03-6 1つの終わり
頭の下が暖かい。
そんな感触で、俺は起きた。
「クリョーン……」
フィーガナの声だ。痛みをこらえている様な弱々しい声。けれど、声の芯は通っている。
重たい目を開けると、青い空が見えていた。
「大丈夫?」
青空への間に、フィーガナの顔が割り込む。今にも泣きそうな顔で、目が赤くなっている。
心配してくれたんだ、と思うと、自然に心が安らぎ、無意識の内に、口を開く。
「大丈夫。フィーガナは?」
「私も、治療してもらったから大丈夫」
「そっか」
……治療?
そもそも、なんで俺がフィーガナに膝枕されている状況になっているんだ?
記憶を探る。確か、カールマニア王国の大統領から、山賊の掃討作戦を依頼されて、カールマニア王国軍参謀本部直下部隊である特別攻撃小隊に一時的に入隊して、星形要塞を攻撃して、山賊の首領と決闘をはじめて……。
「フィーガナ!」
思わず、大きな声を出して、上半身をあげる。
直後、体の節々に声が出ないほどの痛みが走り、今度は上半身を前に曲げる。
「ど、どうしたの?」
「……首領は? どこに行ったんだ?」
「上で、地上で捕らえられてる」
その後、フィーガナが話した事をまとめると、俺がレベル5のフェーズ2になって覚醒の時の爆発(?)で、首領や倒れていたフィーガナが吹き飛ばされるが、噴き出したプラズマが能力を持っていたためか、布団の上に乗るような弱い感触で壁に叩きつけられた。しかし、その時には、爆発で首領は気を失っていたらしい。
一方、俺を中心にして真ん丸に消滅した地上の上で戦っていた陸軍の兵士や、山賊達も、プラズマの光を受けたためか気を失って、バタバタと俺の周りのプラズマの布団の上で寝ていた、との事。
今は、首領が爆発で死んだと思った首領補佐が、山賊の士気が落ちて無益な死傷者を出さないために戦闘の停止と敗北を宣言したため、陸軍が要塞を制圧。医療班が地下戦闘場を含めた戦闘地域で治療活動を行っている。
「……つまり、俺達は勝ったのか?」
運ばれて、近くにあった地上の木の幹に体を預けながら、フィーガナに確認すると、戦闘服のほとんどがぼろぼろになって、大きな毛布で体を覆っている彼女は、天使のような微笑みを浮かべた。
「ええ。あなたの、クリョーンのおかげで、私達は勝った」
戦場の天使にほめられるとは、これ以上良い事はないだろうな。
そんな事を思いながら、俺は眠りに誘われ、心地よく当たる冷たい風に当たりながら、深い闇へと潜っていった。
◇ ◇ ◇
1964年12月25日付 王立新聞夕刊1面より抜粋
山賊壊滅 女首領、捕らえられる
今日午前9時、大統領官邸プレスルームで開かれたロワイエ大統領の記者会見において、陸軍及び特別攻撃小隊の急襲により、山賊の首領である容疑者を捕らえる事が出来た、と発表した。
発表によると、カールマニア王国陸軍第1・第2・第3師団及びカールマニア王国軍参謀本部直下部隊である特別攻撃小隊が参戦した。
午前7時丁度、山賊の総本山である中央高地内にある星形要塞に、攻撃を仕掛ける。
山賊側もこれに応戦。一方では陸軍と山賊が、一方では特別攻撃小隊と山賊側の能力者が闘った。
いまだ混乱しているため詳細は不明だが、特別攻撃小隊の隊員と容疑者が交戦を開始。死闘の末、特別攻撃小隊側が勝利。容疑者を捕らえる事に成功した。
容疑者の逮捕を受けて、山賊側も無条件降伏する。
大統領は、会見の中で「軍法裁判により公正かつ厳格に処罰する」と明言しており、一部では3000人以上に及ぶ山賊の処罰の結果が注目される。
なお、午前10時頃に開かれた記者会見で大統領報道官は「この作戦及び今までに渡り山賊と戦った英雄達に勲章を贈る」と明言している。




