第17話:過去の代償、未来の対価
こういう…会話中心の話のほうが、書きやすい派です。。。
荒い息が、室内に満ちた。
倒れこんだユウヒは、布団を握りしめて必死に呼吸している。
やっぱりこうなるのか。とホウジュンは諦念のため息を零し、ユウヒの背を撫でる。
「無茶しすぎなんだよ、お前は……」
「もう、少し…いけると、思ったんだけど…な」
途切れ途切れに話すが、咳き込みそれもままならない。
もう一度深くため息を吐いたホウジュンが、彼の体を起こし、壁に凭れかからせるように座らせた。
気道が確保できたユウヒの呼吸が徐々に整い、悪い。と歯切れ悪そうに謝罪した。
「悪いと思ってるなら、それなりの態度で示せ」
呆れたように言うと、盛大な溜息を吐いて見せ、ホウジュンは一度頭を振ると、まっすぐとユウヒに向き合った。
「お前…何をそんなに焦ってるんだ?」
「……焦ってるか?俺」
彼の言葉に不思議がるように首を傾げて見せるが、胡麻化すな。と頭を叩かれてしまう。
叩かれた箇所を摩りながら、別に焦ってるわけじゃ、ないけど…とユウヒは零す。
「次、お前が行くんだろう?……なら、何か…少しでも情報がほしいだろうが…」
「……俺のためだってんなら、今すぐやめろ」
お前が身を切るな。と、ホウジュンは語気を強めるが、別にお前のためだけじゃない。と、ユウヒは息を吐く。
「おかしいと、思わないか?」
「お前の頭の中は複雑すぎてわからん。思ってること、全部話せ」
「いや……長くなるけど…」
いいか?と言外に問うと、ホウジュンもまた無言で頷く。
まだまとまってはないけど…と頭を掻きながら、ポツリポツリと言葉を紡いだ。
「最初の違和感は、みんなが口を揃えて言っていたこと。『奥に、入れない』ってやつだ。
間違いなくオブリシカ内に入っているのに、気づいたら外に出ている。でも、全員同時に出ているわけじゃなかった。
それはさっき確認した。一人二人は、明らかに時間差が生まれて外に出ていた。違いは確かにある。
中は迷路のようになっていて、知らない間に出されてるのなら…外に出てるやつらは道を間違えている。
そして、それらより遅く出てきている奴らは…」
「正しい道を、選んでいるってことか?」
「そう。正解の道を、知らずに選び…そして次の分岐で間違っている。正解のルートを選ぶほど、出てくる時間がかかっているのだとしたら…」
「その内、正解のルートがわかるんじゃないか?」
「普通ならそう。だけど、問題は……正解のルートと意識してない。だから、どれが正解か不正解かわかってない…
可能性は限りなく低いけど、これだと……全て正解を引いたときが、一番怖い…」
「対レリクスに、事前の準備は基本必要ないはずだが?」
ぶっつけを想定して戦うことの方が多い。ホウジュンは当然のように言うが、ユウヒは首を振る。
「その前提が、そもそも崩れていたとしたら?」
「……どういうことだ?」
首を傾げるホウジュンに、ユウヒは一度言葉を区切り、息を整えた。
目を瞑り、ゆっくりそれを開いて、まっすぐにホウジュンを射抜く。
「死なないと……思ってないか?」
ユウヒの言葉に、ホウジュンはハッとした。
その反応にユウヒは苦笑して、更に続ける。
「俺やお前も含めて、今のルクスは圧倒的にレリクスに対峙していない。
更に…前回のレリクスも異質だった。あれは、人を殺さないレリクスだった」
一定時間の周期で外にはじき出されてしまったが、それ以外の実害はなく、被害は最小限だった。
今回のレリクスもそれに似ている。たださ迷い、そして気づけば、外に出される。けれど…
「ファルシラから、一番被害を負っているのは…まぁ俺だろう。そして俺は、多分ファルシラの核に触れかけてる」
「他のやつらは、そうでないと?」
「全部、推測でしかない。俺の考えすぎっていう可能性もある。だけど…」
「このレリクスは、死ぬ可能性がある…」
「それか、俺のようにどこかおかしくなるか…とかな。被害を出さないために、なんでもいいから、とっかかりみたいなのが欲しい」
一度言葉を区切り、ユウヒはホウジュンをまっすぐに見た。
「お前のためかと、そう聞いたな?なら俺は、違う。と答える。これから先のルクスが死なないため。そのためなら、身を削ったっていい」
迷いのない、まっすぐな目にホウジュンはもう一度諦念のため息を吐く。
ユウヒが言っていることは正しいように聞こえる。
けれど…それは、一人で抱えさせては、決していけないことだ。
「お前が、一人で身を削る必要は、ない」
「だけど…」
「一人で、って言ってんだよ」
ユウヒの反論をホウジュンは制す。彼もまた、真剣だ。
どうも違和感がある。まだ隠されているものがある気がする。
黙り込んでしまったホウジュンに、所在なさげにユウヒの目が揺れた。
ああ、そうか。とため息交じりでホウジュンが呟くと、ユウヒの身がビクリと揺れた。
これはもう、確定だな。と呆れ、ホウジュンはユウヒの頭を軽く小突く。
「身を削るために、それを作った。とは、言わないよな?」
ホウジュンが示したのは、ユウヒの腕にはまるバングル――ポルタ――だった。
年内投稿はこれがラストとなります。
楽しんでいただけていれば幸いです。よいお年を~
次回更新予定は1/4です。




