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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
13/58

02-2 望まない途中経過

 村を襲撃してきた山賊20人が捕まってから1時間後、山賊の首領・アドリーヌ=シャンクレア直筆で「午前9時に高台の向かいに現れる」と手紙が来た。

 首領が女性だということに驚いたが、アラクネ曰く「前の代の首領の娘らしいです。実績も結構あるらしいです。ちなみに、女性兵士はカールマニア王国軍では一般的ですよ」らしい。男しかいない大陸の軍に比べれば、まだ臭くは無いのだろう。


「貴方が私の家族を捕らえた少年ですね」


 V字谷を挟み、拡声器を持ったおばさんは話す。

 女帝陛下から通訳を受けた俺は、対岸でも分かるように大きくうなずく。ついでに、右手から炎の能力を出す。

 一瞬、冷たい笑みを浮かべたおばさんは、それだけで俺への質問を終わらし、俺の横に立っている村長と話を始める。

 互いの銃口がのぞきあうという状況の中、村側が山賊を部隊長を除いた19人を放す代わりに、山賊側は今まで捕らえた周辺の村民38人を解放するという条件で交渉は決まり、川にかかる小さな橋で人質交換は行われた。

 1時間にわたる緊張が終わると、山賊はそそくさと山の中へ消えていった。男衆の歓声を後ろに浴びながら。

 それから3分もせずに、事前にこの結末を承知していた中央政府の役人が、高台を登ってきた。


「終わりましたか?」

「はい。この村の村長のフレデリック・ナルクアです」

「内務省調査委員会委員長のアシル・カーラです。今回の件の調査に関する全権を委任されました。ーーあなたが、クリョーン・フラクレアさんですか?」

「はい。ジャピード帝国空軍少尉クリョーン・フラクレアであります」


 どうせ、大陸と連絡が通じればばれるでしょうけど、その間は身元不明より良いでしょ? という女帝陛下の意見の下、身元を証明する物は全て“黒い帯”に突っ込んだ時に消えてしまったと言って、だます事に成功しているから、アシルさんも疑っているような顔はせずに、眼鏡の奥から辺りを見回す。


「不運かつ幸運な一行の方々は?」

「こちらの3人です」


 俺の後ろで状況を見守っていたユーリイ、女帝陛下、フィーガナを紹介する。といっても、女帝陛下が通訳してくれているのだが。

 ちなみに、女帝陛下がカールマニア語を話せるのは、将来カールマニア王国軍に行くために習っている、と言っている。


「不運にも“黒い帯”に突っ込んでしまうという事がありながら、無事にこの王国に着陸できた幸運とこの村を守れた幸運、天空の御加護と共にありがたく思います」


 全員の紹介を終えた後、アシルさんはそう言って、天空に向けて十字を切る。それに従って、俺達や村長も同じ動作をする。


「さて、皆さんの処遇なのですが」


 天空への感謝を終えた後、柔らかい微笑みを浮かべながら、いきなりアシルさんは一番気になっていた事を話始める。


「中央政府との討議の結果、まず首都のアルフェンバートにてロワイエ・ハリイア大統領直々に、感謝状が皆さま方に贈呈されます」


 おおっ、村の人がざわめく一方で、俺達の内心は全員「えっ」と思っていた。同時に「ヤバイ事になった」とも。

 これで、もしジャピード帝国空軍にはそんな4人などいない、という事がばれればどうなるかという心配からで、しかも帝国側からにしても『山賊を捕まえる』という危険きわまりない事を女帝陛下がしたという事を知れば、顔がひきつるだろう。

 今回の感謝状の授与は、そんな未来を想像させるのに十分だったが、さすがに好意を無駄にする事は出来ず、そのままとんとん話に進んでいった。


◇ ◇ ◇ 


「一躍、ヒーローになってしまいましたね」


 アシルさんを見送った後、アラクネがどうしようかと自然に全員で考えている俺達に話しかけてきた。

 それに答えるのは、やっぱり女帝陛下で、少しイヤそうな表情を浮かべて一言。


「望んでいない結果だよ」

「えっ?」

「嬉しいのは嬉しいけど、ね」


 アラクネは首をかしげて、俺達、特にユーリイをじっくりと見る。

 そして、アラクネが全員考え込むような表情をしている理由を質問しようとした直後、先手を打つように女帝陛下が提案した。


「アラクネ。一緒にアルフェンバートに来てくれるか?」

「えっ? 良いんですか?」

「良いだろ?」


 目的を理解している俺とフィーガナはすぐにうなずいて、一瞬更に考えるような表情を浮かべたユーリイも女帝陛下の提案だという事もあるが、首を縦に振った。

 ユーリイの反応を見た途端に、アラクネは水を得た魚のように顔を輝かせて、一番近くにいたユーリイの腕に抱きついた。


「ひゃう! ご、ごめんなひゃい!」


 そして、すぐにユーリイの腕から離れるアラクネだったが、舌は噛んでいて、挙げ句に石に引っ掛かって、後ろに倒れそうになる。

 が、上手くユーリイがアラクネの背中に腕を回して、彼女を支える。丁度、お姫様だっこの一歩手前のような体勢になり、アラクネの顔は更に赤くなった。


「あらあら、アラクネはドジね~。ユーリイ、彼女を頼むわよ」

「……わかった」


 元凶は、笑いながら、更に種をばらまいて、アラクネの家への道を歩き始める。

 その後ろでフィーガナから「人間は不思議な生物ですね」と言われたが、不思議、というより破天荒なのは女帝陛下だけだよと返す。

 フィーガナは、長い金色の髮をはためかせながら我が道を行く女帝陛下を見て、クスリと笑った。

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