03-2 3度目の戦い
12月27日
午前6時55分
カールマニア王国 中央高地山中
山賊本拠地正面入口から1キロ
「こちら。特別攻撃隊戦闘準備完了」
かたわらに立つカールマニア王国陸軍特別攻撃小隊隊長アルフェント・セラリア大尉が、眼前にある山賊の本拠地をにらみながら、無線で本部に連絡する。
一昨日の夜に、アルフェンバート陸軍基地に連れていかれて、カールマニア王国内の能力者7人から構成されている特別攻撃小隊の皆さんと会った時から変わらない、何かを恨んでいる目付きだった。
ここに来て、一層黙りこみ、一層目付きが鋭くなったので、十中八九山賊に原因があるだろうという事はわかるが、詳しい事はわからない。
「……了解しました……はい。細心の注意を払います……勝利は我々の手に」
大陸の両軍でも戦闘が始まる前に言われている言葉を無線に吹き込み、無線機を直しながら、俺達の方に振り向く。
大尉と俺を含んで全隊員5人+2人の内、6人がレベル5、そして列車を襲撃してきた組織を撃退したサイボーグというメンバーで構成されている特別攻撃小隊は、8年前に創設されて以来、はじめての実戦をむかえようとしていた。
「先ほど、司令部から予定時刻通りの襲撃が決まったと通告があった。よって、我々はこれから4分47秒後、はじめての実戦を決行する事となる。
大陸から来たクリョーン少尉とフィーガナ少尉を急きょ迎えてと想定とは違う状況となっているが、私はこの程度では動揺しない最高の部隊だと自負している。
さあ、この作戦を成功させ、我々を邪険にしている上層部の一部の鼻っ面をあかしてやろう」
「「「「「了解!」」」」」
「そして、2人。我が国の事にも関わらず、この作戦に参加してくれて感謝している。健闘を」
「「ありがとうございます」」
いるかどうかはわからないが一応持ってきていた拳銃の安全装置を外す。
ジャピード語で大尉から直接教えられた作戦を頭の中で思い出しながら、始まりの時を待つ。
午前7時00分00秒
星形要塞の出っ張りの1つに放たれた炎弾から、作戦は始まった。
◇ ◇ ◇
12月27日
午前7時00分
カールマニア王国 中央高地 とある小さな盆地
マーレ村村役場内臨時作戦司令部
「クリョーン少尉、炎弾攻撃実行」
「観測部隊、要塞の壁の損壊を確認」
「第1、第2小隊移動開始」
「山賊、要塞内部から出現。戦闘開始」
「特別攻撃小隊、迎撃開始。山賊と交戦」
「第3小隊、交戦地域の反対側の壁の登板開始。敵には気付かれていない模様」
首都にあるような完全な基地ではないので、続々と現場から入ってくる情報を司令官であるルイ・アルファ大将の耳に伝える声が漏れてきていた。
私とユーリイは何度かお姉ちゃんに連れていかれて、クリョーンの戦闘の様子を聞かされているので慣れているけど、アラクネは服が破れそうな勢いで、カールマニア王国政府から参加の『お礼』としてもらったこの国1のブランドのシャツを握りしめていた。
ユーリイに、彼女を落ち着かせて、と言った後、臨時司令部の横にある村長室のソファーから立ち上がる。
「どこに?」
「お隣に。やっぱり、生で見たい」
「心配なのか?」
「というより、気が気ではないはずのお姉ちゃんに、彼の武勇伝を伝えるために」
「ああ、なるほど。……危なくなったら教えて」
「んっ。珍しいわね。ユーリイが他の人を心配するなんて」
「……興味を持っただけ」
「そうしとくわ」
村役場の廊下は、12月の天然の陽気に包まれていて、夏が近づいているのがわかった。
“彼”と今年の夏泳げるかはまだわからないけど、夏が近づいているのは心地よかった。
そんな思いになれるほど、クリョーンを信頼している事に、やっぱりお姉ちゃんの影響かなとまた思う。
◇ ◇ ◇
「最高の布陣ね」
左手でカールマニア王国陸軍から支給された狙撃銃を連続で撃ち、今度は右手で腕から銃弾を放つ。その間に、片手で狙撃銃の弾倉を取りかえる。
そんな事を平然としながら、フィーガナは俺に話しかける。
「そうだな」
俺も銃やナイフといった金属を繋ぎ止める所は燃えるが、服や皮膚は燃えないように炎を操りながら答える。
中央で眼を閉じながら移動しているのは、空気の能力者であるセラリア・アーヴィア中尉。空気を操り、特別攻撃小隊を囲むように“壁”を展開している。外からの銃撃や砲撃を防ぐ一方で、内側からの攻撃は全て通す。目標については眼球にある赤外線装置で外を把握しているフィーガナが教えている。
能力に集中しているため眼を閉じているセラリア中尉の両手を持って案内しているのは木の能力者であるマイク・ラーフェア少尉とリーア・アルフェナ少尉。触れた物を木に変える事ができるが、セラリア中尉をサポートするため、移動はできない。
「次」
「「どうも」」
それを補っているのが、金の能力者であるマーフィー・ジャア少尉。その辺に落ちている金属を全て目的地まで引き寄せる事ができるため、俺が落とした金属を2人に渡している。この際、ベルトがある事は気にしないようにしないと。
セラリア大尉は? というと「細かい技は苦手だから」要塞を崩している。砲兵の皆さんが手持ちぶさたにしている原因を作っている、とも言えるような気がする。
攻撃開始から13分後、本来は引き付け役だった特別攻撃小隊は、第1・第2小隊と共に要塞の中に入る。




