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静かに欠けてゆく世界  作者: オクト
第一章〜嘘〜
18/22

第17話:過去の代償、未来の対価

こういう…会話中心の話のほうが、書きやすい派です。。。

荒い息が、室内に満ちた。

倒れこんだユウヒは、布団を握りしめて必死に呼吸している。

やっぱりこうなるのか。とホウジュンは諦念のため息を零し、ユウヒの背を撫でる。


「無茶しすぎなんだよ、お前は……」

「もう、少し…いけると、思ったんだけど…な」


途切れ途切れに話すが、咳き込みそれもままならない。

もう一度深くため息を吐いたホウジュンが、彼の体を起こし、壁に凭れかからせるように座らせた。

気道が確保できたユウヒの呼吸が徐々に整い、悪い。と歯切れ悪そうに謝罪した。


「悪いと思ってるなら、それなりの態度で示せ」


呆れたように言うと、盛大な溜息を吐いて見せ、ホウジュンは一度頭を振ると、まっすぐとユウヒに向き合った。


「お前…何をそんなに焦ってるんだ?」

「……焦ってるか?俺」


彼の言葉に不思議がるように首を傾げて見せるが、胡麻化すな。と頭を叩かれてしまう。

叩かれた箇所を摩りながら、別に焦ってるわけじゃ、ないけど…とユウヒは零す。


「次、お前が行くんだろう?……なら、何か…少しでも情報がほしいだろうが…」

「……俺のためだってんなら、今すぐやめろ」


お前が身を切るな。と、ホウジュンは語気を強めるが、別にお前のためだけじゃない。と、ユウヒは息を吐く。


「おかしいと、思わないか?」

「お前の頭の中は複雑すぎてわからん。思ってること、全部話せ」

「いや……長くなるけど…」


いいか?と言外に問うと、ホウジュンもまた無言で頷く。

まだまとまってはないけど…と頭を掻きながら、ポツリポツリと言葉を紡いだ。


「最初の違和感は、みんなが口を揃えて言っていたこと。『奥に、入れない』ってやつだ。

間違いなくオブリシカ内に入っているのに、気づいたら外に出ている。でも、全員同時に出ているわけじゃなかった。

それはさっき確認した。一人二人は、明らかに時間差が生まれて外に出ていた。違いは確かにある。

中は迷路のようになっていて、知らない間に出されてるのなら…外に出てるやつらは道を間違えている。

そして、それらより遅く出てきている奴らは…」

「正しい道を、選んでいるってことか?」

「そう。正解の道を、知らずに選び…そして次の分岐で間違っている。正解のルートを選ぶほど、出てくる時間がかかっているのだとしたら…」

「その内、正解のルートがわかるんじゃないか?」

「普通ならそう。だけど、問題は……正解のルートと意識してない。だから、どれが正解か不正解かわかってない…

可能性は限りなく低いけど、これだと……全て正解を引いたときが、一番怖い…」

「対レリクスに、事前の準備は基本必要ないはずだが?」


ぶっつけを想定して戦うことの方が多い。ホウジュンは当然のように言うが、ユウヒは首を振る。


「その前提が、そもそも崩れていたとしたら?」

「……どういうことだ?」


首を傾げるホウジュンに、ユウヒは一度言葉を区切り、息を整えた。

目を瞑り、ゆっくりそれを開いて、まっすぐにホウジュンを射抜く。


「死なないと……思ってないか?」


ユウヒの言葉に、ホウジュンはハッとした。

その反応にユウヒは苦笑して、更に続ける。


「俺やお前も含めて、今のルクスは圧倒的にレリクスに対峙していない。

更に…前回のレリクスも異質だった。あれは、人を殺さないレリクスだった」


一定時間の周期で外にはじき出されてしまったが、それ以外の実害はなく、被害は最小限だった。

今回のレリクスもそれに似ている。たださ迷い、そして気づけば、外に出される。けれど…


「ファルシラから、一番被害を負っているのは…まぁ俺だろう。そして俺は、多分ファルシラの核に触れかけてる」

「他のやつらは、そうでないと?」

「全部、推測でしかない。俺の考えすぎっていう可能性もある。だけど…」

「このレリクスは、死ぬ可能性がある…」

「それか、俺のようにどこかおかしくなるか…とかな。被害を出さないために、なんでもいいから、とっかかりみたいなのが欲しい」


一度言葉を区切り、ユウヒはホウジュンをまっすぐに見た。


「お前のためかと、そう聞いたな?なら俺は、違う。と答える。これから先のルクスが死なないため。そのためなら、身を削ったっていい」


迷いのない、まっすぐな目にホウジュンはもう一度諦念のため息を吐く。

ユウヒが言っていることは正しいように聞こえる。

けれど…それは、一人で抱えさせては、決していけないことだ。


「お前が、一人で身を削る必要は、ない」

「だけど…」

「一人で、って言ってんだよ」


ユウヒの反論をホウジュンは制す。彼もまた、真剣だ。

どうも違和感がある。まだ隠されているものがある気がする。

黙り込んでしまったホウジュンに、所在なさげにユウヒの目が揺れた。

ああ、そうか。とため息交じりでホウジュンが呟くと、ユウヒの身がビクリと揺れた。

これはもう、確定だな。と呆れ、ホウジュンはユウヒの頭を軽く小突く。


「身を削るために、それを作った。とは、言わないよな?」


ホウジュンが示したのは、ユウヒの腕にはまるバングル――ポルタ――だった。


年内投稿はこれがラストとなります。

楽しんでいただけていれば幸いです。よいお年を~


次回更新予定は1/4です。

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