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静かに欠けてゆく世界  作者: オクト
第一章〜嘘〜
20/22

第19話:限界のあとで、まだ

ちょっと…ちょっとだけでも、場を和ませたい感じです。。。

ホウジュンがリッカを連れて戻ってきたとき、部屋は静かだった。

ベッドの上、ユウヒが横向きに倒れ込んでいる。

ポルタは沈黙したまま、コンシリウム・リンクだけが、淡くスタンバイの状態で明滅していた。


「……おい」


ホウジュンが一歩近づくと、ユウヒの寝息が聞こえた。

深くはないが、確かに眠っている。

ただ、寝落ちただけだと理解し、安堵のため息を吐く。


「だからお前は……」


言いたいことを喉の奥にひっこめ、ホウジュンはガシガシと頭を掻く。

呆れながらも、ベッド脇の毛布を引き寄せ、眠りこけてる彼にかけた。

リッカがそっと、ユウヒを覗き込む。


「……ユウヒさん、寝てる……」


声は小さく、どこか嬉しそうだった。

無防備に眠るユウヒを見るのは、彼女にとっては珍しいことだろう。


「起こすか?」


ホウジュンが問いかけると、リッカは首を横に振った。


「ううん。……寝かせてあげたほうがいい気がするから」


そう言って、ユウヒの寝顔をもう一度見つめた。

ホウジュンは静かに頷き、部屋の照明を少しだけ落とした。

そのまま、二人は言葉少なに部屋を後にする。



――



ユウヒが目を覚ましたのは、部屋の空気が少しだけ静かになった頃だった。

ぼんやりと目を開けると、天井が見えた。


「……あれ?」


寝ぼけたような声を出しながら、ゆっくりと体を起こす。

くしゃりと、自分の髪を掻く。


「……寝てたか? 俺……?」

「寝てたな。普通に」


独り言に返事があり、声のほうを向くと、ホウジュンがポルタを手にしていた。

驚いて自身の腕を見ると、外されているのがわかる。


「……マジか」


自分の様々な失態に呆れるように声を零すと、肘と膝で頬杖を突く。



「そんな、だったか?俺…」

「お前がそれを言うな」


ホウジュンは呆れたように盛大にため息を吐く。


「だから、それなりのそぶりを見せろと言ってる」

「いや、大丈夫だって思ってたんだよ……」

「だから言ってんだよ。お前は自分に無頓着すぎる」


ペシっと、軽くユウヒの後頭部を叩くと、一つため息を吐いたユウヒが、自分の頭を撫でる。

そして、ハッと気づき顔を上げた。


「そういえば、リッカは?」

「お前の寝顔眺めて帰った」

「……マジか」


ガクッと項垂れるようになったユウヒは、両手で顔を覆う。


「俺…最近、あいつに格好悪いところしか見せてないような気がする」

「知ってるか?それを自業自得って言うんだ」


ユウヒの珍しい言動に、ホウジュンは鼻で笑った。

そんな彼を気にすることなく、ユウヒはまたため息を吐くと、まぁいいか。と開き直る。


「使ってみたのか?それ…」


ユウヒはくいっ、と顎でホウジュンの手の中を示し、彼はああ…と苦笑する。


「俺には、無理だな…使えない」

「ん?直感的に動くように、設計してるはずだけど…?」

「お前だからできるんだろう?俺がやってもエラーしか起こらん」


そんなはずはないんだけどな。と、ユウヒは首を傾げる。

レガティマの同期は、ポルタを嵌めるだけで認知させるはずだし、リングをつけて指先で操作感を軽くした。

ブツブツと思考していたが、ふと思い出したようにユウヒが顔を上げた。


「もう《ブート》は可能なんじゃないか?なら俺が…」

「お前、本当に、これを、取り上げられたいのか?」


先ほど強制終了させられたシステムを再度動かそうとするユウヒに、ホウジュンは青筋を立てて、ポルタを手にし、揺らす。

言葉に詰まったユウヒは、一度目を泳がせると、観念したようにガクッと頭を下げ、両手を挙げて降参した。


「明日以降に、します」

「ぜひ、そうしてくれ」


真面目な空気が一瞬流れ、そして……二人は軽く噴き出した。

そして、ホウジュンがユウヒに近づき、有無を言わさずベッドに寝かせる。


「とりあえず、まだ寝とけ。思っている以上に、寝てないぞ」

「久しぶりに、寝た感覚は、あったんだけどな…」

「久しぶり…?」


自分の失言に、あ。とバツが悪そうに零したユウヒ。

ふぅ。とため息を零すと、ちょっと怖いんだよ。と零した。


「起きていても、眠っていても…フラッシュバックがあるんだ……夢の中だと、回避ができない。

だから、目を閉じる瞬間が、一番怖いんだ。落ちるとき、何もできないから」


ホウジュンはただただ深く息を吐いた。ユウヒは苦笑で返す。


「だから、起きてるほうが楽なんだよ」

「楽じゃないだろ、それ」


低い声に、ユウヒは視線を逸らす。体温が低いのは、《トレース》の影響だけではなさそうだ。

薬で眠ることは可能だ。けれど、それだと精神を保たないのだろう。

眠るだけで済むなら、それで回復するのなら、ナツメが処置をしないわけがない。

ホウジュンは、ユウヒの視界を塞ぐように、目を手で覆いかぶせた。


「ホウジュン…?」

「眠れそうなら、眠れ…魘されたら、起こしてやるから」


彼の手の温かさに、ユウヒの意識が次第に薄れていく。

一緒に抱えてやれなくて、すまない…そんな彼の声を、聞いた気がした。


次回更新予定は1/18です。

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