第22話:記憶の断片の縁
精神的に不安定すぎるユウヒが心配です(ぇ)
「落ち着いたか?」
ホウジュンの投げかけに、ああ。と答えたユウヒは、顔をあげると、リッカににこりと微笑む。
「悪いな…」
その笑みが何だか弱々しくて戸惑いながらもリッカは首を振る。
この人が今こんなに苦しんでいる一端を、自分は担っていると思っているのだ。
そんな思考を読んだように、ユウヒとホウジュンは同時に口を開いた。
「「リッカのせいじゃない」」
思わずハモった2人の声に、一瞬呆け、全員笑い出す。そして、ユウヒが改めて言った。
「本当に、リッカのせいじゃないよ。あれは、俺の責任だから…」
「でもっ…」
「こいつの、言う通りだ。慰めてるとかじゃなくて…本当に、全面的に、こいつが悪い」
コツンと、ホウジュンはユウヒの頭を小突く。
恨みがましい視線を送るが、ユウヒは反論しない。
「それに…もし、こいつ以外にこうなった原因があるなら、それは俺だ」
「は?」
ユウヒも初耳のようで、驚いてホウジュンを見た。
彼は、だってそうだろう?と続ける。
「本当は俺が行くはずだったんだ。こうなってたのは俺だったかもしれない」
「いやそれ……ん?待てよ?それって…本当に俺の凡ミスじゃないか?」
「自分で認めておいて、何を今更言ってんだ?お前」
2人の会話に意図がわからないリッカはきょとんとするが、まぁ色々あるんだよ。とユウヒははぐらかした。
「俺としては…リッカが気に病まないでくれると、嬉しい」
徐々にでいいから。とユウヒは優しく言い、ホウジュンも頷いた。
リッカは一度目を閉じ、大きく深呼吸してから目を開けると、はい。と笑みを浮かべた。
よし。と話を区切ったユウヒは、改めて映像が映っている画面に視線を向ける。
「改めて……さっきのを見て、何か気づいたこととか、思い出したことって、ないか?」
「…考えたんですけど、これ…私の記憶より、鮮明なんです…感心しちゃって、これが全てって思っちゃう…」
まぁ、そうだろうな。とホウジュンは頷き、ユウヒは苦笑を零したが、想定内のような反応ではあった。
そして、画面に手をやると、横にスワイプする。コマ送りのように映像が動き、とある箇所で、ユウヒの手が止まった。
「なら、俺からの質問。……この場面、よく見て、よく聞いてほしい」
言うや否や、ユウヒは画面をタップする。映し出された映像は、映像が終わる少し前だった。
『命令だ、シン!』
映像内のユウヒの声が響き、三人は出口に向かって走っていく。
しかし、不意に映像内のリッカの足が止まった瞬間があった。
『……××、は……?』
『だめだ!リッカ!止まるな!!』
リッカの声は不鮮明で、ユウヒの声だけが響く。
そして、映像はすぐに最後まで流れ終わった。
「私…何か言って、ますね」
「……少し、音域を弄る、から…待ってくれ…」
居心地が悪そうに、目元を抑えたり体を小刻みに動かしたりながらも、ユウヒは手元で操作を始めた。
ピンチアウトして小さな画面をもう一つ立ち上げ、スワイプや回すような動作を何度か行うと、画面自体を映像のパネルへと飛ばす。
二つが触れ合うと、映像が映る大きな画面のほうが少し揺れ、小さな画面は吸い込まれたように消えた。
「これで、調整は…できたはずだ……動かすぞ?」
軽く画面をスワイプして先ほどのところまで戻したユウヒは、映像を再度流した。
『××だ、シン!』
先ほどしっかり聞こえていた映像内のユウヒの声は、少し高く、不鮮明になっていた。
そして、リッカの声が、しっかりと聞こえる。
『……あれ、は……?』
『×め×!リッカ!××る×!!』
あれは。と、何かを見止めてるような発言が響いた。
「ここで、リッカは確実に何かを、見てる…シンは近くにいない。俺は、見てない…リッカだけ、なんだ…」
幾分言葉を詰まらせながら、ユウヒが訊ねる。
リッカは思い出そうと目を瞑って記憶をたどる。が、直近の出来事ではないため、記憶が揺らいでいた。
「……この映像、もっと見てもいいですか?」
リッカが訊ねると、ユウヒは浅く頷いた。そして、コンシリウム・リンクを指さした。
「あれの上に、手を乗せてくれるかい?利き手がいい」
リッカは頷くと、長方体の本体にそっと手を乗せる。
「《グラント(grant):リッカ》」
ユウヒがコードを発すると、コンシリウム・リンクは音を立てた、そして、置いた手のひらの下で光が渦のように巻いて光り、手をすり抜けるように浮上すると、それはリッカの中指に集結し、光が収まると、そこにはユウヒの指にはまっているようなリングがあった。
「さすが、トキ!仕事が早い…」
感嘆の声をユウヒが漏らすが、リッカと、ホウジュンも今目の前に起きたことにあっけに取られていた。
固まっている二人に首を傾げたユウヒは、どうした?と声をかける。先に我に返ったのはホウジュンだった。
「どうした…って、なんだ?今の…」
「あー…前にホウジュンが言ってただろう?使えない。って…それをトキに話したら、なんか意地になって、機能追加してた」
曰く、操者の権限はそのままに、機能を一時的に第三者に付与する。というものだという。
いつの間にそんな機能を…とホウジュンはぼやくが、ユウヒは気にせずにリッカに向き直る。
「それで、その映像に関しては、リッカも操作できるよ」
次回更新予定は2/8です。




