03-3 お誘い
飛びました
12月25日
午前7時17分
星形要塞司令官室
まだこの島で東西の民族が争っていた時建てられた要塞は、統一と安定の後、忘れ去られていた。
だから、だろう。私達がこの要塞を奪い、その事を軍が気づいた時には、すでに要塞はその本来の機能を取り戻していた。
その後、何回かの軍の攻撃があったが、全て防ぎきった。最近は東西の民族の民族主義者とやらが、テロ組織を作り上げたから、攻撃は減った。
今回の攻撃は、半年ぶりの攻撃で、家族たちはヤル気満々だった。
しかし、今。
時々、戦闘で聞いていた音とは違う音が混ざっている。
「報告! 軍は能力者を使っている模様!」
ノックもなしに入ってくる、という事は要塞の中に入られたんだろう。
「音でわかるわよ。内訳は?」
「スパイの言っていた5人、あの少年、そして少年と一緒にいた少女です」
「か弱き少女が戦闘を?」
「いえ。現場からの報告では、空気の渦の内側から狙撃されていると」
「なるほど。どこかの軍に所属している、か」
「いかがいたしますか?」
「目下の危険戦力を潰すだけ、よ。みんな来るんでしょ?」
「はい。全員、急行中だと」
「集まればこの中央高地の中では一番強いんだから、普通のやつらは簡単に潰せる。だから、そうね……まず、私の子供を捕らえた少年を連れてきて♪ 後は耐えれるでしょ?」
「はい」
「じゃあ、行ってくるわ」
スパイは、特別攻撃小隊の能力者の内容も教えてくれた。
個々の攻撃は確かに脅威だが、隊長以外、珍しいことにレベル5なのに、互いの能力を借りないと有効な攻撃できない。つまり、誰か1人が崩れれば、陣形が崩れる。
「さて」
南西の壁が大きく崩され、そこからわらわらと軍のやつら。その中で一番目立っているのが、竜巻のような茶色い渦だった。その中に、特別攻撃小隊とやらはいるのだろう。
けれど、私の能力にかかれば、そんな事は問題ない。
「あぶり出しましょっか♪」
パン! と、要塞の壁を叩く。
◇ ◇ ◇
「ッ! 散開!」
眼を閉じていた少尉が叫び、急に空気の壁が無くなる。同時に、ミーティングである危険性を教えられていた俺達は、空気の壁の外へと飛ぶ。
直後、空気の渦があった全面の地上が盛り上がる。土煙を壮大にあげながら、飛び出してきたのは大木だった。
「早いな」
赤い炎弾で大木を燃やしながら、小隊長が呟く。
その小隊長を襲ったのが、銃弾みたいな速度で要塞から飛んできた枝の束だった。
「ふん!」
対象制限を解除した状態で、でかい炎弾を飛ばし、枝の束を包み込むと、一本残らず炭となった。
早いな、と小隊長が言ったのは、後半になってから出てくると思われていた山賊の唯一のレベル5である首領が出てきた事だろう。
まあ、ミーティング通りじゃなく、俺達が要塞内部に入った事に原因があるかもしれないが。
「あらあら。炎の、しかもレベル5の能力者が2人とは分が悪いわね」
そして、声。
24時間も経たない内に再び聞いたその声は、最初のような真剣な声ではなく、この状況を楽しんでいる声だった。
。大陸を含めて最強と言われている木の能力者は、周りに50人ぐらいの能力者を伴って、黒いダイバースーツの上に羽織った赤いコートをはためかせながら、俺達の前に現れる。
俺達の周りに展開していた陸軍の人達も、山賊と戦いながら、首領の登場に神経をとがらせる。
「まずは、俺達をか?」
ようやく木を燃やし終えた小隊長が、右手の手のひらをに向けながら聞く。
「ええ。けど、そっちはレベル5が6人なのに、私1人は負けるかもしれないから、決闘を申し込むわ」
「決闘?」
「ええ。拒否したら、要塞を大木に変えるわ」
「ッ! ……相手は?」
「クリョーン・フラクレア君」
即答の答えに、フィーガナが狙撃銃をに向けるが、が右手を小さく振ると、外から枝が銃をつらぬく。
手でも足でもどこでも良い。体のどこかの部位が、地面についていれば発動する能力。その威力は如何に地面についている面積が大きく、如何に心臓に近いかによる、と前に会った軍の能力者の1人は言っていた。
故に帝国陸軍の中でも、木の能力者のレベル5は特に危険視されている。死んだふりをして、体を仰向けか俯せになったら、その能力者の半径1キロを覆いつくし、如何なる攻撃も通さない木の壁が出来上がってしまうからだ。それを攻撃に使われたら、たまったものではないだろう。
「わかった」
だから、の提案に承諾する。
フィーガナもにらんでくるが、俺の戦いの記録の付録を見て木の能力者のレベル5の怖さを知ってるからか、今度は何も言わなかった。
「場所は……そうだな、地下の戦闘場でどうだ? それなら、被害を受けるのは私だけで済む」
「わかった」
要塞の中に入っていくについていこうと、足を前に踏み出すと、左の袖を掴まれた感触。
フィーガナだった。振り向いた俺の眼をまっすぐ貫くように見つめて、強い声で1言。
「必ず帰ってきて」
対して、俺は自然に口角を上げて、自然に右手をフィーガナの頭に乗せていた。
あいつによくする頭なでをしながら、俺も強い声で言い返した。
「ああ。必ず、だ」
その言葉に、フィーガナは静かに笑い、俺の袖から手を放した。




