クーデターに対して備えるために、南側の武器を重点的に更新していった。

 だから、既に南側ではすでにカールマニア王国が単独で開発したAMX-30ーー列車を砲撃した戦車ーーが続々と配備されているのにも関わらず、北側ではジャピード帝国から輸入したT-54だけという状況になっている。

 そして、8年前の統一まで大陸でしのぎを削りあった東西双方の熟練者も、南側に重点的にいた。

 量と質、その双方で南側と歴然とした差がある事を百も承知している北側の西の民族の基地や村は、南側の部隊と一緒に攻めこんできた東の民族の部隊に、たいした抵抗もせずに明け渡した。

 その、東の民族の部隊の一部が駐留する村の中で、ホグーポート村は一段とその数が多かった。

 地形的要因や村民の強さ、そして山賊を捕らえた村であり、あの4人組が現れた村だから、通常は1個小隊が守る村民全員を押し込めた集会所を、2個小隊が守っている。

 詳しく言えば、レベル2程度の能力者の部隊と、普通の無能力者の部隊である。もちろん、レベル5の集団相手に、その程度で防げるとは、軍も思っていなかった。

 ゆえに、彼らは1つの作戦をたてていた。


◇ ◇ ◇ 


「不気味、だな」


 そして、特別攻撃小隊隊長であるアルフェント大尉も、その数の少なさには、疑問を抱いていた。

 セラリア大尉が空気の動きから察知した程度なら、ものの2分で潰す事が出来るだろう。しかし、俺達の危険性は、アシル博士の家を襲撃した事や警察庁襲撃の時から知っているはずだ。


「大尉」

「はい」

「周囲に何かあるか?」

「探知できる範囲ではありません」

「ふむ」


 その数分後、村の集会所がある高台から川を挟んだ所、つまり10日前にアドリーヌが現れたその場所に、特別攻撃小隊の面々がいた。集会所の周りを警戒している奴らに見つからないように、草に潜り込みながら、山賊が迫撃砲を置いていた平たい所まで来ていた。

 アルフェント大尉が、特別攻撃小隊専用の無線機に声を吹き込む。


「こちら。ポイントAに着いた。そちらは?」

『こちら。ポイントBに着きました。いつでも行けます』

「よし。なるべく早く済ませたい。1分後に攻撃を開始する」

『了解』


 特別攻撃小隊に守られながらついてきたロワイエ大統領が、集会所の周りの兵士を見ながら尋ねる。


「本当に君が言っている通りの作戦を、ルータ将軍は進めているのかね」

「彼らにとって、閣下は西側の民族の代表と見ているため、どんな方法を使ってでも閣下を亡き者にしようとするでしょう」

「……人気者は大変だな」

「次の夜が明けた時には、更に人気者ですよ」


 その言葉に対して、ロワイエ大統領は返事をしなかった。ただ笑っただけ。嬉しさではなく、自分を馬鹿にした嘲笑ちょうしょうだった。

 しかし、その嘲笑に気付く者は、特別攻撃小隊の面々の中にはいなく、例えいたとしても、後何秒に迫った作戦に向けて心を傾けているから深く考える者もいなかった。

 午前4時32分。腕時計の針の秒針が12の文字を回ったのを見た大尉は、静かに声を出した。


「作戦開始」


◇ ◇ ◇ 


 まず、集会所の周りを警戒している兵士達が見たのは、対岸の森から飛んでくる炎だった。

 ボワッと燃え広がる炎ではなく、炎弾という燃えないサッカーボールぐらいの大きさを持った弾が、高速で迫ってきた。


「攻撃かーー」


 くにん。緊急事態を告げるその言葉は、全部を言うことはできなかった。声をあげようとした兵士を含めた高台の川側に立っていた不幸な4人の兵士の腹に、ほぼ同時に炎弾が直撃したからだ。

 鉄球を受けたほどの衝撃を腹に受けた彼らは、瞬く間に体がくの字に曲げられ、足が浮いた。その1秒後には、集会所の壁に文字通り叩きつけられた者もいれば、高台に通じる坂道をすごい勢いで転がっていった者もいた。

 さすがに、大尉がこれでも威力を押さえつけていたのもあるがよく鍛えられた彼らは、この攻撃で死ぬという事は無かったが、意識は一瞬にして刈られた。


「アルフーー」


 そして、壁にめり込んだ同士を見た集会所の中にいた兵士が、すぐに無線機を手に取り、何かを叫ぼうとしたが、全部言うことは叶わなかった。

 空気の流れで大尉から詳しい配置と動きを知っていたが、アドリーヌと同じ枝の銃弾で、全員の無線機を貫き、その機能を無くしたからだった。

 だが、兵士達にとっては、全部言えなくてもそれで良かった。通信相手に何かが起こったとわかってもらえれば、それで彼らの仕事は果たせるのだから。


「ファイア!!」


 無線が途絶えてわずか4秒後、事前の打ち合わせ通りに、ホグーポート村の南東キロにあるロケット砲の火が吹いた。


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