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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
30/58

10ー3→11ー1 本番開始

 明日が新年だという事が実感できない。


 それは、大陸の人でも、島の人でも誰でも一緒に思う事で、「誰に聞いてもこの日が新年になった理由は一生わからないだろう」と言っていたのはジャピード帝国の初代皇帝。

 けれど、今の私にとっては、まさに新年と言えるだろうし、この日は一生忘れないつもりだ。


「え~と……」


 ぎゅっと優しく、けれど彼の体温をしっかりと感じる事ができるように。私は、サークラに言われた通りに、クリョーンの背中に手を回して、彼の胸に顔を埋めている。

 クリョーンはと言うと、同じベッドに寝転んで早々、行動を起こした私に戸惑って、自分の上に乗ってきた私をどうするか考えてる。

 まあ、これで戸惑ってくれなかったら、自分に自信を無くすけど。


「フィーガナ?」

「…………」


 寝たふり寝たふり。

 博士が作った私達は、主人と設定された人物が寝るまで眠る事はないけど、寝ている演技をするのは簡単だ。博士いわく「メイドが寝ているかどうか気になって寝れない」と言ってきた人がいたからとか。

 その後の噂によれば、博士に文句を言った人は、危うく不敬罪で逮捕されかけたとか聞いたけど真相は知らない。


「……う~ん」


 悩みに悩んだ末、私のご主人様は両手をベッドの上に広げて、眠りについた。

 抱かれるかも? っていう期待はあったけど、さすがにまだ会って日も浅いし、そこまではしてくれないか。

 でも良いもん。必ず落としてやるから。


◇ ◇ ◇ 


 結局、何もかも防げなかった。


 “黒い帯”は、予測通りに1週間後に半日の間消滅する可能性が高いでしょう、というニュースは、私に安心を与えてくれるニュースだが、しかしこの国には、新年を迎えたら安心を与えないニュースになるだろう。


「では、始めるとするか。狂った宴を」


 そして、私の意識の外側で、私自身が勝手に生み出した“私”が、私の口を使って、声を発した。

 怪物となった“私”は、この国最悪と言われる無法者を率いる者となっているが、私にはどうでも良かった。

 私が望んでいたのは、友達との楽しい時間を過ごす事。

 そんな平和を望んでいたのにッ!


「各部隊、所定の位置に配置を確認」


 けれど、私自身がカールマニア王国を滅ぼす事になるであろう引き金を引いてしまう。

 10年ならずとももっと深い深い因縁が産み出した炎による、2つ目の始まりを告げる砲声を鳴らす砲の引き金。

 それが今、引かれようとしていた。

 友達よ、最悪な私を許してくれるだろうか。


「作戦開始。この国に栄光があらん事を」


 私は“私”が、見えない金を引いた音を確実に聞いた。


◇ ◇ ◇ 


 その時。

 大陸の2つの国に比べればとても小さいその島国で、何千の銃口が上げられたのを何万もの人々が見た。


 その時。

 首都の目の前にある湾にカールマニア王国海軍のミサイル艇が入ってくるのを、何十の人物が見た。


 その時。

 首都の上空で警戒に当たっていたヘリのパイロットは、自身に迫る複数の白煙を見た。


 その時。

 植物や動物は、善悪問わず1人1人の動きを見ていた。






 そして。






 1975年1月1日、激動の1日を迎える。


◇ ◇ ◇ 


 最初に聞こえたのは、地面を小刻みに揺らす低い音。その音を感知して、頭の中にある音源識別機能が動く。

 それから2秒後には、音源が何かという事を特定することができた。


 装甲車


 その3文字が、頭に脳波を流す。

 同時に体も戦闘態勢に組み替えられていく。

 右腕が代わり始めている事を自覚しながら、私は目を開けた。

 コンマ5秒、クリョーンの暖かみを感じてから、彼の肩を大きく揺らした。


「ん、んん?」

「襲撃です」


 ベッドから降りながら言う。

 軍人よりかは遅いけど、戦争なんか経験していない一般人に比べたら速く彼が起きるのを見ながら、クローゼットを開ける。

 何着かある服の中で、私は迷わず2つの服を取りだし、1つを彼の方に投げてから、もう1つを着る。

 装甲車が博士の家の前に着いた頃には、すでに私もクリョーンも着替え終わっていた。

 戦闘態勢に入った耳が、1階でも博士の秘書が、眠りについていた博士とサークラを起こす音を拾う。


「フィーガナは隣の2人を起こして。最初に動く」


 黒一色の戦闘服と靴を、少しの乱れもなく着こなしたクリョーンはそう言い残してから、4段跳びで階段を降りていった。

 私がアラクネとが寝ているドアを開けた時には、最初の爆音が聞こえてきた。


◇ ◇ ◇ 


 1975年1月1日午前0時。

 陸海空も大小も問わない全ての基地と、重要な省庁と、重要人物の自宅を、カールマニア王国陸軍の軍服を着た男達やサバイバルゲームで使うような迷彩服を着た男達に襲われる。


「大統領官邸、制圧完了。大統領はおらず」

「国防省、制圧完了」


 大統領官邸や警察庁を始めとした省庁が、まず制圧された。突然、正面入り口や裏口から突破してきた完全装備の男達に、なすすべも無かった。


「制圧完了。警視総監拘束」


 続いて制圧されたのが、重要人物の自宅である。

 10年前のクーデターの時に政財界問わずほとんどの当時の主要人物が襲われ殺された経緯から、民間軍事会社(PMC)を雇い、そのPMC達が特例で軍並みの装備を認められていたので、少しの時間を持ちこたえる事が出来たからだ。


「制圧完了。全基地の制圧を確認」


 そして、最後まで耐え抜き、先の2つより多くの血を出して制圧されたのが、軍事基地ーー特に陸軍基地だった。

 先の2つのような正面突破に加えて、基地内部でも生じた反乱は、数々の基地を地獄に変えた。

 例えば、戦闘が行われている宿舎に砲撃を撃ち込んだ基地もあった。


 結局。

 1時間に及んだ制圧作戦で、“敵”側に87人、そいつらと交戦した勢力側に1024人の死者を出した。


 だが。

 失敗もあった。特別攻撃小隊の5人と、ジャピード帝国元皇帝でありサイボーグ制作者の家にいた8人の人物。

 彼らは突然の襲撃にあいながらも、なんとか逃げる事が出来た。そして、それ以降、彼らの足取りは少しの間途絶える事となる。


 チェンジングデイと後に呼ばれる事となる長い長い1日は、まだ始まったばかりである。

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