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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
32/58

11ー3 カウンターアタック

1975年1月1日午前1時すぎ、ルータ将軍の演説


 我々は被害者であり、勝利を約束された者である。そして、この国を救う使命を生まれながら持った騎士である。

 10年前のあの日、我々は屈辱を負った。 この国の平和の特徴であった王室を失い、その王室を殺 した者達に、我々は追われた。

 それは、我々が彼らの傍若無人ぼうじゃくぶじんな悪政を打ち倒すまで続き、その間にも多くの血が流れた。

 いや。血の流れはいまだに続いている。山賊という不法者によって、我々は多くの血を流してきた。

 その暴力を! その悲劇を! 我々は耐え続けた!

 ロワイエ前大統領のような我々に理解を示し、協力してくれた者達もいた。しかし、その中で大多数のドラゴン達は、我々か弱い人間を攻撃した! さらに!  山賊達を討伐した者達は誰だ?

 それはドラゴンがしてくれたか? 山賊を討伐したのは特別攻撃小隊という騎士が3人もいる部隊と、外側から来た者達だった!

 この事が指し示す事はなんだ? 我々は勝利の余韻よいんに浸って、気付いていないのではないのか?

 そう! 結局、ドラゴン達はその切り札を出すことを、その愚かな頭脳で、自分達の利益のみを考えて出さず! か弱 い人間を殺していった!

 今こそ、我々は立ち上がるべきである! この国の不条理と10年前から続く悪政を正す時である!

 さあ、勇気ある騎士団よ、今こそ立ち上がろう。 悪政の根源を全て断ちきった先には、この国の幸せな未来が待っているぞ。


◇ ◇ ◇ 


 アルフェンバート市では、四角に揃えられた路地で構成され2つの通りが主要な通りになっている。

 1つは、南北に島を縦断して、カールマニア鉄道の南の終着駅であるアルフェンバート駅から、港まで通じる通り。この通り沿いに官庁やデパートが立ち並んでいる。

 もう一方は、東側の住宅街から西に伸びて、市場まで通じる通り。よく買い物袋を持った人々を見かける事ができるできる。

 早朝には、南北の通りから東西の通りに曲がるトラックをよく見かける事ができるーー。

 ジャピード帝国の本屋で売っていたカールマニア王国のガイドブックでは、そんな風に書いてある。

 しかし、今は完全武装の兵士しかいない。


「兵士は各交差点に2人ずつ配置され、省庁の前には能力者を含めた1個小隊ずつ。さらに、装甲車もいます」


 セラリア・アーヴィア大尉が、アルフェンバート市の空気の流れを感じ取って、静かに言った。


「ここから、警察庁までは何人?」

「最小でも18人います」

「18人、か」


 少しだけ考えたアルフェント・セラリア隊長は、命令を待つ俺達に、笑みを浮かべながら言った。


「当初の予定通りに行くよ」


 と。


◇ ◇ ◇ 


 意味はあるのか。

 カールマニア王国陸軍大尉で小隊長であるルアー・クレフスクは、警察庁のロータリーの前の門の前に陣取る装甲車にもたれかかりながら、何度目かもわからない事を考えていた。

 首相によるクーデターが起きた時、ルアーは近くの駐屯地で、銃の整備をしていた。

 若い者は大統領が出してくれた休暇令を機に、当直をのぞいてほとんどが町に繰り出した後、門限通りに帰ってきて寝ていた。小隊で起きていたのは、私と午前1時に出るバスで実家に帰る支度をしていた若い奴の2人だけだった。

 そして、午前0時。

 銃声が聞こえて、身構える暇もなく、若い兵士が武器保管庫に突入してきた。

 整備が終わった直後で気が緩んでいた時にやって来たものだから、すぐに反撃を諦めて、駐屯地の中の体育館に叩き起こされた部下達と一緒に押し込められた。


「祖国のために動け」


 午前0時半、ルータ陸軍参謀総長が首相と共にクーデターを起こした、と無線で言った後、ダミ声で基地にその言葉が流れた。

 もし会う機会があったらぶん殴ろう、と生きる理由を大統領の言葉をパクったルータ将軍に見つけながら、指示された警察庁前の警備に向かった。

 かたわらには、水の能力者でレベル3だという男が、目をぎらつかせながら、銃も持たずに立っていた。


「注意はしたぞ」


 近くを守る部下から、特別攻撃小隊が無事・・通過したという報告を聞いて、ルアーはその能力者に言った。

 無線も聞いていないアホな能力者が、眉をひそめた直後だった。


 熱くない炎弾が、ノーバウンドで能力者を警察庁のガラスの玄関に叩きつけた。


 ほんの一瞬だけ、警察庁の中にいるルータ将軍に忠誠を誓っている兵士達の反応が遅れたその間に。

 警察庁の1階ロビーを、小さな竜巻が渦巻く。

 ほんの5秒の間吹き荒れた暴風は、ロビーにいた5人全員をガラスなり壁なりに叩きつけていた。


「何がーー」


 爆音を聞いて上の片方の階段から降りてきた兵士達は、今度は音速以上の木の銃弾に、肩を貫かれた。

 もう片方の階段から現れた兵士達には、外れる事はない普通の銃弾。


「野郎ども、突入するぞ!」

「おう!」


 思わず笑みが漏れるルアーの横を、無線と銃をしっかりと持っている能力者の部隊が通り抜けた。

 ルアー達ともう1つの小隊の計14人は、空気のモールス信号が教えてくれた通りに、特別攻撃小隊が倒した兵士達を拘束していく。




 結局。

 警察庁の中にいたルータ将軍に忠誠を誓っていた14人の兵士達と、10人のテロリスト達は、ものの5分で排除された。

 その後、空気のモールス信号で打ち合わせていた市内にいた70人の兵士は、一斉にルータ将軍側の兵士やテロリストと衝突を始める。

 そのため、ルータ将軍側は、警察庁に応援を送る事が出来ず、易々と警視総監以下警察幹部の解放を許してしまう。

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