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静かに欠けてゆく世界  作者: オクト
第一章〜嘘〜
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第20話:違和感の輪郭

リッカは静欠けの清涼剤~www

強制終了を食らって数日間、ユウヒは寝こけていた。正確にいうと、起きることが出来なくなっていた。

ナツメの診断では、ただ深く眠っているだけだというが、眠れないと言っていたのに、突然眠りこけると不安にもなる。

けれど、そんな心配を余所に、ユウヒは目を覚まし、自分が数日眠っていたことに驚いているようだった。

そして、目が覚めてすぐ、例のシステムを使いたがったため、ホウジュンからお灸を据えられ、そしてさらに数日後…


「で、使わせてくれるのか?」

「次に俺に《ダウン》使わせたら、本当に没収するからな」

「善処、する…」

「……よほど、没収してほしいようだな」


青筋が浮かんだ額に、ユウヒは肩をすくめる。


気を付けます。とユウヒが頭を下げ、よろしい。とホウジュンは答える。

軽口の応酬の後、ユウヒはポルタを受け取った。

安堵の息を吐くと、バングルを嵌めて、リングを人差し指へと嵌める。

準備が整うと、《ブート》と口にする。その声にコンシリウム・リンクは淡い光を放って起動した。


「よさそう、だな」


使用感を確かめると、軽い手つきで必要な画面を次々と表示させていく。

ピンチアウトでパネルを3つ出し、横に並べた。

それぞれが別の動画を動かすスタンバイ状態になっているようだった。


「左側2つは近々のデータ。右に置いたのが、この前俺が抽出したやつだ。スタート地点は同じにした」


動かすぞ。というと、ユウヒは素早く3つのパネルをタップする。

動き出したそれは、ファルシラ・オブリシカの扉が開くところから始まった。そして…


「これは…確かに、違うな…」


ホウジュンが驚きの声を零す。

左側2つは、入ってすぐに一人になり、更には無限に続くような迷路が眼前に広がっていた。

一方、右側の映像は、がらんどうになっているそこに、足を踏み入れていく映像だった。


「同じところとは、思えんな…」

「だろう?…本当に、俺がおかしくなったのかと思った」

「シンやリッカだって、映像くらいは見てるだろう?なら…」

「誰かが、こういうのがあるって教えているならな」


少なくとも、俺は話してない。というと、ホウジュンも確かに…と苦笑する。

記憶を抽出する機能があるなら、閲覧することもできるとはわかるだろうが、その閲覧方法は教えていないし、事が事だっただけに、見返そうとは思わないだろう。


「それは…何とも言えんな」


ホウジュンが低く、唸るように零すと、ユウヒもまた頷いた。


「当たり前すぎて話してない俺らの落ち度だ。まぁ、シンについて言えば、それでよかったけどな」


こっちの2つはもういいだろう。と、自分の映像以外のものをダブルタップで閉じ、残った一つを少し拡大する。

しかし、拡大したことにより、映像から音が聞こえるようになっていた。

ユウヒは小さく舌打ちすると、即座に音声を切る。

その行動を訝しんだホウジュンが彼を見ると、バツが悪そうに顔を背けた。


「映像だけなら、まだいい。けど……音声はだめだ。キツい」

「……理由があるなら、いい」


そういうと、ホウジュンの視線は映像へと戻った。

突っ込まれなかったことに安堵すると、ユウヒも映像に目をやる。

何もないがらんどう。歩く度に床の鏡が割れる。

映る自身たちの虚像がぶれ、惑わす。

けれど、道自体は変化はない。というより、何もないというのが正しい。

歪んだ鏡を通して、ユウヒの記憶であるのに、ユウヒ自身が見え隠れする。

口元に笛を運んでいる姿と、そのあとに何やら考え込んでいる姿。そして…


「ここだけ、音出すぞ」


言うや否や、ユウヒは画面の前で何かをつまむような形を作り、右側にゆっくり回した。

次第に映像の音が耳に届き、その指が止まった時に、ユウヒの声が流れた。


『“嘘”、か…ここの、概念……』


その声が起爆剤かのように、突然レリクス内がざわめき、そして攻撃が飛び交うようになっている。

突然の変化にホウジュンは驚き、ユウヒはまた映像の音声を切った。

音が消えると、ただただ光がきらめくように飛び交っている世界に、シンとリッカが必死に回避してる映像となる。

ユウヒは、人物が映っていない状態を見極めて、《ポーズ》と発し、映像を止めた。

ふぅ。とユウヒはため息を吐く。


「これが、今ファルシラに手こずってる原因だな。簡単に言えば……俺の凡ミス」

「……どういうことだ?」


やれやれ。と自分に呆れるように首を振るユウヒに、意図が分からないホウジュンは首を傾げる。

要するに、大きなため息とともに、ユウヒが白状する。


「俺の言葉で、ファルシラの概念が“嘘”だと教えてしまったんだ。

生まれたばかりのレリスクは、自分のことが分かっていないことがある。そういうのは、初手を叩けばすぐに消滅するらしい…

だけど、俺は口にしてしまった。それによって、ファルシラが自分の特性に気づいて活性化し、攻撃をしてきた」


最悪だろ…と零しながら、ユウヒは画面をゆっくり横にスワイプすると、コマ送りのように映像が動いた。


「攻撃というより、最早歓喜だな。自分のやるべきことが分かった。みたいな感じ…

響いてくる声も、入った時より鮮明になって、精神を抉られるってこういうことか。って、理解したよ」


しみじみとな…と、ユウヒがげんなりした声で零す。


「結果、逃げ帰るしかなかった。無理に進んだら、戻ってこれる保証もなかったしな…

俺らが外に出たことによって、ファルシラは進化した。というか、自分のあるべき姿を理解した。って感じか…で、今の形になってる」

「侵入者を、追い出すことにしたのか?」

「真意はわからないけど…多分それが正解に近い。…本体は、核は…弱いんじゃないかな?」


触れたら壊れる。脆いガラスのよう…そんな印象だな。という。


「核にたどり着ければ、勝てると?」

「たどり着ければ、だけど……それに、もう一つ懸念点がある」

「懸念点…?」


ああ。とユウヒは苦笑し、諦念のため息が零れる。


「核は弱いかもしれない。だけど、攻撃が弱いとは、限らない」

「お前が、倒れるくらいだからな…」


それだよ…と、苦笑を零したところで、部屋にノックオンが響いた。

誰だ?と不思議がるホウジュンに、ああ。とユウヒは軽く答える。


「リッカだ。呼んでおいた。時間ぴったりだな」


次回更新予定は1/25です。

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