01-3 首都にて①
ジャピード帝国の首都、ルーアレード。
この町の歴史は、他の町と大して変わらないが、首都としてはまだ浅い。
ジャピード人が大陸の西側の海の海岸に上陸してから、何千年の長きにわたった時代を経てから、やっとこの町に首都が定められた。
そして、首都であるため、人々も多い。国境沿いの村にいた時にアデレードに行った事がある大人に聞いたら、中心部ならば一日中人の流れが絶えないと言っていた。
「こっちも厳戒態勢、か」
しかし、この日は違った。
高速から降りた直後から、やたらと警察や軍の姿が多かった。それは町の中心部に近づく程に増えていって、反比例のごとく町の住民のが減っていく。
「まぁ、関係ないけど」
「えっ?」
ハーレーは優雅に十字路を曲がる。
町の南部を走る高速から降りたのだから、方角では北に進んでいた。更に、十字路の先には市電が見えた。
その道から曲がったという事は……。
「エーリスパークに行くのですか?」
「んっ? ルーアレードの町並みを知ってるのかい?」
「行ってみたいなと思って、ガイドブックを読んでいた身だったので。上水道の配置は載っていませんでしたが」
「なるほど。では、ルーアレード総合基地は知っているかね?」
「ルーアレード郊外の南端海の海岸沿いにある空軍と海軍の共用基地、ですよね?」
「ああ。帝国最大級の基地であり、我が国を東からの攻撃から守る重要な基地の1つだ」
「そのような基地に何かがあるのですか?」
ハーレーは、エーリスパークの前の道路で止まった。目の前の林の奥の方にはパークに多くあるトイレの1つ。道路を見張る兵士の人々から見れば、ヘルメットを被ったままトイレに向かう姉弟、もしくは……。
考えている内にも、クリョーナさんは結局質問には答えずに、トイレのそばを通って、公園の中を進む。
「待っていましたか?」
今は人通りが少ない噴水の前に、静かに立っている人物が3人いた。その人物達に、クリョーナさんが呼び掛ける。
そして、の人物達は、左端の少年以外の人がテレビなどで見たことがあった。
「貴方がクリョーンさんですね?」
首を横に振った後、俺に話しかけてきた少女。
年は俺と同じ酒も飲める18歳。身長は俺より高い175㎝前後。体重は国家機密。体脂肪率は噂によれば一桁。
「は、はい」
臣民からは『凛々(りり)しくこの帝国を導くにふさわしい陛下』と言われるその人物は、テレビでは低い声だった。テレビに出始めた時はまだ高かったが、時が経つにつれて低くなっていた。
しかし、その人物の声は同じ顔の人なのに高い。女性の声色と言えるほど高い。
「はじめまして。ジャピード帝国第3代皇帝シーク・アルハンシア、本名はサークラ・アルハンシアです」
シーク皇帝陛下、もといサークラ女帝は、男の時とは別の意味で人々を魅了するであろう優雅な礼をした。
慌てて、俺も学校で学んでいた『皇室の人にあった時のための礼』をする。アイツに言われて、覚えておいて良かったと思った。
「頭を上げてください」
何秒か後、サークラ女帝の声が聞こえたので、今度は慌てずにゆっくりと頭を上げる。
サークラ女帝は、アイツと似た柔らかい笑みを浮かべて、俺を見つめていた。恥ずかしくなるのはこの際仕方がない事だろうが、その後女帝が一言も声を出さない事は俺が話しかければいけないのだろうか?
「ユーリイ・アラクシアだ」
助け船にしては、鋭い声を発したのは女帝の左横に立つ少年。スーツ服を着こなしているが、鋭い目は皇室や貴族の方では無いことを証明していた。
身長は170㎝の俺より少し大きい。普通の金色の髪という事は、能力とかは持ってないようだ。
「彼は私のボディーガードの方。そして、この方は私のわがままを聞いてくれた人」
サークラ女帝が紹介してくださった右側に立つ男性。つり目も、常にムスッとした表情も、テレビや新聞でよくみる顔と一緒だった。
「ジャピード帝国初代宰相のフィーガ・オルレシアだ。姫を頼む」
西側を統一する前からジャピード帝国の宰相であり、今年でその期間を含めて宰相就任から20年になる人物は、右手を差し出してきた。
初対面の時の右手は、相手を信頼した時の手。アイツから教わった事を頭の中から思い返しながら、俺は左手でその人物の右手の甲を握った。
「ほう」
左手は、相手が悪いヤツか本人では無いと思った時の手。
その意思表示に、男性は感嘆の声をあげて、視界に見える女帝は少しだけ目を見開いていた。
「なぜ、私が影武者だとわかった?」
「皇帝ーー女帝陛下の姉がいなくなった時に、宰相がここに来ると周りが怪しまれると思ったのと、軍人の雰囲気が出ていなかった事からです。推測で申し訳ございませんが、あなたはフィーガ宰相の兄でいらっしゃるパトソールさんでございますか?」
「大正解だ。ここ5年見破られていなかったのだが、まさか高校生に見破られるとは愉快、愉快。女帝陛下、このお方は信頼できる方だ。クリョーナ様もこのような逸材をよく見つけてくださいましたね?」
「可愛い妹の涙ありのお願いだからな」
姉妹よく似た笑みを浮かべたクリョーナさんは、俺の方を向いて、そのほほえみを浮かべながら、その女帝陛下のお願い事を告げる。
そして、それは物語が本章に入った事を告げる一言だった。
2013年12月31日改稿
さすがに同じセリフからはダメだろう、など。




