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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
33/58

11-4 研究所にて

すみません。

テスト勉強に勤しんでいたので投稿する暇がありませんでした。

「メンバーなどどうだって良い! 奴らがどこにいるのかわからんのか!?」


 ダミ声の後、金属を蹴る音が首相官邸の一室に響き渡った。

 ダミ声はルータ将軍の声で、金属を蹴る音は苦労してまとめあげただろう報告書と一緒に机を蹴った音。


「は、はい。応援が駆けつけた時には既にもぬけの殻であり、立ち去った痕跡も全て消えていました」

「他の反乱者は!」

「7人を射殺、2人を捕らえましたが、81人はルーナ警視総監以下警察幹部が拐われた直後、潮を引くように合流しながら、郊外に消えました」

「どうやって逃げた? 無線は全て押さえているはずだろうが」

「それは鋭意調査中です」


 チッ、と舌打ちをついたルータ将軍は、筋肉がもりもりついている重い体で椅子に座り込む。

 今までで一番、といっても会ったのは3回、電話したのも10回のなかで聞いたなかでだが、不機嫌そうなルータ将軍に怯えてか、右手右足が同時に出ている中、情報部の部長が去っていく。

 ドアを閉める刹那、ルータ将軍を見て少しだけその部長の頬が緩んでいたのが見えたのは、恐らく私ぐらいだろう。


「首相」

「なんだ?」

「中央高地に、軍の派遣を。特に西側の部隊から」


 やはり、か。

 クーデターから2時間も経っていないが、今の私も中の私も、ルータ将軍に失望した。

 将軍は、ロワイエの事をまるで理解していない。


「わかった」


 だが、ここで将軍に反発すると怪しまれる。クーデターに賛同した軍と、東側の民族の過激派によって結成されたテロ組織『東側民族解放戦線』の99パーセントは将軍が取り入れたのだから、私を追いかける事も処分する事も赤子をひねるよりも簡単だろう。

 しかし、大統領の直属である護衛部隊と同じく、首相にも直属の護衛部隊がいる。クーデターの始まる前に、彼らには真実を話していて、私についてくるかどうかは彼らに委ねている。


「順調だ」


 ダミ声のルータ将軍が、参謀長に指示を出している間に、私は中の私に、愉快・・な気持ちで呟いた。


◇ ◇ ◇ 


 午前3時過ぎ。色々と迂回して、中央高地の1つの丘の地下に建てられた建物の中だった。

 カールマニア王国に亡命してきたヌーメア前皇帝陛下の秘密の研究所として機能していたのた建物は、クーデターの時にも壊されなかった。

 カールマニア王国ではロワイエ大統領とルーナ警視総監、そして首相。ジャピード帝国ではヌーメア前皇帝陛下を含む王室と建築を請け負った王立の建築会社しか知る者はいないその建物には、今は首都で動いた兵士たちと警察幹部の臨時避難場所として大にぎわいだった。


「まずこの世界はクーデターに弱い」


 普段は、カールマニア王国にいる4人だけの秘密の話場所として機能している小さな部屋に、6人の男女がいた。

 食卓用の机の一方に座っているのはロワイエ大統領と、ルーナさん。もう一方に座っているのは、ヌーメア前皇帝陛下とサークラ女帝陛下。そんな秘密の首脳会議場とでも言うべき場所になった部屋のドアの両端に、大尉と俺が立っていた。


「特にこのカールマニア王国は、29日にわたり大陸と途絶する事や、それが解消される期間がわずか半日しかない事から、大陸に比べるとクーデターに滅法弱い」


 幼馴染みであるルーナさんが解放されたからか、いくぶん顔色が良くなったロワイエさんが、その会議の口頭を切った。


「つまり、この島国でもしクーデターが起きたら、元々あった政権が新しくできた政権に一掃される猶予が29日もあり、大陸の国家がは新しくできた政権を認めなければならない」

「しかも、カールマニア王国の西側の民族はジャピード帝国の、東側の民族はヨーロイド王国の民族と共通している。だから、クーデターが民族によるモノだったら、大陸のそれぞれの国々の結果も悪化する」


 捕捉したのは、ヌーメア前皇帝陛下。

 その事は世界史で学んで、確か50年前に始まり分裂で33年前にやっと終わった衝突の発端にも鳴なったはずだ。


「だから、カールマニア王国の初代国王であるローラン家は、新しい民族を作った。相容れないと言われた2つの民族の融和のために。西側の民族の国王は、東側の民族の女性と結婚する。こんな小さな島国での争いに疲れていた国民は、一部を除いてこれに賛同した」


 しかし、その残った一部が、この国にとっても大陸の平和を何度も揺らした。

 大陸では『ブラックバースデー』と呼ばれている事件が、その代表と言えた。ヨーロイド王国国王の誕生日パーティーに、ジャピード帝国の皇室が参加している中で起きた事件。あのあとは、一触即発の事態となり、国境や首都から人々が逃げていったらしい。


「10年前のあの事件の首謀者も、そのほとんどが西側の民族だった。そして、極刑を言い渡された人々のほとんどは東側の民族だった」


 そこまでは聞いていなかった。……いや、話したくなかったからだろう。

 あなたの家の住人が、隣の喧嘩している家の家族の多くを殺しました、という事なのだから。


「だから、必然的に東側の民族は、西側の民族を恨んだ。彼らが行動を起こさなかったのは、東西の民族の融和の象徴となっていた王室を殺した山賊がいたからだろう」


 しかし、俺達や特別攻撃小隊が山賊おもしが消えた。軍の士気は最高潮のまま。


「あなた達や特別攻撃小隊を非難するわけでは無い。むしろ、東西関係なく国民を次々と殺していた山賊を捕まえてくれて感謝しつくせないくらいだ」


 結局は、来てから終わるまでが早すぎたっていう事、か。 

 ヌーメア前皇帝陛下が、苦虫を潰したような顔をしながら言うと、ロワイエ大統領は様々な感情が混ざった表情で顔を縦に振った。


「あいつがーーミーラが、このクーデターに加わっているのは察知していたのか?」


 ヌーメア前皇帝陛下が、ロワイエさんやルーナさんと同じく大学の同級生だった人物の名前を口にした。

 ミーラ・クレメンス。ロワイエ大統領と大学で知り合い、卒業後、大統領と同じカールマニア王国議会議員となり、クーデターの際に得意の扇動を生か して活躍。首相となり、東側の民族出身の代表として見られているらしい人物である。


「していなかった。していたら、力ずくでもミーラをこっちの方に連れてくるよ」


 首相の事を思い出しているのか、遠い目をしながら、ロワイエ大統領は言う。


「そしてだ」


 次の言葉を喋りはじめた時には、すでに政治家の仮面をきっちりと被っていた。


「今となっては、たんなる敵だ」

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