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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
23/58

03-3 お誘い

飛びました

12月25日

午前7時17分

星形要塞司令官室


 まだこの島で東西の民族が争っていた時建てられた要塞は、統一と安定の後、忘れ去られていた。

 だから、だろう。私達がこの要塞を奪い、その事を軍が気づいた時には、すでに要塞はその本来の機能を取り戻していた。

 その後、何回かの軍の攻撃があったが、全て防ぎきった。最近は東西の民族の民族主義者とやらが、テロ組織を作り上げたから、攻撃は減った。

 今回の攻撃は、半年ぶりの攻撃で、家族たちはヤル気満々だった。

 しかし、今。

 時々、戦闘で聞いていた音とは違う音が混ざっている。


「報告! 軍は能力者を使っている模様!」


 ノックもなしに入ってくる、という事は要塞の中に入られたんだろう。


「音でわかるわよ。内訳は?」

「スパイの言っていた5人、あの少年、そして少年と一緒にいた少女です」

「か弱き少女が戦闘を?」

「いえ。現場からの報告では、空気の渦の内側から狙撃されていると」

「なるほど。どこかの軍に所属している、か」

「いかがいたしますか?」

「目下の危険戦力を潰すだけ、よ。みんな来るんでしょ?」

「はい。全員、急行中だと」

「集まればこの中央高地の中では一番強いんだから、普通のやつらは簡単に潰せる。だから、そうね……まず、私の子供を捕らえた少年を連れてきて♪ 後は耐えれるでしょ?」

「はい」

「じゃあ、行ってくるわ」


 スパイは、特別攻撃小隊の能力者の内容も教えてくれた。

 個々の攻撃は確かに脅威だが、隊長以外、珍しいことにレベル5なのに、互いの能力を借りないと有効な攻撃できない。つまり、誰か1人が崩れれば、陣形が崩れる。


「さて」


 南西の壁が大きく崩され、そこからわらわらと軍のやつら。その中で一番目立っているのが、竜巻のような茶色い渦だった。その中に、特別攻撃小隊とやらはいるのだろう。

 けれど、私の能力にかかれば、そんな事は問題ない。


「あぶり出しましょっか♪」


 パン! と、要塞の壁を叩く。


◇ ◇ ◇ 


「ッ! 散開!」


 眼を閉じていた少尉が叫び、急に空気の壁が無くなる。同時に、ミーティングである危険性を教えられていた俺達は、空気の壁の外へと飛ぶ。

 直後、空気の渦があった全面の地上が盛り上がる。土煙を壮大にあげながら、飛び出してきたのは大木だった。


「早いな」


 赤い炎弾で大木を燃やしながら、小隊長が呟く。

 その小隊長を襲ったのが、銃弾みたいな速度で要塞から飛んできた枝の束だった。


「ふん!」


 対象制限を解除した状態で、でかい炎弾を飛ばし、枝の束を包み込むと、一本残らず炭となった。

 早いな、と小隊長が言ったのは、後半になってから出てくると思われていた山賊の唯一のレベル5である首領が出てきた事だろう。

 まあ、ミーティング通りじゃなく、俺達が要塞内部に入った事に原因があるかもしれないが。


「あらあら。炎の、しかもレベル5の能力者が2人とは分が悪いわね」


 そして、声。

 24時間も経たない内に再び聞いたその声は、最初のような真剣な声ではなく、この状況を楽しんでいる声だった。

 。大陸を含めて最強と言われている木の能力者は、周りに50人ぐらいの能力者を伴って、黒いダイバースーツの上に羽織った赤いコートをはためかせながら、俺達の前に現れる。

 俺達の周りに展開していた陸軍の人達も、山賊と戦いながら、首領の登場に神経をとがらせる。


「まずは、俺達をか?」


 ようやく木を燃やし終えた小隊長が、右手の手のひらをに向けながら聞く。


「ええ。けど、そっちはレベル5が6人なのに、私1人は負けるかもしれないから、決闘を申し込むわ」

「決闘?」

「ええ。拒否したら、要塞を大木に変えるわ」

「ッ! ……相手は?」

「クリョーン・フラクレア君」


 即答の答えに、フィーガナが狙撃銃をに向けるが、が右手を小さく振ると、外から枝が銃をつらぬく。

 手でも足でもどこでも良い。体のどこかの部位が、地面についていれば発動する能力。その威力は如何いかに地面についている面積が大きく、如何に心臓に近いかによる、と前に会った軍の能力者の1人は言っていた。

 故に帝国陸軍の中でも、木の能力者のレベル5は特に危険視されている。死んだふりをして、体を仰向けか俯せになったら、その能力者の半径1キロを覆いつくし、如何なる攻撃も通さない木の壁が出来上がってしまうからだ。それを攻撃に使われたら、たまったものではないだろう。


「わかった」


 だから、の提案に承諾する。

 フィーガナもにらんでくるが、俺の戦いの記録の付録を見て木の能力者のレベル5の怖さを知ってるからか、今度は何も言わなかった。


「場所は……そうだな、地下の戦闘場でどうだ? それなら、被害を受けるのは私だけで済む」

「わかった」


 要塞の中に入っていくについていこうと、足を前に踏み出すと、左の袖を掴まれた感触。

 フィーガナだった。振り向いた俺の眼をまっすぐ貫くように見つめて、強い声で1言。


「必ず帰ってきて」


 対して、俺は自然に口角を上げて、自然に右手をフィーガナの頭に乗せていた。

 あいつによくする頭なでをしながら、俺も強い声で言い返した。


「ああ。必ず、だ」


 その言葉に、フィーガナは静かに笑い、俺の袖から手を放した。

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