01-11 騒動の始末
もう一話出来たので投稿します。なぜか筆(?)が進みます。
10年前にこの国で起きた騒乱の後、彼らは生まれたんです。
高台から、鉄筋コンクリート造りの建物へ向けて高台の石造りの建物から避難しようと坂を下っている時に、アラクネは口を開いた。
「彼ら?」
「はい。私達は『山賊』と呼んでいるのですが、元々は軍隊に所属していた人々が集まった集団です」
「軍隊が? 10年前に何があったんだ?」
「話せばーー」
長くなります、と恐らくアラクネが言おうとした矢先だった。
遠雷のようなにぶい音が響いて、中央広場から土煙が上がる。
「なっ!?」
「榴弾砲か!」
軍隊の訓練も彼は受けている、と女帝陛下が言っていたユーリイが止まり、つられて後ろを小走りで降りていた俺達も止まる。
足の遅い大人から、という事で村長や議員の老人などが降りた後、俺達は一番最後に降りていて、後ろはいない。
20代から40代の男衆は、早くも高台の南側のV字谷の先に広がる山々に潜んでいるであろう山賊に相手しようと、俺達とすれ違いながら高台をかけ上っていたが、彼らもその轟音に立ち止まる。
「大砲は初めてなの!?」
「は、はい! 持っているとは聞いてたんですが、まさか使ってくるなんて」
という事は、榴弾砲に対する策は無しか。
V字谷の幅は1キロと広いが、その分銃などの命中率は低くなる。恐らく、それを利用してこの村は高台から抗戦していたのだろうが、点の攻撃では面での攻撃が得意な大砲には関係の無い話だ。
だから、山賊が大砲を使って威嚇しながら接近されると、反撃しようにも出来ない事になる。つまり、この村はやられる。
「サークラ」
「何?」
「動いてもいいか?」
「……誰も殺さないようにね」
「ん」
さて、久し振りに動くか。
「能力発動」
右手から、業火が上がった。
◇ ◇ ◇
海岸沿いに広がる家々、蛇行する川によって山々と離された高台、長さ80メートルほどにも関わらずV字谷を作ったりと急な川、そして中央高地に向けて広がる山々と地形が広がるホクーポート村。
今、他の村に比べたら裕福で、ある村では3年に1人の割合で出る首都の大学入学が8年連続で出ているその村に、山賊が現れている。
その山賊の何人かは、榴弾砲を使っている事から、勝利を確信していたらしい。何回かの戦いで、ホクーポート村の防衛体制を知り尽くした彼らにしてみれば、当たり前の確信と言えるだろう。
だから、対岸の高台に村の男衆が上がってこないのを見た部隊長は、部下の20人の男達に前進を命じた。
そして、男達は最近の小雨で勢いが減った川を渡ろうと、カノン砲の支援砲火の下、谷を下ろうとする。
その矢先だった。
カノン砲の弾道を沿うように谷を越えた火の帯が、カノン砲そのものを包んだ。
射手は巻き込まず、オレンジ色の炎で暗闇を照らしながら、カノン砲は見るまに溶けていく。溶けきるまで、10秒ともかからなかった。
突然の出来事に固まる山賊達に次に襲ってきたのは、今度は細くその分早い炎の帯だった。
「わああああ!」
舐める。
オレンジ色の炎は、20人全員が持っていた銃の先を舐めただけだった。にも関わらず、全ての銃が溶けた。
そして、その直後、炎の橋に乗った少年が殺気を周囲にばらまきながらやって来て、パニックが始まる。
「殺さない、と言われているから殺さない」
ほとんどが聞いていない冷たいつぶやきを漏らした後、クリョーンは両手を広げた。
何か来る事を感じた部隊長が、腰から拳銃を取り出す。しかし、銃弾は放ってなかった。
「よっこいしょ、と」
クリョーンが体を回す。
それだけで、服さえ焼けないオレンジ色の炎に20人の男達は巻き込まれて、そのまま高台に飛ばされる。同じ色の炎のクッション付きという、バカみたいなオプション付きで。
「……降伏する」
カノン砲が止み、上がってきた村の男衆と、炎の橋を再びわたってきたクリョーンに挟まれた部隊長達は、すぐさま降伏の道を選んだ。
長年にわたる戦闘の中で、初めて死者や負傷者を出さなかった戦いは、こうして終わった。




