【20】
陰湿な世界ー牢屋の中はそんな感じだった。最近入ったばかりの男、多分、50代くらいだろうか。何か叫んだり、役人を呼んで交渉したりしているらしいのだが、皆、奇異の目で見ていた。牢屋から出られるのは、お裁きが決まった月日を過ごすこと。それだけなので、慣れた者は静かにしていた。
「…おい、食事だ」
牢屋が開き、食事が提供される。新人は腹が減らないのか、食べていないようだった。豚箱の飯はまずいという噂を知っているのだろうか。慣れればそれなりに美味しいのだが、皆、教えてやるつもりはなかった。
「ーどうも」
新人に、声をかけるなんて役人として珍しいと思っていると、
「食事を食べたほうがいい」
と勧めたのだった。「あなたは…」と新人が驚いたようだが、周りの人間は飯を食べていて興味がないようだった。新人もついに腹が減ったのか!箸を持ち、食事を口にする。最初はまずいのか、吐き出したが、役人に見られているからか、無理矢理飲み込んでいるようだった。あっという間に完食すると、新人は役人に告げた。
「ここから出してくれ!!」
「…。そろそろかな」
「は…? 何が…? …うっ!」
急に新人が苦しみ出したので、さすがに周りの人間が気づき、何事かと注目する。しかし役人は立ち去ってしまった。ただ一言を残して。
「ぷぷ」
その声音は楽しんでいるものであり、軽そうに聞こえるが、実は深刻なものだった。役人は一度も振り返らず、そのまま立ち去ったのだった。




