00-3 鬼ごっこの結果
反らしたと言っても、人間がゴールピの最強の攻撃を防いだ。
人間と争いはじめて、最強の攻撃を出す事自体珍しい事ですし、これまでの人間ならばむなしい叫び声を上げて、消滅していきました。
ですから、その出来事は空前の事であり、恐らく絶後になる事でもあります。
「ナニモノカハシラナイ」
その歴史に残る事をしでかした少年は、嵐をもろともせず翼をはためかせるクレステッドゴールピをにらみながら、今まで聞いたことのない言葉で言いました。
ゆっくりと立ち上がった少年は、絶妙のバランスを取りながら宣言しました。
「ダガナ、ナンモイウコトナシニコウゲキスルトイウコトハ、シデカシテハイケナイコトダ」
少年はにらみながら、クレステッドゴールピはにらみ返しながら、私は呆然としながら、何分か固まっていました。
永遠に続くように思った膠着は、一発の砲撃によって簡単に崩されました。
「ッ!」
いきなり、ピンポイント直撃した砲撃で、一瞬でバラバラに飛び散ったボートから、少年が投げ出されます。
動く時間もなく、少年は白波をたてる荒海の中に消えていきました。直後、砲撃以上の波しぶきをたてて、何かが海の中に入りました。
「おい!」
数秒か経った後、クレステッドゴールピは海から飛び出しながら、人間になりました。私達の特徴として、雨水などの真水は大丈夫ですが、塩水に浸かると翼が役に立たなくなるという事があります。
クレステッドゴールピの叫び声で、やるべき事を察知した私は、20メートルぐらい飛び上がった彼の下にまわり、彼を翼に乗せます。
数秒で荒れ狂う海から少年を救出した彼は、真っ裸で無言のまま少年を押さえつけました。
後でそのクレステッドゴールピから教えられた事ですが、私達が騒いでいた所は海峡の国境線に近い所にあり、ヨーロイド王国海上警備隊が、エンジンもつけずに接近するボートを見つけたため、警戒していた時に、ボートからオレンジ色の炎弾があがり、砲撃したとの事でした。私達の姿や攻撃はレーダーでは察知されないですから、怪しかったんでしょうね。
それはともかくとして、私達は海に落ちて気絶した少年を、ジャピード帝国の海岸に置いて、私が爆発を起こして周囲を騒がせた後、帰路につきました。
◇ ◇ ◇
「ーー以上が、6年前にあった事です。名前については新聞で知って、ちょっと接触もしました」
長い話を終えたゴールピの声が山に響いて、静けさが訪れました。
クリョーンとゴールピは私達の反応を待っていましたが、私達は初めて知る話に驚いて、言葉が出ませんでした。
「ところで皆さん、時間は大丈夫ですか?」
「「「…………あっ」」」
そして、私達は走り出しました。
この後は、後でゴールピと会ったクリョーンから聞いた事です。
「6年、か」
山道に少しだけ突き出た岩に、灰色の肌と服を着た少年がいました。
「俺達にとっては短くても、彼らにとっては充分長い時間だな」
「はい、旦那様。それと、ありがとうございます」
「何がだ?」
「痴話喧嘩なのに押さえてくださいまして」
「ふん。血を流さないと人間になれないゴールピにとっては、喧嘩は重要な事さ」
会った時は、すでに妊娠17ヶ月。
まだ、妊娠期間の3分の1だが2年前に第一子を産んでいた彼らにとっては、種族史上初のハーフ誕生よりかは、まだ余裕だったらしいです。
そんなおのろけ話は置いといて、私達は太陽の光が降り注ぐのを感じながら、急いで走っていました。
そして、走っている中で、私はクリョーンの後ろ姿を見ながら、そしてゴールピに歩いていったクリョーンの背中を思い出しながら自覚しました。
結局、気持ちは伝えられず、夏休みに私の事がヨーロイド王国に気づかれ、警戒されたので、その月の内に村を去りましたが。
そして、私に、サークラ女帝陛下及びその護衛に就くと見られるクリョーンを監視せよ、という命令が下った時、内心ではガッツポーズをしました。
どんな形であれ、クリョーンと一緒の時を過ごせる、という事実が目の前に広がったのですから。
そして、カールマニア王国に不時着(?)するという事までは想像できませんでしたが、クリョーンと過ごせる時間が更に長くなった事に喜びました。
村から駅に向かう車の中で、クリョーンの叫び声と慌てる声が聞こえた時は思わず可愛いと思いました。
そして、この列車では、クリョーンの隣に座る事が出来ました。
だから、油断していました。
大陸にいた時に得たカールマニア王国の一般知識として、山賊以上に根深い悪が、この美しい島国にはびこっているのを忘れていました。
その結果が、クリョーンを傷つけました。
「殺す」
だから、私はつぐないます。
攻撃してきたクソ野郎どもを殺します。




