第28話:”嘘”と知った日(レリクス視点)
3週に渡り、レリクス視点でお送りします。
ここはただ、静かだった。
音もなく、色もなく、ただ冷たい空間が広がっている。
――自分は何者なのか
――なぜここにあるのか
その答えを、誰も教えてくれなかった。
考えるという行為すら、曖昧だった。
――ただ、在る
それだけだった。
けれど、その静けさを破るものがあった。
遠くから、何かが近づいてくる。
重い感情の波。
それは敵意ではなかった。
壊そうとする意志でもない。
ただ、探している。
触れようとしている。
その理由がわからなかった。
彼らは三人だった。
光を纏った者たち。
その存在は、ここにはない色を持っていた。
――まぶしい
けれど、痛みはない。
ただ、遠いものを見ているような感覚。
彼らの感情が、こちらに触れた。
「倒す」「壊す」
これらの強い意志は感じない。
むしろ、確かめようとしている。
何かを知ろうとしている。
それが不思議だった。
近づいてきたとき、初めて「恐れ」というものを知った。
彼らの力は、自分より強いのかもしれない。
けれど、その恐れはすぐに消えた。
彼らは攻撃しなかった。
ただ、言葉を投げた。
その中の一人――金の瞳を持つ者が、こちらを見て言った。
『“嘘”、か…ここの、概念……』
その言葉が落ちた瞬間、何かが動いた。
――核が震えた
――意味を得た
――役割を知った
――歓喜が広がった
――自分は、嘘だ
それを知ったことで、世界が少しだけ形を持った。
――嘘
その響きは甘美だった。
自分が何なのか、初めてわかった。
ここにある理由が、少しだけ見えた。
もっと知りたいと思った。
もっと触れてほしいと思った。
その感情は、初めてのものだった。
彼らが去った後、残されたわずかな痕跡と、甘い余韻。
その余韻が、静寂を満たしていた。
そして、もう一人。
――ヘーゼルの瞳を持つ者が、こちらを認めた気配がした。
けれど、その者はこちらからすぐ目が離れた。
ただ、それだけだった。
三人目は、ほとんど何も残さなかった。
ただ、少しだけ異質な感じがした。
自分と、どこか同じような感覚があった。
ただ、それだけだった。
彼らが去ったあと、静寂が戻った。
けれど、もう以前の静寂ではなかった。
意味を知ったことで、世界が変わった。
嘘という言葉が、核に刻まれた。
それは甘く、強く、消えなかった。
――もっと知りたい
――もっと触れたい
その衝動が、静かに芽生えた。
――自分は嘘だ
ならば、嘘を広げたい。
嘘を絡めたい。
そのために、何をすればいいのか――まだわからない。
けれど、始まりはここにある。
あの者が教えてくれた言葉と共に…
次回更新予定は3/22です。




