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なにかしら  作者: コーレア
上 忙しい旅の章
12/58

02-1 ある1日の終わりと始まり

 これがレベル5なのね、と女帝陛下は言う。

 対して、訓練の結果です、と俺は言い返した。


「ありがとう」


 カールマニア語を即興で習っていても、この言語は分かる。それを言った村長に対して、俺は「どういたしまして」と言い返して、差し出された手を握る。

 村を襲撃してきた山賊は、高台の建物に移送され、村の男衆が彼らと建物の周りを監視している。

 時間は既に12時を回っている。だから、村の子供達は眠っているが、まだ俺達4人は起きなければならない。

 村は、既に事の結末を中央政府に話していて、村の近くのマールセストンから中央政府の人が来る事になっている。


「来るのは明日の朝だから、ひとまずは寝てもらっても良い」

「どこで寝たら良いですか?」

「その問題があったな」

「そ、それじゃあ私の家はどうですか?」


 アラクネだった。

 少しほっぺが赤い彼女の提案に、村長は即諾で了承して、今は出稼ぎなどで両親や姉2人は首都に行っているという彼女の家に行くことになる。


「お休みなさい」


 彼女の家に入ってからわずか10分後。

 ユーリイを除く4人が、玄関のすぐ前にある居間にそれぞれ自分の布団をひいて、アラクネが決めた順番で寝る。ドア側から俺、フィーガナ、女帝陛下、アラクネ、そして窓側のソファーにユーリイの順番だ。

 さすがに4人で寝ると、お互いの布団が合わさるほど狭いが、文句は言えない。ユーリイは、自ら進んでだが、ソファーで寝ているし。

 真ん中で寝る女帝陛下が、紐を引いて、電球を消すと、すぐに寝息が聞こえてきた。

 そういえば、女帝陛下は俺達の事をどうやって紹介したんだろう、と一瞬頭に疑問がよぎったが、深く考える暇もなく、俺は暗闇に落ちていった。


◇ ◇ ◇ 


 そもそもの発端は、大陸で起きていた争いだった。

 10年前、つまりジャピード帝国とヨーロイド王国が統一される2年前、大陸で起きていた争いは最盛期を迎えていた。

 様々な勢力が群雄割拠して、同盟を結び大陸を分割しようとする勢力、一方で大陸全土を統一しようとする勢力、当時存在していた5つの国家のどれかを倒して周囲を攻めようとする勢力と、カオスな状態になっていた。

 だから、カールマニア王国軍の間では、この事態に乗じて、大陸のどれかの勢力と手をくみ、大陸を支配しようとする勢力が生まれていた。

 しかし、大陸の争いに介入する事は、カールマニア王国をもカオスに飲み込む悪魔に攻撃する事になる、として王室や政府は反対していた。


「この国の勃興を邪魔する勢力は壊す」


 結果、当時の国防大臣の号令と共に、王宮や首相官邸などは襲われた。そして、国王・首相は殺され、他の要人も殺されるか路頭を迷う事となる。

 そして、国防大臣を長とする軍事政権が成立して、大陸への侵攻が実現するかという段階になった時だった。


「我らが統一の象徴たる王室を殺した屑に制裁を」


 その号令と共に、国民が動いた。

 ほぼ全ての軍の基地と国防大臣達がいる首相官邸に、国民が焼き討ちをした。逃げようとした国防大臣達は、捕らえられ、後に軍事政権によって焼き払われた王宮の前で裁判なしの公開処刑が行われ、幹部以上の家族は、私刑にあうか、大陸への永久追放となる。

 しかし、さすがに軍に所属していた事もあって、クーデターに賛同した兵士達全員を捕らえる事は出来なかった。

 結果、彼らは中央高地などの山々に身を隠して、山賊となった。


「山賊に彼らがなったのはそんな経緯があったからなんです。だから、武器は潤沢ですし、大砲さえも持っています」

「けど、10年も経てば、武器も古くなるんじゃ?」

「武器商人や彼らに賛同している一部の兵士が、兵器を渡したり、修理したりしているらしいです」

「なるほど」


 朝、スクランブルエッグを食べながら、女帝陛下とアラクネはしゃべっていた。

 俺達3人は、女帝陛下が訳しているのを聞きながら、スクランブルエッグを頬張っている。


「ところでアラクネ。1つ質問がある」

「?」

「なぜ君の布団・・・・にユーリイがいたんだ?」


 アラクネが、飲もうとしていた牛乳を吹き掛けて、それを抑えたため咳き込む。

 女帝陛下が背中を叩いて、元に戻った時でも、まだ顔は赤かった。


「サークラが起きる前に私達は起きてましたよね?」

「隣の布団で、話し声や布団が動く音が聞こえたら、誰もが起きるよ。彼が好きなのかい?」


 更に、アラクネの顔が赤くなる。一体、女帝陛下は何を質問しているのだろうか(質問の内容は後で聞くことが出来た)。


「……好きです。一目惚れしました」

「ほう。やっと、ユーリイにも出来たか」

「……あなたには敵いません」

「んっ? どういう意味だ?」

「鈍感ですね」

「?」


 女帝陛下が首をかしげる。


「言わないでくださいね」

「もちろん。私は応援するよ」

「ありがとうございます」


 そして、アラクネは頭を下げる。

 ちなみに、後で聞いた時に、私達はジャピード帝国空軍の実習生で間違えて“黒い帯”に入ってしまったどんくさい者達だ、と説明したと俺の質問に、女帝陛下は答えてくれた。


 午前9時、事前に通告があった通りに、山賊の首領が谷の向こう側にまで降りてきた。

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