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静かに欠けてゆく世界  作者: オクト
第一章〜嘘〜
17/22

第16話:記憶を差し出す覚悟

結局のところ…ユウヒが身を削るのは決定事項。。。

「シンには……ファルシラに関わらせたくないんだ…」


ユウヒの真面目なトーンに、ホウジュンは無言で先を促す。

一度息を吐いて、仕方ないとばかりに白状する。


「ファルシアの攻撃は、過去を揺さぶる…これ以上ないほど的確に、嫌なところを突いてくる」


経験者は語る。ではないが、実際に攻撃をまともに食らっているのはユウヒだけだ。

その経験則が何よりの証拠。


「シンは、普段がああだけど…最大のトラウマがあるだろう?」

「ああ……ネグラシアの、生き残りだ…」


ネグラシア……ファルシラの二つ前。

6年という歴代最長年数顕現し、ルクスたちもかなりの痛手を負った、史上最悪と言われたレリクス。


「生き残っただけじゃない。あれは……とにかく、あれを突かれると、まずいんだ…最悪、シンが…レリクスになる可能性すらある」


ユウヒの言葉に、場が凍った。

ただの憶測でしかない。シンは彼らが思っている以上に強いかもしれない。けれど…


「そのリスクは…負えんな」


ホウジュンが零した。

一か八かで賭けをする場面ではない。

ふぅ。と、重いため息が落ちた。

しばしの沈黙。そしてそれを、ユウヒが破る。


「映像だけでも、揺さぶられる可能性がある。だから……出すなら、俺…だろうな」


ふっ、と自嘲気味に笑う。

自分も極力、思い出したくはない。考えるだけで、冷たい何かが背を走るようだ。

でももう、ヒントが、ない。


天を仰ぎ、目を瞑る。

一つ大きく呼吸をすると、意を決したように、パシン。と自身の両頬を手で叩いた。


「一人でやるつもりだったんだけど…付き合ってくれるか?ホウジュン」



――



出していたパネルと閉じ、一つ新しいものを開いた。

そこには何やら文字の羅列が続いており、スワイプしてユウヒが操作していく。

そして、パネルとタッチすると、それは光となってポルタのリングが嵌るユウヒの指に集約された。


「準備完了。さて……止めんなよ?大丈夫だから…」


苦笑しながら不穏なことをいうユウヒを訝しみながら、ホウジュンは彼の仕草を見る。

ユウヒは、光が集約した指を、自身のこめかみへと当てて、そっとコードを発した。


《トレース(trace)》


一瞬、指先の光が瞬いたと思うと、指先からこめかみに浸透するかのように光が飲み込まれて行っているように見える。

当のユウヒはと言えば、目を瞑り、眉間に不快そうにしわを寄せていた。

コンシリウムで行動記憶を提出したことがあるホウジュンは、更に訝しんだ。

あの時、特に不快を感じるようなこともなく、あっけなくと言えるほど簡単に済んでいたはずだ。


「おい、ユウ…」


読んでいたかのように、ユウヒは手で彼を制す。そして、別のコマンドを発した。


《エコー(echo)》


この声に、こめかみを浸潤していた光は外へと零れ、先ほど映像を見ていたようなパネルのように広がる。

右目の近くで光が集まり眩しさを感じているのか、ユウヒは左目だけを開けて、映し出される映像を見ていた。

そこに映っていたのは、ファルシア・オブリシカ――ひび割れ、欠けたガラスと鏡の城――だった。


「……思った以上に、鮮明だな……」


映し出されたそれに、ホウジュンの感嘆の声が漏れた。

先ほどまで映していたものは、多少の粗さがあったが、今映っているものはノイズが少ないように感じた。


「あんまり、しっかり…見るなよ?」


酔うぞ。そうユウヒが短く言うと、画面の視点が細かく切り替わっていった。

目まぐるしく切り替わるそれに、確かにこれは酔いそうだ。となったが、やはり、先ほどまでとの映像と違いすぎる。

画面から目を離し、ホウジュンはユウヒを見ると、彼は画面を見たまま、ホウジュンの思考を読んだように苦笑交じりで答えた。


「簡易版なんだ。調整を付けてない…俺の見てるまま、そのまま映ってる……

普段、コンシリウムにあるデータは、調整されているものだ。ここまで、画面はぶれない…

まぁそれでも…俺の視点は、切り替わりが多くて、閲覧制限、かかるらしいけどな…」


いつもの軽口のようだが、言葉に覇気がない。そして何より、映像が進むにつれ、彼の表情は苦悶に満ちていく。心なしか、息も荒い気もする。

そこで、ホウジュンの中で、何かが繋がった。簡易版。未完成品。本体では感じない、違和感。


「お前、これ…!」

「まだ、…大丈夫、だ…」


ホウジュンの声を、またもユウヒは制した。

自分でもわかっていると言いながら、それでも、視線は画面から外れない。

開かれた扉。

何もない空間。

響く歪んだ音。

焦燥感まで伝わってきそうな映像に息を吞む。

映像が進むたび、ユウヒの表情が歪む。


――息が、詰まる

――鼓動が、早い

――これ、以上は…


リッカに向かってきた刃をユウヒが庇おうとした、その瞬間――


「――《シャット(shut)》!!」


ユウヒが叫んだのは、――リンクとポルタの即時停止コマンドだった。


次回更新予定は12/28です。

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