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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
24/58

03-4 戦闘、そして崩壊

12月25日

午前7時27分

星形要塞、地下戦闘場


「広い、ですね」

「どうも」


 敬礼で見送られる首領とは反対に、まるで親の敵のような目付きでにらまれた俺。

 決闘場(?)に着いて、首領に続いて入った時、思わず呟いていた。


「この星形要塞の外周を含んだ地下全面を覆っている。つまりーー」


 コンコン、と何十本も地下から生えている木を叩きながら、首領は言葉を区切る。

 その先の言葉は、誰でも想像出来た。


「この木々の何割か潰れたら、地面は崩れる。貴様達を巻き込んで」

「……アンタの仲間は?」

「こんな事、彼らが入った時からわかってるわ」


 最善の勝つ方法は、木々をなるべく壊さないようにしながら、首領を倒すぐらいしかないな。

 早速、木々は燃やさないが人は燃やす程度の炎弾が出せるように、頭の中で考える。


「そして同時に。彼らは落ちた時の受け身は充分なほど備わっている」


 しかし、その思考は、首領の言葉と行動でもろくも崩れさる事となる。

 首領の言葉が終わった直後、一番首領に近かった半径でも2、3メートルありそうな大木が、なんの前兆もなんの音も出さず、消え去った。


「くそっ!」


 近距離で消えるような炎弾を放つが、その時にはすでに別の大木から真横に生やした木で横に飛びのいていた。

 首領は面白くなってきた、といったような笑みを浮かべながら、右手を俺につきだす。


 ドカッ!


 腰を落とした直後、真上を裂けながら太い枝が飛んでいき、壁にぶつかった時には、粉々に砕け散った。


「さすがレベル5」


 音速の攻撃の直後は超高速の移動。

 さっきのとは比べ物にならない速度で、首領が跳んでくる。左手を前に突きだしながら。

 左手の手のひらから現れたのは、やはり音速で拡大する木の輪だった。俺の所に着いた時には、顔だけ動かしても当たるぐらいまで拡大していた。


「強いな!」

「バアサンをなめんじゃないわよ!」


 対して俺は、即席の炎弾を手元で爆発させた。

 木は燃えるが、人間は燃えない程度の爆発を起こし、炎が俺の体を包むが、別に熱くはない。しかし、拡大していた木の輪や近くの大木は燃える。

 木の板で減速した首領は、すぐさま板を放り出すと、今度は両手を地面につける。

 地中から悪寒を感じて、膝をついた状態のまま跳んで、後ろに下がると、そこら辺にある大木と同じ程度の太さの木が生えてきた。


 そして。


 直後、その地面から生えてきた木は、わずか1秒にも満たない命を終わらした。

 首領から俺の顔への直線上に生えていたから、音速で飛んできた枝に貫かれ、粉砕されたからだ。


「にゃろ!」


 膝を曲げた状態で、俺は両手を前に出す。

 直後、俺の前をオレンジ色の炎が覆いつくした。


「やっぱり、手強いわね。漂流者は」

「知ってるのか?」

「もちろん。裏で知らない者はいないわよ」


 大木の残りと一緒に燃やした枝は、黒い炭になって、俺の手前でくすぶっていた。


「どんな理由で、この島国にやって来たのかはわからないけど、私の家族に牙を向く者は消すだけ」

「俺もだ!」


 今度は、両手から炎弾を飛ばす。

 対して、首領は前に走りはじめた。


「能力フェーズ2発動!」


 炎が裂ける。

 木の剣によって。


「まだアンタは持ってないわよね、フェーズを」


 俺は逆に持っていたのかよ、と言いたくなった。

 木は土に勝ち、土は水に勝ち、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝つ。

 それが、能力の相性とも言える物だった。

 まあ、出す前にやられたり、威力が弱かったらこっちが負けるが、同じかそれ以上の威力だと、そういうふうになる。

 しかし、それを誰かが残念がったのか、フェーズというのが、能力者のレベル5についた。

 フェーズ1が通常の状態、フェーズ2で相性が逆転して、フェーズ3でいかなる物にも勝てる。

 伝説の能力者である“ヒーロー”は、フェーズ3の領域まで足を踏み入れ、それを1分使った直後に死んだ。

 一方、フェーズ2の方は、死ぬことはないが、1分使うと筋肉が強制的に固まってしまいしばらく動けないようになる。つまり、1分以内に片付けないと、無防備になる訳だ。


「これで、終わりよ!」


 しかし、ものの5秒かそこらだと、筋肉が動けなくなるのは、ほんの5分ほどだ。

 だから、首領は突撃してきた。最強の矛と盾を両手に持ちながら。

 対して、俺は膝をついた状態から立ち上がっている所だった。いまからよけようと思っても、恐らく間に合わないかもしれない。

 振り上げられた剣を見ながら、冷静にそう結論づけて、わずかでもダメージを減らそうと、体を動かそうとした時だった。


 2つ、音が鳴り響いた。


 最初の音は、首領が振り上げた炎にも勝てる木の剣が、粉々に砕かれる音。

 もう1つの音は、入口から響いた銃声。


「やっぱり、怖いです」


 戦闘服に多量の血を飛び散らしながら、フィーガナは言った。

 何が、とは聞けなかった。


 左肩を音速の剣で貫かれ気絶した少女に、一体どうやって聞くというのか。


 放ったのは首領。

 サシのバトルを邪魔された事と、フィーガナがここに来るまでにやられただろう山賊の事からだろう。


「フィーガナ!!」


 首領の左腕を、右手で殴れたので、恐らく体のど真ん中を貫こうとした弾道を逸らした。

 しかし、彼女はケガを負う。


 俺のせいで、彼女はケガを負う。


 どこかで見た事のある彼女の寝顔を見ながら、首領の事を忘れていながら、俺の頭はそれを自覚した。

 理性は、消えた。

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