11-6 外見は美人な3○歳
クーデターを起こした首謀者たちが、主に西側の民族によって起こされたのは、ロワイエ大統領が話していた。
では、1つ質問。
クーデターに失敗した後、彼らはどうなった?
答えは2種類ある。
1つ目は、軍事裁判にかけられた道。極刑になった者もいれば、軍を追放された者もいた。
もう1つは、山賊になった道。東西双方の民族に恨まれ、蔑まれ、攻撃された。ある人物によると、最初の1年は「再び革命を起こす」という確かな目的があった。しかし、その後は「殺されないようにするため」何回も襲ってくる正規軍を撃退したし、時には同じ民族の村を食料を奪うため襲った。
しかし、9年にわたる生きるための戦いは、唐突に終わってしまった。外からやって来た少年少女によって。
そして、現在。
彼らは、1つの刑務所の中にいた。
彼ら約200人を全員収容するため、10年ぶりに既にいた受刑者を全員他の刑務所にうつすという作業が行われた刑務所。
場所はアルフェンバート湾の湾口。つまり、首都の真ん前に浮かぶ小さな島の上にある。
『脱獄不可能な刑務所』と言われ、作られてから30年経っても自分の命を絶つものは1年に1回いる他は脱獄者はいないと言われる刑務所。
その名も『アルフェンバート沖刑務所』。
もっと良いネーミングは無かったのかと言いたくなったが、その名前を命名したのが元国王だから、そんな事を言ったらバチが当たってしまう。
名前はともかく、その刑務所の警備体制は凄かった。
まず、刑務官は警察の中でも精鋭試験を勝ち上がった猛者達。囚人が脱獄した場合は、拳銃の発砲や能力の使用も認められている。
更に、島の海岸から50メートルまで、昼だったらはっきりと見える渦が、30年の間ずっとあった。水の能力者によって作られたそれは、その海水を力の供給源とする事で永久機関と化した。
その2つの守りによって、刑務所は守られてきた。
例えクーデターが対岸で起きたとしても、だ。
監視室の中では、細やかな新年を祝うパーティーの始まりを告げる祝杯をまさにしようとした時。
対岸、つまりは本土との連絡が途絶えた。
アルフェンバート沖刑務所は、その特殊性からアルフェンバート市警察の他にも警察庁から直接の指令を受ける時もある。その両方が途絶えたのだ。
一気に緊張がはりつめた中、聞いたこともない声が、無線から聞こえた。
ルータ将軍と名乗るそのおっさんは、長たらしい話の中で、東側の民族は立ち上がる時だの云々と言っていたが、その猛者達はまったくと言って良いほど動じなかった。
ルータを監獄にぶちこむ第一候補と心の中で決めた監守長の指示の下、刑務所は臨戦態勢に入った。
つまり。
仮眠していた監守達を含めた全員を、対兵士用と対囚人用とにわけた後、監守長は宣言した。それまで、クソ野郎どもに占拠された本部に優しく接していたのを翻して。
「宣言する。我々はそんな悪行に命をさらさない。てめえらは1日だけの夢を見てろ」
東側の民族の出身である監守長の宣言に固まった偽の警察本部に対して、刑務所は監守もも湧いた。
「いやぁ、あれは久しぶりに腹の底から笑えたよ」
そう言ったのは、横で枝の砲弾を撃ちまくる元山賊の首領・アドリーヌ=シャンクレア。レベル5の攻撃に、監守や応援に来たクーデター軍の兵士はなすすべもなく倒れていく。
しかし、彼女のーーいや、俺達の敵はなかなか減らない。
「首領! こいつらゾンビです!」
「そんな幻想の生物なんていないわよ! って言いたい所だけど、言えない状況よね」
…………しゃあない、か。
静かに、炎の弾を出す。
その妖艶な色に、監獄から抜け出した山賊を取り囲む監守達の配置が変わる。
「あれ? 手伝ってくれるの?」
「仕方なし、ですよ」
足に木の枝が刺さり、服は焼け焦げ、腕は水の弾で折れていても。
目の色の無い監守達は立ち続ける。
「この奇妙な集団、倒すのを手伝います。ただし、私も手伝ってください」
「ん~、仕方ないか。じゃあ、即席の同盟締結ね」
午前4時17分。
アルフェンバート沖刑務所の戦いは、新たな局面を迎える事となる。
そもそも、なぜ俺がこの刑務所にいるのか。そして、なぜ山賊達が檻の外にいるのか。
もともとは、俺は1人の人物に用があった。
「それと、この戦いが終わったら、一緒について来てください」
「……口説いてるのかい?」
「はっ?」
アドリーヌ・シャンクレアという人物に。




